とりあえず邦画観てないんで『ゼロの焦点』を観た


バイト終わりで『ゼロの焦点』鑑賞。

ぼくは松本清張の長編を数冊読んだ程度だし(ただ、短編はすげぇ好き)、映像化された全ての作品も観ていないので、ホントにこの映画単品の感想になってしまうのだが、驚いたのは犬童一心がここまで松本清張らしさというものを出せたことだ。もちろん原作ありきの世界観なのは分かっていたが、ハッキリ言うと、『ゼロの焦点』と『ジョゼと虎と魚たち』と『メゾン・ド・ヒミコ』を同じ人が撮ってるとは思えない。かなり松本清張の映像化作品を研究したのだろう。美術もセットもなかなか良く、三丁目のなんちゃらよりも映像に魂こもってたように思う。音楽もかなりそれを意識したものになっていて、重厚だった。ぼくのお気に入りの作家であった犬童監督は職人としての道をどんどん歩んで行くのかもしれない。

ゼロの焦点』はそれこそ宣材にも書かれてるように日本ミステリーの出発点みたいなもので、火サスだって、もしかしたら『ゼロの焦点』無しでは生まれなかったかもしれないのだ。崖の上で犯人がじぶんのしたことを淡々と話すって『ゼロの焦点』が最初らしいですわよ、奥さん。実際岸壁に当たって砕ける波の映像もたくさん出て来るし。

ゼロの焦点』は『砂の器』と同じように、トリックは二の次、犯人が誰かというのもそこまで重要視されず、とにかく犯人の動機が物語の根幹を成している。

自分にとって不都合な過去とそれが生まれてしまった時代背景、そして、その過去を隠すための殺人…作品を見る限り、すごく野村芳太郎の映像を参考にしているなぁと思ったのだが、なんと調べてびっくり、野村芳太郎橋本忍で『ゼロの焦点』は映画化されていたのであった!知らなかったよぉ!

キャストに関していうと木村多江は完璧だ。見事な演技だったと思う。中谷美紀もそこまで悪くはなかった。ただ、ぼくは広末涼子の役にはいささか疑問が生じる。広末涼子は今や映画女優として日本でもトップクラスになってると思う。かわいい顔してさらにエロく、演技も申し分ないのだが、ハッキリ言ってこの役には合わない気がするなぁ……なんか、広末涼子って平成のアイドル顔というか、昭和の匂いがまったくしないんだよね。例えば時代的にも岡田茉莉子であるとか、高峰秀子とか、成瀬映画に出て来る女優さんがやるべきだと思うなぁ。つっても、そういう雰囲気の女優さんは今いないわけで、モデルあがりのお人形さんみたいな人ばっかりだから、困っちゃうよなぁ。つーか、この役はどう考えても仲間由紀恵じゃないですか?これを思ってるのはぼくだけなのだろうか…

まぁ、普通に楽しめたけど、これって原作がやっぱりいいんだよね。それに尽きると思う。ただ、犬童監督は一度エレベーターで一緒になって、話しかけましたけど、とても良い人でしたよ、一体何のフォローだ。

明日はレイトで『イングロリアス・バスターズ』観るぞ!!あういぇ。

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