レスラー


1日夜
漫画家の古泉智浩さんとお会いした。お会いしたというのは違う、遭遇したという方が正しいだろう。ぶっちゃけ、声かけようかどうしようか迷ったのだが、『ミルフィユ』も『チェリーボーイズ』も『死んだ目をした少年』も兄妹で読み耽って、ばっちしハマっており、妹に自慢したいというのもあって、お声をかけさせていただきました。握手までしていただき、生きてて良かったと思った。今度はがっつし映画のお話したいです!

つーわけで、古泉さんにもその時に言ったんだけど、22時半から試写で『レスラー』を鑑賞。

『π』と『レクイエム・フォー・ドリーム』という強烈なワンパンチで映画ファンを魅了したダーレン・アロノフスキーが、80年代に活躍した落ち目のレスラーというシャレにならない役をミッキー・ロークにやらせ、ベネチア映画祭で金獅子賞を受賞した作品。

ダーレン・アロノフスキーと言えば、ぼくの中で、スタイリッシュかつ粒子の荒い映像と編集を駆使して、救いの無い現実を切り取る監督というイメージがあった。麻薬に溺れていく人々を題材にした『レクイエム・フォー・ドリーム』は今まで観て来た映画の中でもダントツに怖い作品で、ぼくはDVDも買ってしまったくらい好きなのだけれど、あまりの救いのなさにあまり観る気がおきない。

『レスラー』はもしかしたらダーレン・アロノフスキーだったからこそ撮り得た作品だったのかもしれない。

今回、ダーレン・アロノフスキーはモーションで遊んだりせず、手持ちカメラでじっくりとミッキー・ロークの演技を活写していく。その映像はさながらダルデンヌ兄弟や『バッファロー'66』のようだ。言えば、『レスラー』は映像的にもストーリー的にも気の衒った事は一切していない。『グラン・トリノ』同様、驚異的に少ないバジェットで役者達の味わい深い演技をフィルムに焼き付けてるだけなのだ。

巷で言われてるようにミッキー・ロークの演技がとにかく素晴らしいが、個人的には相手役のマリサ・トメイの方が強烈だった。凄まじい演技だった。引退間際の落ち目のストリッパーという役で文字通り裸になって、全てをさらけ出す演技を披露していて、ぼくは女優の演技に関心する事はほとんどないのだけれど、これには参った。作品のためにここまで女優というのは出来るのか!と感心しきりだった。日本のクソ女優どもはこれを見習って欲しい。

まぁ、後半はずっとずっと号泣してたわけなんだけども、音楽がかかるわけでもなければ、過剰に泣かせる演出など皆無!セリフによる説明も皆無!ホントに良い映画とはこうなんだという見本のような素晴らしい作品だった。

それにしても、今年は少ないバジェットで昔気質の映画ファンを唸らせるような魂震える傑作が多い。新潟では遅れての公開だった『エグザイル/絆』しかり、『スラムドッグ$ミリオネア』や『グラン・トリノ』『チェイサー』など、「そうそう!映画ってこういうもんなんだよ!!」と見終わった後に興奮してしまうような作品が多い気がする(もちろんクソ映画も量産されてるけど)。とにかくこれからもどんどん『レスラー』みたいな映画が増えるといい。ミッキー・ロークの起用に反対したおっさんどもは今すぐ死ね!

ああ、そう言えば『エグザイル/絆』のDVD出たんだよなぁ。欲しいなぁ。あういぇ。