55歳のバットマンが頑張ります!


Amazonから『バットマン:イヤーワン』と『バットマン:ダークナイト・リターンズ』が届いたので、それを1日かけて読もうと決意す。『ダークナイト・リターンズ』はアラン・ムーアの『ウォッチメン』と共にアメコミを変えたと言われてて、ホントに読みたくて、読みたくてたまらなかったんだけど、日本語版はとっくに廃刊。オークションなんかで探したりもしたが、ほぼ1万を越えてるものばかりだったので、「ええい!絵があるし、辞書があればなんとかなるだろ」と洋書を買ったのだ。『イヤーワン』も同じく廃刊になってて、こちらも倍の値段だったので、洋書。だからこういう日じゃないと読めないなぁと思ってたので丁度良かった。

ダークナイト・リターンズ』を読む。正直、アメコミはキャラクターの心情がナレーションのように、別枠で展開され、日本のマンガよりも文章が圧倒的に多いため、どうなんだろうと思っていたが、これが案外ストーリーもどういう状況なのかも理解出来た。それでも、分からない単語を調べながらだったので、40ページ読むのに2時間くらいかかったが、無茶苦茶ゾクゾクした。これホントにちょーかっこいいコミックだと思う。とっとと日本語版を復刊しろ。

んで、丸一日かけて『ダークナイト・リターンズ』を読んだ。これはマジで傑作だと思う。フランク・ミラーって作品によってコロコロ絵柄が変わるんだが、その原点として『ダークナイト・リターンズ』があったんだなと思った。キメ絵のかっこよさもさる事ながら、ハードボイルドなストーリー展開に、徹底した残虐描写。これ読んでたら『ダークナイト』に対して「アメコミの枠を越えた傑作」とは言えないだろう。だって元々のコミックがそれ以上なんだから。

光と影の使い方は『シンシティ』に、キャラクターがシルエットで動くところは『300』に受け継がれてるんだなと思った。コマ割りの中でスローモーションやカットバックを見事に表現するところは後に『シンシティ』を監督すると思えば、必然的な手法だと思う。両親が殺される事を思い出すところはその手法が活きてて、鳥肌が立つほどかっこよかった。つーか、全部のシーンがエモーショナルで、泣きそうになった。

ダークナイト・リターンズ』は86年のコミックだが、まったく古さを感じさせない。まず設定がすごい。主人公のブルースはバットマンを引退していて、葉巻とヒゲが似合う、白髪の初老である。なんと年齢は55歳!ゴードンと引退10周年を祝い、ウイスキーを嗜むあたりも渋いが、その帰りに、ブルースは自問自答する「オレはゾンビだ、オレはフライングダッチマンだ、10年間、オレは死人のようだった」と、帰り道は自分の両親が殺された場所だったが、奇しくもそこでチンピラに襲われるブルース。ところがチンピラはブルースのただならぬ佇まいにビビって何もせずに去って行く。そして、ブルースはゴッサムシティが何も変わってない事を悔やむ。一方、手術によってトゥーフェイスの顔が元に戻るニュースが放送され、顔が戻った瞬間にトゥーフェイスは病院を脱出。それをきっかけにブルースは再び、地下へ行き、バットマンとなってゴッサムシティに戻って来るのだ!!!

おもしろいのはバットマンがジジイなので、弱いというところ。戦いに行ってはどっかを痛めて、マッサージをうけるも、「おい、もっと優しく揉んどくれよぉ」というくらい弱々しい。さらに世間ではバットマンイカレヤローなのか?正義の味方なのかで真っ二つに意見が別れている。何故かというとバットマン自身も凶悪であり、『ダーティハリー』のように犯人を容赦なくなぎ倒しているからだ。相方のロビンは14歳の子供という設定になったが、なんとバットマンはロビンに助けられっぱなしである。

敵の倒し方もえげつない。チンピラミュータント団と戦う時は、なんの予告もなく戦車化したバットモービルで皆殺し!!ボスの挑発に乗って、一対一で殴りあうも、ジジイのバットマンは若さに負け、腕をへし折られる!ボスは逮捕されるも、その後、ゴードンによって逃がしてもらうが、それはバットマンとの再対決を意味していた。その再対決の場所が、下水道の出口で、なんとバットマンはボスとドロレスをする!!(この場合は汚水レスになるのか)しかも、一度やられてるだけに、戦い方も、目つぶしするわ、足をへし折って動けなくするわ、スマートじゃない!

展開も凄まじい。それは映画の『ダークナイト』以上だ。まず、何故かゴッサムにスーパーマンが居て、しかもスーパーマンは政府のために動いている!米ソの冷戦の影にスーパーマンが居たのだ!バットマンが帰って来たと同時に宿敵ジョーカーも復活。ジョーカーは精神状態が(多分)良くなったという事でアーカムを脱出。その経験をなんとTVのトークショーで話すという!もちろんそれはウソで、ジョーカーはそのトークショーに来た人をガスで皆殺しにする!ジョーカーとバットマンの決闘の場所は子供が集まる遊園地だが、ジェットコースターは爆破するわ、子供は人質にされまくるわで、凄まじい。んで、戦いもジョーカーの目をバットラングで突き刺して、バットマンも脇腹に銃弾を受け、さらにそこをナイフでえぐられ、まさに死闘!やっぱりそこでバットマンはひん死になりまして、手術を受けるも、それと同時に今度はソ連の核ミサイルが発射され、スーパーマンがそのミサイルの軌道を逸らして、砂漠で爆破させるが、その核ミサイルの影響ですべての電子機器が機能停止、その時に空を飛んでいた旅客機がなんと9.11のテロのごとくビルに突っ込んでくるというとてつもない展開!!炎上するビル!その騒ぎにのって大暴れするチンピラ!ゴッサムは狂乱と化すが、手術後のバットマンゴッサムに向かう!なんと真っ黒な馬に乗って!!

これが数十ページの間に繰り広げられるが、なんとラストはゴッサムを乗っ取ったバットマンと、ある意味で政府の犬になってるスーパーマンとの殴り合い!!!!!!!その戦いもやっぱりえげつなく、終わり方もひねりが利いてて、無茶苦茶かっこいい。

バットマンを、アメコミを変えたと言われてる『ダークナイト・リターンズ』だが、そのバットマン再登場のシーンはかなり初期のバットマンに忠実で、誰かが悲鳴をあげると、あっという間にチンピラが、やられているというは、当時のバットマンのファンは嬉しかったんじゃないだろうか(初期のバットマンについてはまたいずれ書く)

ダークナイト・リターンズ』はハッキリ言って、ものすごくおもしろいコミックだし、もはやここまで来ると子供の読むものではない。恐らく、単なるアメコミと思ってる人はこれ以前のアメコミを読んだ人達なんだろう。なので『ダークナイト』がおもしろかったという人は『ダークナイト・リターンズ』を読む事をおすすめする。ただし、日本版は1万円くらいするけどね。あういぇ。

Batman: The Dark Knight Returns

Batman: The Dark Knight Returns

Batman: Year One

Batman: Year One