劔岳 点の記


23日朝
劔岳 点の記』鑑賞。

15歳くらいの時に登山を趣味としていた時期がある。毎週のように親父と二人で山に登り、いろんな話をしたりしたわけだが、山というのは不思議なもんで、標高が高くないのに、3時間半も頂上までかかったり、急激に悪天候になったりと、人間が登ってくるのを拒んでいるのか?と思う時もしばしばあった。その分、肉眼で観る風景の美しさはブルーハーツのごとく「写真には写らない美しさ」があり、雲を見下ろしたりした時はさすがに感動した。

山に登っていたら、変なところに石が突き刺さっていて、これなんのために存在するんだろうと思っていたが、それがまさか測量のためのモノだとは思わなかった。

映画の話に戻ろう。あの伝説の映画『八甲田山』の撮影を手がけた、木村大作新田次郎の原作に再び挑む。しかも今回は監督として演出まで手がける。最も登山が厳しいとされる剣岳の測量に挑んだ男たちの物語で、測量士達と同じようにルートを登り、彼らが観たであろう絶景をカメラに収め続ける。

確かに映像はとんでもなく美しいし、凝りに凝ってる映画だというのも実によく分かるのだけれど、映画に向かない場所で絶景を撮影するというのであれば、明らかに映像の美しさは『蟲師』の方が上のような気がする。もちろん『天国の日々』のようなマジックアワーなんかはホントにひゃーと声が出るほど美しいし、それこそスタッフや役者は死ぬほど苦労したはずなのだが、この自然の風景すげー度で言えば、『蟲師』の方が感動は大きかった気がする。まぁ山からの景色っていうのはある程度決まってたりするもんだし、人間の目線にこだわりすぎてしまって、アングルも決まった感じばっかりだったからというのもあるんだろうが。

それでもこの感動の差というのは、山に登った人達と登ってない人達の差なのではないかと。例えば、ぼくが登った山からの美しい風景を写真に撮ってきて見せても、登ってない人にとっては、どうでもいい風景の写真であり、その時の西日からの暑さであるとか、喉の乾きみたいな苦労した分の+アルファってヤツは伝わらないわけで、あくまで写真は写真でしかないんだなぁと思った事があった。

でも映画であれば、主人公たちの苦労を観客にも伝える事は出来るわけでしょう、んで、同じ感動を味あわせる事も可能なわけだが、『劔岳』には決定的な弱点があって、登山してる時の「ああ辛い」という描写が一切映画の中に出てこないため、難儀な思いをしてまでたどり着いた絶景だ!っていう感じがまったくない。自然の過酷さは写していても、山を登る事自体の苦労がそんなに見えなかった。だから最終的に映画を観終わっても頂上に登ったぞー!!!という興奮にならなかった。

それから、音楽が明らかに場面と合ってない、なんでそのタイミングでそんな音楽なの?と違和感ばかりだった。

というか、この測量士達は映画のスタッフの気持ちをきっと代弁してるよね、「日当60銭で重い荷物担いで山登るなんて割にあわねー」「あっちは20銭多くて、最新の道具も使って、楽そう」とかは、明らかにこの映画に対するスタッフのグチっぽい。「なんで山に登るんですか?」という問いは何で映画を撮るんだろうという風にも思えるし、最終的に先人が居たとか、もう立派な仲間ですというくだりもそれっぽいし。映画を撮るというのは大変なんだろう、主人公達とスタッフの苦労が重なったよぉ。

それでもスクリーンで観なくては成立しない映画だし、1000円ちょっとで大自然をスクリーンで観れるのだから、観る価値はある、、、、、、と思う。

23日昼
昨日の音楽寅さんはすごく良かったよ!!選曲が完璧だった!特にザ・バンドレオン・ラッセルニール・ヤングのつるべ打ちには泣きそうになったよ!!あらためて『The Weight』は名曲だと思ったね!あういぇ。