フェリーニの『道』をスクリーンで観て、その後に今年の邦画のトップクラスの作品を観た

映画館でフェリーニ『道』鑑賞。

フェリーニの『道』は今更語るまでもない名作中の名作だけど、今回久しぶりに観てもやっぱり素晴しい映画だった。というか、私は『道』が好きだ。『81/2』も『甘い生活』も素晴しいけど、やっぱり『道』なんだなぁ。フェリーニって一度ハマるとホントに抜けなくて、その影響が未だにある映画監督も山ほど居る。リンチやギリアムやウディアレンとかもそうかな。北野武もモロですね。でも、難解な部分も多くて、それが魅力だったりするんだけど、『道』はその中でも1番シンプル『レオン』や『ペーパームーン』に先駆けたような傑作で、マジに泣ける映画の1本。

アンソニー・クインジュリエッタ・マシーナがホントに演技が上手くて、特にザンパノを演じるアンソニー・クインはホントに一級の演技を見せつける。

しかもフェリーニに限った事じゃないけど、この時代の監督さんは基本的にセリフで多くを語らない。映像だけで見せきったり、意外とどう解釈されてもいいような感じで突き放している。小津さん、成瀬さん、ヴィスコンティとかもそうだけど、セリフも多いわけじゃないし、男女の情感だとか、それぞれの心情を、シンプルに映像にする。それが今の監督に出来ない事なんだねぇ、音楽とかも過剰に鳴り過ぎなんだよ。『道』を観ると、ホントに『恋空』がバカバカしく映る。砂糖とかミルクとか入れすぎてるコーヒーのようだ。

『道』は観る人や年代によって解釈も違ったりするのかもしれないけど、当たり前だったり、ちょっとうっとうしいと思う事を失った時に初めて大切だと気づくという映画です。恋人でも母親でも、もちろん友達でもいいですけど、その時は、なんかうっとうしいなぁって思うくらいのね、愛情なり心配りが無くなった時に、実は大切だったんだなぁって気づくもんなんですよねぇ、それがとてつもない後悔だったりする時があるかもしれません。

藍坊主も『スプーン』という歌でそれを言ってますし、結構当たり前のメッセージなんですけど、『道』はそれが1番に刺さって来る映画なので、どの年代の人にもオススメ出来る映画ですね。名作というと肩すかしを喰らう事が多々ありますが、『道』は真の名作です。必見だ!ばかやろー!

犯人に告ぐ』まで1時間以上時間が空くので、映画館でブログやら、いろんなもんを書く。15時45分より『犯人に告ぐ』鑑賞。

よくおすぎは観ないなんてバカ!っていうけど、私はそれにこう付け加えたい。これけなすヤツ居るとしたら相当なバカ

演出、脚本、役者、作品の方向性、編集、映像、カメラ、全てが完璧な仕事を発揮し、映画にしか出来ない興奮と感動があり、重厚で薄汚い人間ドラマと組織、事件、なんでもある。確かに地味だし、何かが特出してるという事もないが、黒澤映画のそれを観てる様なリアリティとドラマがあって、

これ以上映画に何を望むという完璧に計算された傑作。

例えるならば『殺人の追憶』だ。というか、『殺人の追憶』の影響は強いと思われる。もちろん原作がいいのだろうし、原作ファンからすると納得いかない仕上がりなのだろうが(基本的に私は映画を観るのが好きで、その映画の魅力が半減すると困るので原作というのは基本読まない)ホントに良く出来てて、これ!っていう破綻が一切無い。トヨエツは声のトーンで最初「ん?」って思ったけど、観終わる頃には彼しかいないと思わせるし、笹野さんの演技もマジで秀逸。もちろん脇役達も見事な仕事をしていて、完璧すぎる。

刑事ドラマとしてもミステリーとしてもサスペンスとしても家族ドラマとしても一級品。絶対観ろ!何が何でも観ろ!てなわけであういぇ。