『メイキング・オブ・ラブ』をレンタルDVDにて鑑賞。正しい表記は『making of LOVE』なのかな?
人気アルファブロガーすきもの主婦ことアガサさんが今年おもしろかった映画として名前を挙げ、さらに『ダブル』が絶好調の深町秋生さんに「全然今年のベストに入れてもいいくらいおもしろかったよ」とおすすめされたので観てみた。
ここに来てまたも思わぬ伏兵登場!ホントに素晴らしい!素直に楽しかった!と言える作品に仕上がっていて正直驚いた。
映画監督ふるさわたけしの新作がクランクインしたが、主演の青年が謎の失踪をしたことによって撮影中止になってしまい、そのメイキングだけが残ってしまったという『ロスト・イン・ラ・マンチャ』のようなフェイクドキュメンタリーの体裁をとった作品。
最初なんのこっちゃわからん展開に面食らいそうになるが、なんとそれが全部伏線になっていてあれよあれよという間に回収していく展開がお見事。映画を作る過程で愛を作るというユニークな発想のラブストーリーではあるが、古澤監督自らが演じた映画監督ふるさわのキャラクターが素晴らしく。泣きやセンチメンタル、狂気の方向にも傾きかけるものの、彼が体を張りまくるたびにガハハと笑ってしまうので、それがいい緩和剤となり、終始楽しく観てられる。もちろんヒロインの藤代さやの魅力は圧倒的で、誰もが彼女の微笑みにノックアウトすること必至だろう。
『さんかく』を観た時にこれは新感覚の小津だと思ったが、ぼくは『making of LOVE』にはゴダールを感じた。
ラブストーリーにミステリー、SF、メロドラマというジャンルレスなごった煮もさることながら、モキュメンタリーという形式は実は、映画を観ていて現実を感じさせこちらを突き放すというゴダールが最も得意とする演出に似ている。実在する映画監督や詩人などを登場させ、彼らに「映画とはなんぞや?」というのを語らせるというのもよくゴダールがやるが、この『making of LOVE』でも映画ライターでデザイナーの高橋ヨシキ氏に「これこれこうやって撮らなきゃダメなんだよ!」ということを喋らせ(内容は映画を観てからのお楽しみな!)、さらに自ら演じている映画監督ふるさわに「あんたプロデューサーだろ?金もうけしたいんだろ?でもさ、金もうけしたいだけだったらさ、他の仕事いっぱいあんじゃん?なんで映画の仕事してんの?映画でさ、見たことないものさ人に見して、それで金もうけしたいんじゃないの?」と映画作りの真意を突くようなことを言わせたりしている。ぶっとんだラストの後に急にヒロインが主題歌を歌うというのも、張りつめた空気の中から急にミュージカルシーンに移行するゴダール演出に近いものがある。
『making of LOVE』にはかっこいい映像も金のかかったド派手なシーンもない。オシャレな街並が映るわけでもなければ、有名な役者も出てるわけじゃない。ただこの作品には映画への愛と、その愛を作り上げる過程が生々しく記録されている。この作品は映画と女の子を本気で愛してる人じゃなければ作れない。映画監督ふるさわはプロデューサーに指示され(たということを口実に)、女の子を脱がそうとカメラを回し続けるが実は女の子に対する気持ちと映画への愛は純粋そのものなのだ。
こんなに押し付けがましくない純化された愛を見せつけられて、幸福な気持ちにならない映画好きがいるだろうか?『making of LOVE』絶対必見である。あういぇ。
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