文字通り『武士の家計簿』が見たかったんだけど……
『武士の家計簿』鑑賞。ジジイとババアばっかり見てた。咳払いしたり、ガサガサとせんべい出したり、あめ玉出したり、うっせーなぁもう。
ポスターに使われてるこの写真↑が『家族ゲーム』の有名な構図*1を模していて、さらにそろばん*2がフィーチャーされてることから、おっ!そっちのファンに対するサービスなのか!?と思ったが、単に宣伝のためのお遊びだったようだ。実際それに似た映像は出て来るものの、よくよく考えれば時代劇では一列に並んで飯を喰うというのは当たり前であって、ドリフの殿様コント*3ですら同じような絵を見ていたのであった。とほほ。
ちなみにこれな。
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いわゆる下級武士の生活を淡々と描いた作品といえば『たそがれ清兵衛』があるわけだが、幕末から明治という激動の時代をそろばん片手で乗り切った下級武士の家計簿が見つかった!という企画がネックになっているというか、借金返済のために奮闘する侍の姿を見せるだけが関の山であって、それ以外はとってつけたようなエピソードが出て来るだけでそれがあまりおもしろくない。一応見られるようにはなっているのだが、それホントにいるか!?上映時間を延ばすためにやってないか!?と若干思ってしまう。
しかも映画ではその侍の生活っぷりが詳細に描かれるわけではなく、あくまでそれは添え物程度で、映画はさして盛り上がりのないまま、なんてことのないラストを迎える。映画のキモはどうやって借金返済をしたのか?であり、そのために収入がいくらだとか、いくら支出があるとか、その辺のことも細かく見たいのに、それは全然出て来ず、ぶっちゃけ借金もしれーっと返済されたりして、何がやりたいのかさっぱり分からない。文字通り武士の家計簿が見たいのだが、それがちっとも出ないのであれば、原作本読むんだけど……
不景気で先行きの見えないこの時代にどうやって生きていき、そしてどのような幸せを掴むのか?みたいなことがテーマだと思うのだが、そのわりに映画がそこに着地してくれず、竜頭蛇尾どころか、徹頭徹尾ふわふわした展開なので、企画そのものに映画が完全に喰われてしまっているという印象しか残らなかった。あと主人公一家に立ちはだかるハードルが“借金”ひとつしかないというのもどうかと……嫌がらせをする上司やご近所さんなどがいてもよかったんじゃないかなぁ……
ただ、そんな中役者陣はほぼ完璧。森田芳光という人はいつもキャスティングがうまいなぁと感心していたのだが、今作でもその手腕は冴え渡る。特に直之の両親を演じた中村雅俊と松坂慶子がホントに素晴らしい。当初は威厳があり、一家の大黒柱という感じが伝わるのだが、返せない借金が見つかったと分かった瞬間のコメディ演技が絶妙だ。実際劇場もドッカンドッカン沸いていた。真面目一徹の堺雅人も合ってたし、どんな状況に陥っても凛としている仲間由紀恵もよかった。彼らの佇まいや演技、所作法などをミドルショットの長いテイクで捉えたのも大正解で、役者のアンサンブルで見れたというのは正直ある。
よく映画を観た後に「期待してたものと違った」という人がいるが、ぼくはそれがすごく嫌いで、期待を下回ってたならまだしも「期待してたのと違った?いいじゃないか!そんなに映画に予定調和なものを求めてるのかお前は!期待してたのと違って多いに結構!むしろそれがサプライズでいいじゃないか!映画ってのはそこに映ってるものがすべてだ!バカヤロー!」と、いつも思ってたのだが、今回ばかりはそれがずばーっと当てはまるなぁ……
これ……思ってたんと違う!!!!