麻雀放浪記

麻雀放浪記 [DVD]

麻雀放浪記 [DVD]

ハイライトのパッケージをデザインした事で有名なイラストレーターの和田誠が初めてメガホンを取り、あの超有名な原作を映像化した事で話題になった力作、角川映画というところも不思議である。

麻雀の話だが、麻雀を知らない人でも入り込める様に作られており、超一級の娯楽作になっている。雀卓をグルグル回るカメラワークがとにかく素晴しく、映画畑じゃない人のアイデアが随所に詰まっている。モノクロで撮られた映像は黒澤映画を思わせ、戦後の日本をリアルにあぶりだす、イラストレーターの感覚なのか、映像のカットは完璧で、カメラの動かし方まで言う事無し、音楽も流れないままストーリーが進んで行き、高品格の名演技が映画全体を引き締める事に成功、中でも、天和の積み込みシーンは麻雀を知らないものでも、息が止まる事必至のクライマックスシーン、緩急織り交ぜた演出も見事だが、その緩和の部分が多く、そこは好き嫌いだし、まったく悪いという風にも思わないが、映画のピークが早く来る分、盛り上がりにかける。それ故、博打打ちでしか生きられない男の生き様が後半に詰まっており、戦後のゴタゴタと相まって、虚しさや悲しみも映画に盛り込んでいる。青春映画や恋愛映画の要素もあり、初監督とは思えない完成度、まさに傑作である。

まずワンカット、ワンカットに魂を感じられる、戦後の日本を映し出す為の雰囲気作りや、カメラの動かし方が完璧だ。美術もそうとう気合いが入っており、あきらかにセットの質が良いのは映像からすぐに汲み取る事が出来た。地味な映画だが、金がかかってるのは、一目で分かる、黒澤映画にも匹敵する程の映像の作り方である。モノクロで撮ったというのも大正解だろうが、初監督である和田誠を全面的にバックアップしたスタッフが素晴しい。そのワンカット、ワンカットを的確なカメラワークで映し出す、クレーンを使って優雅に、動きまくるカメラは、見ていて、緊張感もあり、麻雀をしているだけのシーンでも、独特のリズムを生んでいる。

映像だけでなく、役者陣も完璧に揃える、なんと言っても一番おいしいのは高品格だ。存在感と言うか、オーラが出目徳そのもの、声のトーンや表情、しぐさまでも完璧。この映画は彼が居たからこそ成り立っていると言っても過言ではないだろう。もちろんそれだけでなく、加賀まり子のママっぷり、切れ味鋭い鹿賀丈史大竹しのぶに名古屋明と、個性的なメンバーが映画を彩る。その中で主役を演じた真田広之も青春を全面に出し好演。特に天和であがらなければならないシーンでは、「演技している」というのを映画の中で「演技する」というむずかしい事を見事にやりきっている。これはドラマでもよくあるが、あそこまで自然なのはなかなかない、ここは見ていて鳥肌が立った。そして、素人ではむずかしい積み込み技を習得しており、映画の中で披露。ここもワンカットで撮られており、インチキはしてない模様。『スティング』のポールニューマンのトランプさばきを思わせるを見せている。

麻雀と言う事で敬遠してる人は多いと思うが、麻雀を知らなくても全く問題無い。どっちかというと、麻雀のシーンは少ないくらいだ、故にこの映画は娯楽作であり、傑作、絶対に観るべき1本なのだ。