チェ 39歳別れの手紙


『チェ 39歳別れの手紙』鑑賞。『チェ 28歳の革命』の続編というか、本来は大長編だったものを二部作に分けたもの。

チェ 28歳の革命』はソダーバーグの『トラフィック』の流れを汲んだ映像でゲバラが革命を成し遂げるまでを描いた作品で、ピンぼけも手持ちカメラもまともに収まってない構図も、全て狙った感があり、そのおかげでゲリラの一員になったかのような錯覚まで覚えるリアルさがあった。映画的なカタルシスは一切無いが、巧みな時間軸のずれが、ゲバラの心象を表現し、さらにベニチオ・デル・トロが年代別に完璧にゲバラを演じ分けたおかげで、時間軸がずれても迷う事がなかった。そして、その時間軸のずれが映画ならではの編集であり、映画的なカタルシスの無さも、『チェ 28歳の革命』の魅力とも思えた。

さて『チェ 39歳別れの手紙』だが、決定的な弱点がある。『28歳別れの手紙』で駆使した時間軸のずれが一切なくなってるという事だ。冷静に考えれば、キューバ革命に投じた後は、インタビューや演説などがあり、それを差し込めるが、ボリビアに行った時は死にに行ったようなものなので、その後の発言などあるわけもなく、ひたすらゲバラ一行の行動を追うだけになってしまった。もちろんリアル指向は抜群で、ガタガタのカメラワークもピンぼけもレンズフレアも外しまくった構図もヘタクソ風に撮った事がホントに作品に合っていて、長回しを多様してる事から、ここまで来るとゴダール的な手法を押し進めたのは黒沢清とソダーバーグだったんじゃないか?とも思わせる。映像はホントにホントに素晴らしい。だが、先ほども書いたようにソダーバーグの『チェ』は映画的なカタルシスが皆無で、そのカタルシスの無さに時間軸のズレを使った事が『28歳の革命』の魅力だったのだが、その時間軸のずれが無くなってしまった事で、ホントにダラダラした映画になってしまった。テンポはホントにルーズなので、眠くなってしまうという人も居そうだ。

デルトロの演技は完璧で、戦闘シーンでの長回しの迫力も含め、個人的には楽しめたのだが、前作がダメだったという人は『39歳別れの手紙』はもっともっとダメだと思う。ホントに淡々としてて、映画を観てる感じがしないし。