『イングロリアス・バスターズ』を観たっ!(ネタバレ無し)


初日のレイトでタランティーノ新作『イングロリアス・バスターズ』鑑賞。行くなんて一言も言ってなかったのに、映画好きの顔なじみが多数揃って、まさにお祭り状態だった。

レザボア・ドッグス』と『パルプ・フィクション』以外の作品が微妙という人には、印象は悪かったかもしれないが、『ジャッキー・ブラウン』から『デス・プルーフ』、『キル・ビル』も同じように傑作だった人にとっては自信を持っておすすめ出来る至福の2時間半。セルジオ・レオーネの『ウエスタン』を彷彿とさせる冒頭から、『デス・プルーフ』にも似た唐突なラストまで一気に見せる痛快作である。

基本的に映画を構成しているのはタランティーノ作品でおなじみの過剰なおしゃべり。一体何%がおしゃべりなんだよというほどに登場人物は喋り続ける。『デス・プルーフ』では、意味ねーという会話のシーンだったが(それがよかったんだけど)、『イングロリアス・バスターズ』では、腹に一物あるヤツらが互いを探り合いながら、関係ない喋りを際限なくし続けるので、全編に渡って異様な緊張感が持続する。ヘタなサスペンス映画よりもハラハラすること請け合いだ。そして、「ここで来るだろ」というタイミングを全部ずらして、衝撃的なシーンが続いて行くので、ものすごく小気味良かった。映画はこの緊張感とリズムを各章キッチリ守って、それを最後まで保っているので、結果見終わる頃には「これはタランティーノでしかあり得ないカタルシスだなぁ」と思わせてくれる。

もちろん決意した女が正装して、部屋から出て行くところを長回しで撮ったり、下からあおって喋るシーンを撮ったり、テロップがバシバシ出たりというおなじみの演出も多数あり、音楽もマカロニ風味全開だったが凝りに凝っていて、音楽が鳴るたびにこちらを笑わせてくれた。ナレーションに合わせてキャラクターの紹介をするんだけど、それがまったく意味がなくて、ギャグになってるというのも『キル・ビル』を彷彿させたし、時間軸のずらしこそ無かったものの、映画に関するダベリも含め、第二次世界大戦を舞台にした映画でもタランティーノ節は出るんだなぁと妙に感心した次第。

キャストもバシバシ決まってたが、やはりいろんな人が言ってるように四カ国語を操ったクリストフ・ヴァルツの演技が大変素晴らしい。カンヌ映画祭で主演男優賞を受賞したのは納得だ。ジュリー・ドレフュスが相変わらず通訳というのもおもしろかったし、『12モンキーズ』からまったく変わらないバカキャラのブラピも完璧で、有名スターを取り揃えないところも好感を持った。

「作戦がずさんでヌルくて戦争映画じゃないじゃん」という意見もあるようだが、「じゃあ『戦場にかける橋』みたいな戦争映画でも見てろよ、ばーか。」と中指立てながら言いたいくらい良かった。さいこー、ちょーさいこー、あういぇ。

あ、そうそう、クライマックスのあのシーンは『炎628』が元ネタだと思いますよ!と古泉さん達にいきまいて言ったのだが、パンフレットに違うと書いてあった……すいません。

【追記】今月のキネマ旬報芝山幹郎中原昌也が『イングロリアス・バスターズ』についてこんなことを言っていた。

「ブラピ主演の戦争アクションだと思ったのに、最前線で活躍するシーンが一個もなく、『パルプ・フィクション』とは真逆の作りになっているので、それらを期待するとダメだろう」

ホントにそういう映画だと思って観ないでね!

関連エントリ集

言い足りなかったことやあえて書かなかったことも全部こちらに書いてあるので是非是非参考にしてください。

イングロリアス・バスターズ - The Secret Doctrine(秘密教理)

パルプノワール的傑作「イングロリアス・バスターズ」 - 深町秋生の序二段日記

「イングロリアス・バスターズ」 - いずむうびい

2009-11-21 - 空中キャンプ


あとこちらも買いました。プロの方々の分析はすごい、マニアックすぎ!