チェンジリング


9時半に『チェンジリング』鑑賞。

あ、ここからはものすごい偏った感想なので、観る時の参考にしないでいただいて。

アンジーの渾身の演技と、いかにも映画人っすねぇ!という完璧な美術と衣装で20年代を再現。きっちりと物語も交通整理し、奇を衒わない中で容赦ない演出(子供に斧を振り下ろして、血がぶしゅーとか、いや、実際子供を殺すところは出ないのだけれど)を施すのはさすがイーストウッド。もはや、名匠と言う肩書きもしっくり来るんじゃないのだろうか。

イーストウッド作品には観る者を地獄の底にまで突き落とすような絶望的な映画が多く、『チェンジリング』もご他聞に漏れず、開始一時間で観る者を絶望の淵に叩き込んで行く。私は基本的に警察が嫌いで、警察の過失によって冤罪が生まれて、そのせいで主人公の人生が狂わされるという映画を観るとムカムカする。なので、『それでもボクはやってない』も大好きだけど、2回しか観ていない。やっぱりムカつくからである。

チェンジリング』も最初はそういう作品だと思わなかったので、警察が権力を振りかざし、アンジーを肉体的にも精神的にも追いつめていくくだりで、私はスクリーンを出ようと思ったくらいムカついた。出てくる悪役をぶち殺してやろうかと思ったけれども、そこはイーストウッド。観客の怒りがマックスになったところで、観る者に希望や、事件を行く末を絶妙なタイミングで示唆する。つーか脚本がうまいのかもしれないけど。

ぶっちゃけて言えば、後半の30分は明らかに要らないし、もうちょっと歪んだ思想が出て来てもよかった気もするが、実話を元にしてるので、子供を斧でぶち殺すシーンくらいしかイーストウッドの好みにならなかったのだろう。

という事で、アンジーは素晴らしいし、他の役者陣もパーフェクト、かなり良い仕事が観られるさすがの作品だった。全体のムードは超シリアスな『カンザス・シティ』という感じでおもしろかったし、個人的にはなかなか好きです。これで音楽がジャズだったら、モロだっただろう。でもイーストウッドもジャズ好きなんだよね?