かいじゅうが吼えて恋愛もある『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』


ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』をDVDで鑑賞。

なんでDVDで観たかっていうと、新潟では――――という話はもうやめておこう。やってたんだけど、まぁ、気づいたら終わっていた。

さて、のっけから書くが『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』は傑作だ。いや、大傑作と言ってもいいだろう。バートンが『バットマン・リターンズ』を撮ったようにデルトロも『ヘルボーイ』を自分の好きなテイストに作り直してしまった。『ダークナイト』と同じように前作がフリになっていて、余計な説明がないぶん、映画は見せ場たっぷりにどんどん加速していき、デルトロのダークなテイストがそれを援護射撃する。

それにしてもこの映画のサービス精神はすごい。この映画に入ってないのは「おっぱい」くらいだ。宮崎駿大友克洋ジョン・ウー、ロボット、ゴジラ、チャンバラ、妖怪、アメコミが盛り込まれ、それぞれのオマージュに愛が詰まってるから、本気で泣ける。

特に中盤に出て来るかいじゅうが暴れ回るシーンは必見。下からかいじゅうを見上げるカットに、今までにないカタルシスを感じ、しかも逃げ回って、戦車がやってくるという展開にはならず、それを巨大リボルバーで倒しにいくというのも燃えた。なかなかかいじゅうが出て来る映画では珍しいのではないだろうか。

さらに『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』は恋愛映画でもある。しかも恋愛映画でやれる要素もこれまた全て詰め込まれてるから驚く。

ネタバレになるので詳しい内容は書かないが、この映画では二つの恋愛が平行して描かれ、さらにその二つは対極的である。一つは倦怠期を迎えたカップルが問題を乗り越え結ばれるラブストーリーで、もう一つは運命的な出会いを果たした二人が悲劇的な結末を迎えるメロドラマだ。

しかもこの二組のカップルは両方とも、「好きな人がいないと人生なんて生きる意味がない」と終始一貫していて、片方の女は「例え世界が滅びたとしても、この人と一緒にいたい」と言い、もう片方の女は「私がいるせいで世界が滅びるのならば、私は――――」とまったく違う結末を迎える。

もちろん両方とも純度が高いわけだが、普通、恋愛映画というと、これのどちらかしかやらない。しかも「倦怠期」と「出会ったばかりの二人」ならば尚更だ。そして、そんなことを二つもやられると重くなる。それを過剰な演出(大げさな音楽とか、号泣してクローズアップとか)を加えずに、さらりとやってのけるあたりにとても好感を持った。しかも、これはアメコミ原作のかいじゅう映画なんだぞ!!しかも日本や韓国のように鼻持ちならないイケメンがやるわけではないので、ド直球のセリフが飛び出しても、クサくならないのだ。これは宮崎駿の『紅の豚』にも通ずるものがあるが、まさか、ここにもその影響が――――

という事で、中学生男子の好きな要素だけでなく、恋愛映画としても完成された『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』は当然のことながら絶対必見なのだけれど、最後に一言――――


スクリーンで観たかったよぉぉぉぉ!!!!!!!!


あういぇ。

あ、書き忘れた、ビール飲みながら主人公二人がCDをかけて歌うシーンは映画的なカタルシスとは関係なく、ガチで泣ける。男の友情もちゃんとあるぞ!