ボルト

9時半に『ボルト』鑑賞。

まんをじしてという言い方もあれだが、ピクサーでなく、ディズニーからジョン・ラセターがクレジットされた作品がついに公開された。ニンテンドーで言えば、スーパーバイザー:宮本茂みたいなもんなのだろうが、それでもという事で、是が非でも観たかった『ボルト』。

事前の情報を入れずに観たかったので、id:doyさんやid:tsumiyamaさんのエントリーもガン無視して、観に行ったわけですが、もういろんなところで書かれているように、高品質、高水準のエンターテインメントで、あげくの果てには号泣までして、大満足。

コンセプトは『トゥルーマン・ショー』の犬版。スーパードッグが活躍する人気ドラマ『ボルト』。このドラマの人気の秘訣は、ボルトに起こってる事が本当だと信じ込ませる事。スタッフや特殊効果のおかげで自分がスーパードッグだと思い込んで来た犬が、現実世界に放り出され、さらに飼い主と離ればなれになってしまった。ボルトは現実世界を知りながら愛する飼い主の元へと戻るために旅をする。

冒頭から、物語のコンセプトを一気に映像で説明しきった時点で、これは良作だと確信した。アクションシーンはスピード感たっぷりなのに、ウエルメイドで、そのウエルメイドな感覚がどのシーンからも汲み取れるほど。

おもしろいなぁと思ったのは、物語の展開だ。

普通、この手の物語は普通の犬が現実世界に飛び出して、通過儀礼を経て、スーパードッグになり、活躍して、めでたしめでたしのパターンなのだが、『ボルト』はスーパードッグが現実世界を知り、通過儀礼を経て、普通の犬になり、普通の犬として活躍して、普通の生活を手に入れてめでたしめでたしなのだ。

言ってしまえば、クライマックスが最初にあって、物語が進むにつれ、だんだんと現実的な、生々しい話になるのが『ボルト』の展開である。

id:tsumiyamaさんもこちらで指摘しているが、これはずばり、ぼくらが子供の頃から大人になるにつれて体験する事である。

誰しも、子供の頃にセーラームーンになりたいとか、名探偵コナンになりたいとか、仮面ライダーになりたいとか、孫悟空にないたいとか思った事はないだろうか?記憶が無いにしろ、意外と親が覚えてたりするから聞いてみるといいだろう。

ところが、ある程度世の中のしくみを知り、知識が増えると、セーラームーン仮面ライダーにはなれない事を知る。そして、日常を淡々と積み重ねて行く事が人生であるという事が身に染みてくるようになる。

それでも、日常の中に恋愛があったり、セックスがあったり、酒があったりと、大人になってからでしか味わえないちょっとした楽しみもそれなりに転がってたりする。

『ボルト』の物語の構造にあるのは、ずばりこれだ。当たり前の日常こそ、幸せであるという事、そして、子供の頃にヒーローに憧れたあの気持ちを見事にエンターテインメントとして昇華したのが『ボルト』なのである。

という事で、オチが弱いとか、失速しているという意見もあるだろうが、それこそが子供から大人になるという現実なのだ。『ボルト』は大人になるという事は、こういう事なんだよと子供に教えるには最適の作品だと思う、子供が居るお父さんは必見だ!あういぇ。