香港映画フリーク感涙の傑作『仮面ライダーW RETURNS 仮面ライダーアクセル』

ここ三週間、仮面ライダー漬けであった……といっても土曜日を自分のなかで仮面ライダーDAYとしていたので、そこでTV版を一気見し、さらに『ビギンズナイト』と『運命のガイアメモリ』という劇場版も鑑賞し、一通り『仮面ライダーW』という作品を制覇することができた。長かったがかなり楽しんで観れたし、むしろ久々にこの手のエンターテインメントに触れられて救われた気もした。ちなみに『仮面ライダーW』は絶賛無料配信中なので、興味がある方はしのごの言わずに観ることをおすすめしたいところであるが、敷居が高いのはよくわかるので、無理強いはしない。

とはいえ、これはまだはじまりにすぎず、次から次におすすめ作品や関連作品を紹介され続け今に至る。それくらい派生も多く、すべての世界に熱狂したファンも多いということなのだと改めて思わされた。

んで、例の如く、また後輩にいろいろとDVDを持ってきてもらい、そのなかでも主要な登場人物のひとりである照井竜/仮面ライダーアクセルを主人公にしたスピンオフ『仮面ライダーW RETURNS 仮面ライダーアクセル』を観た。

仮面ライダーW RETURNS』はVシネであり、読んで字の如く、端から劇場公開を狙ったわけでも、TV用に作られたわけでもない。セル/レンタルでの鑑賞を目的としたソフトであるため、かなり大人な仕上がりで、しかも坂本浩一監督のやりたいことがギュウギュウに詰まった作品でもあった。

映像自体は劇場版にも負けておらず、むしろこちらの方がリキが入ってるように感じられる。アクションは荒々しく、ストーリーもシリアス寄りであり、山本ひかりもコメディエンヌとしての面目躍如たる演技を堂々と披露する。

とはいえ、そう書くといつもの『W』と変わらない気もするが、この『仮面ライダーアクセル』は今まで観てきた『仮面ライダーW』関連だったらダントツのおもしろさを誇る。これはぼくが元々門外漢だったというせいもあるが、この作品、前半と後半でアクションの作りが違っていて、前半、アクセルに変身する前の生身の照井竜としてのアクションは香港映画のエレメントをグツグツ煮込んで純化させたような濃厚なもので、ファンとしては感涙必至なのだ。

手錠につながれたまま格闘するのは『プロジェクトA II』であり、途中でパートナーとダンスするように戦うのは『シティハンター』で、宙返りしたままスネから階段に落ちるのは『ポリス・ストーリー』、冷蔵庫の扉を使ったのは『レッド・ブロンクス』、さらに敵が撃たれる際、通常ショットからスローモーションに切り替わるのはジョン・ウー作品ではおなじみの手法で、カートのようなものに乗ったまま、後ろに下がって、撃ちつくすのは『ハードボイルド/新・男たちの挽歌』だ。

最後の最後になだぎ武がコミカルなカンフーアクションを見せるが、動いてるのにあきらかに後から声を当てて、動きとあってないしゃべりは『Mr.BOO』の吹替えである広川太一郎オマージュで、ちゃんとなだぎもそれに似せたしゃべり方をしているから芸が細かい(ちなみにこれらの一部は音声解説で監督自身が元ネタを明かしているので恐らく間違いないと思われる)。

一幕目でここまでアクションを詰め込んでしまった結果、二幕目のドラマパートをはさんでからの三幕目は仮面ライダーとしての様式に戻したため、やや乖離しすぎてるきらいはあったが(めっちゃ高い所から人が落ちたのになかなか地面につかないみたいな)、前に劇場版を観たときも思ったように、その歪さこそがこの作品の魅力で、1時間20分というランタイムのなかで二本分のアクションものを観たという気分にさせられるのはお得感があって良い。照井と所長の痴話ゲンカを見ただけのような気もしなくもないが、あいもかわらず太ももは多めだし、長澤奈央は出てるしで、坂本浩一監督の作品はやはり分かってる感が強かったのであった。傑作と言っていいだろう。

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