一年目のバットマンが頑張ります!

恋人たちは浮かれまくる今日この頃いかがおすごしでしょうか。イヴだろうが、なんだろうが、今日は深夜の1時まで働くよ!ばかやろー!

てなわけで、今日はこないだ発売された『バットマン:イヤーワン/イヤーツー』を朝から読んだった。

バットマン イヤーワン/イヤーツー

バットマン イヤーワン/イヤーツー

にわかアメコミファンとして、アメコミを読み始めたが、ブログを読み返したら、なんと、ちょうど1年前のクリスマスイヴに6冊のコミックを買ってて、それが初アメコミ体験だったので、まる一年ということになる。当時付き合っていた彼女が「クリスマス?てめーキリスト教でもないのにふざけんなよ!プレゼントなんかいるか!」という珍しいタイプだったので、プレゼント代を全部コミックに充てたのが始まりだったわけだ。検索でアメコミ関係がやたら引っかかるが、ホントに詳しいこと書いてなくてすいません。恐らく、アメコミってなんとなく興味はあるんだけど…という人と同じ目線で書いてるからちょうどいいと思われます。

にしても、コミックを買い始めた当初は『Vフォーヴェンデッタ』と『バットマン』の編集版が数冊あった程度で、ジュンク堂に行っても、肩幅くらいしかなく、『イヤーワン』も『キリング・ジョーク』も『ウォッチメン』も『DKR』も廃刊状態で、『イヤーワン』と『DKR』は洋書で購入して、英語の先生をしている友人と二人で必死こいて読んだ。

今度『キリングジョーク』まで復刊されて、ぼくが読みたいと思ってた物は全部日本語で読めるようになったが、当時、今挙げたコミックが全部復刊して、なおかつ『フロム・ヘル』まで翻訳されるなんてあり得ないと思ってて、実際にそれが全部復刊した夢まで見たのだが、まさかそれが現実になるとは思わなかった。

話を戻そう。『イヤーワン』は読んで字の如く、バットマンの一年目を描いた作品で、ライターは前年に55歳のバットマンの復活を描いたフランク・ミラー。55歳のバットマンの後に新人バットマンという真逆の設定に手をつけたのだが、これがまた『DKR』よりも渋いハードボイルドに仕上がっている。

『イヤーワン』は詩的でクールなモノローグとカラーリングがちょーかっこよく、骨太なストーリーと相まって、独特の世界観を構築している。以前洋書と小プロから出てるものを読んで感想を書いてなかったのだが、改めて翻訳版を読むと、やっぱり自分の英語力の無さは酷いし、翻訳をする人のセンスも大事なんだと思わされた。

色は原色飛び交うイメージが強いアメコミのカラーリングと対局にある、モノクロに近いようなタッチで色づけされている。小プロで読んだバージョンでは原色が飛び交っていたので、単行本にする際に再カラーリングしたのだろうか、「この色、一体何色って言えばいいの?」という、不思議な不思議な彩色が『イヤーワン』では際立っている。

バットマンの一年目を描いてはいるが、実質はバットマンとゴードン、両者の一年目を交互に描くというような構成をとっていて、モノローグと絵柄、構図、展開が日本のマンガのそれとは違っていて、やはりおもしろい。

それにしても、『イヤーワン』に出て来る人物は全員腹に一物抱えたヤツらばかりだ。

まずバットマン――――というよりもブルースウェインだが、こいつが主人公とは思えないような、アンチヒーローキャラで、自己流で鍛えた空手を武器に売春街に繰り出し、女子供など容赦なくボコボコにする。当然警察に逮捕されるが、脱出の方法もスマートじゃなく、非常にかっこ悪い。この辺も『DKR』に通じるところがある。

キャット・ウーマンはSMの女王様として登場する。だからボンテージを身にまとってたのか!髪の毛は十勝花子ばりのベリーショートで妙にいやらしく、売春してる仲間と暮らしている。

ゴードンもすごい。腐敗しきってる警察にたてつき、マスコミまで味方につけるも、妊娠中の奥さんをほっといて、自分は職場の部下と浮気。しかもそれが汚職警官の上司に見つかってしまうというちょーなさけないキャラ。

ただ、この辺のキャラ設定が物語に一層深みを与えているのは間違いなく、『ダークナイト』は『イヤーワン』もかなり参考にして作られたのではないかと思われる*1

バットマン・ビギンズ』もわけわかんねー忍者みてーの出すくらいだったら、『イヤーワン』をきっちり映画化すればよかったのに!と思わされる事必至の作品。当然の如く、暴力も血もてんこ盛りなので『DKR』を読んでおもしろいなぁと思ったら、是非読んでいただきたい。

そして、さらに収録されてる二年目を描いた『イヤーツー』がまたおもしろかった。こちらは原色飛び交う、巷でイメージされてるような、これぞアメコミテイストだが、ストーリーが自分的にグッときた。

『イヤーツー』でバットマンの敵になるのは、グリムリーパーという殺人鬼。ところが、このリーパーもバットマンと同じく、幼い頃に強盗に妻を殺された男で、犯罪者を殺すというところ以外はバットマンと同じ運命を背負っている。リーパーはバットマンの手の内を知り尽くしたような動きを見せ、最初は太刀打ち出来ないのだが、リーパーと戦うためにバットマンはチンピラを相棒にする。ところが、この相棒というのが、幼い頃にブルースウェインの両親を撃ち殺した強盗だったのだ!!

リーパーをやっつけるために、自分の復讐心を抑えるバットマンだったが……と、ここからの展開はすさまじく、ネタバレになるので、是非読んでいただきたい。リーパーの正体やブルース自身の恋愛が、上手くストーリーに絡み合い、極上のエンターテインメントを見せてくれる。

しかも『イヤーツー』のバットマンはすごいぞ!リーパーに太刀打ち出来なかったので、禁じ手とも言える拳銃を取り出すのだ!しかも射撃場で練習までするのだ!!ヤル気マンマン!!

てなわけで、骨太ハードボイルドな『イヤーワン』と、狂った犯罪者が二人で右往左往する『イヤーツー』は両方読んでも損しないので、ホントにアメコミに興味を持った人は買って損は無いと思われます。彼女のプレゼント代から分けて買おう!あういぇ。

バットマン:キリングジョーク 完全版 (ShoPro books)

バットマン:キリングジョーク 完全版 (ShoPro books)

*1:実際『ダークナイト』の原作とされてる『ロング・ハロウィーン』は『イヤーワン』の続編的な位置づけなのである