仁義の墓場

まずは『仁義の墓場』鑑賞。

仁義の墓場 [DVD]

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無茶苦茶おもしれー!傑作!

仁義なき戦い』からの深作欣二節炸裂。手持ちカメラの荒々しさ、戦後のゴタゴタをえぐる演出がホントに素晴しい。『仁義なき戦い』になると、ちょっとした群像劇で、それはそれでいいのだけれど、『仁義の墓場』は「死ぬ気になれば何でも出来る!」という男がなかなか死なずに生き続けるというドラマだから、1人の男の視点から、戦後の日本の混乱を映し出すので、その時代に飲み込まれるような感覚に陥る。

オフ会に行った時にhackerさんに「そういえば『ALWAYS』観ないんですか?」って訪ねた時、「CG嫌いってのもあるけど、あの当時の東京に居た者としては、あの映画の東京はキレイすぎる」って言われた。

仁義の墓場』は昭和20年から33年の新宿を舞台にしてるけど、ホントに出てくるもんはReservoir Dogsばっかりだ。(この場合のReservoir Dogsは「掃き溜めの犬」の意。タランティーノルイ・マルの『さよなら子供たち』の原題『U REVOIR LES ENFANTS(オズヴォワールレザファンとか、そんな読み方だった気がする)』が覚えられず、『Reservoir Dogs』というあだ名をつけたが、これがまさか自身のデビュー作になるとはこの時は思ってなかった、ちなみにReservoir Dogsという言葉自体に意味はない。あ、脱線してしまった)

仁義の墓場』には『ALWAYS 三丁目の夕日』のような人情、風景はどこにも存在しない。それこそ、hackerさんの言うように汚い汚い街が、延々映し出される。『仁義なき戦い』を観ると、昔の広島はパンクだったんだなぁと思うが、東京も同じようなもんだったのかも(笑)女は売春するしかなく、男はヤクザになるしかないようなこの世の地獄のような場所だ。これはこれでやりすぎの様な気がしないでもないが、じゃあ、どっちがリアルかと言われると、断然に『仁義の墓場』の方がリアル。こっちの方が社会の縮図だし、スラムと対比するものがあってもよかったが、まぁ、ヤクザの親分が選挙に出馬するくらいだから、それくらいカオスな時代だったんだろう。

ある組の1人の男が暴走するだけのストーリーだけども、これは強烈。意味も無く、別な組の男をぶった切ったり、自分の親分を殺そうとしたり、親身になってくれる兄弟分をぶっ殺そうとしたり、ホントに仁義もへったくれもない『仁義の墓場』の世界だ。主人公にはまったく共感出来ないが、死を宣告されて、死を恐れずに生き、それでもなかなか死ねずに生き続ける苦悩なんかも刻まれててかっこいい。ヤクザを魅力的に描いてると一部で批判された『仁義なき戦い』(私は全く思わない)に反発して作ったような印象もある。まぁ、オレに言わせれば、だったら『ゴッドファーザー』だってそうじゃねぇかよと言いたいが。

ラストが強烈で、個人的には『スカーフェイス』や『徳川いれずみ師 責め地獄』の終わり方と並んですごかった。『仁義の墓場』は『仁義なき戦い』をさらにシャープにして、生々しくした傑作だ!