『グリーン・ホーネット』は80%の破壊と20%のバカで出来ている
『グリーン・ホーネット』を3Dの字幕版で鑑賞。
ブルース・リーが香港で映画スターになるきっかけとなった作品として名高い“あの”『グリーン・ホーネット』のリメイク。監督がミシェル・ゴンドリーということもあって、『アベンジャーズ』のようなオシャレな作品になるんだろうと勝手に想像していたのだが、ふたを開けてみるとおもちゃ箱をひっくり返して上から踏みつけたようなスラップスティックコメディになっていて驚いた。それでいてグリーン・ホーネットらしいガジェットはたくさん残してあり、リメイクするならこれくらいやってもらわないと!という見本のような快作に仕上がっていた。
いきなり書くがこの作品、基本的には破壊しかない。割れまくるスプリットスクリーンやスロー&早回しのモーション感覚など凝った映像表現も多々出て来るが、基本的には徹頭徹尾何かが壊れ続ける様を延々映しているだけである。
主人公のお気に入りの人形を父親が破壊し、20年後に時間が飛んだかと思えば寝起きでまた父親がカプチーノの入ったコーヒーカップを破壊するという妙な構造になってるところから映画はスタート。当然ながら破壊しまくりのカーチェイスはふんだんに詰め込まれ、敵地に乗り込んだときはミサイルを全弾撃ち込み、車とダンプカーを破壊。その後自宅で大げんかしてすべての部屋を破壊したかと思えば、クライマックスは日本料理店を破壊し、その後に新聞社の工場、フロア、ロビーを徹底的に破壊。さらにそのまんま車ごとエレベーターにつっこんでエレベーターを破壊しながら上がっていき、真っ二つになった車を動かしながらオフィスを隅から隅まで破壊して映画が終わるという破壊づくしの作品なのだ(他にもたくさん破壊シーンはあるが割愛)。
企画立ち上げから公開まで紆余曲折あった作品で、主要のキャストは当初計画したものとだいぶ違うのだが、主演と脚本を担当したセス・ローゲンを含めた新キャストが結果オーライと言わんばかりに完璧で、徹頭徹尾破壊しかないと書いたが、この主要キャストのキャラクターを活かした脚本が実は良く出来ている。映画全体はリアリティのかけらもないが、無数の細かな伏線が伏線と気付かれないようにしっかりと張られていて、最後の最後でそれを一気に回収するなど、骨組みはオーソドックスだったりする。
セス・ローゲンが自分ひとりじゃ何も出来ないくせに、妙なプライドを持ってるクズ野郎を演じているのだけれど、自分自身で当て書きをしてるだけあって完璧に演じ切っていた。そしてカトー役のジェイ・チョウが素晴らしい。ブルース・リーを意識してるというより『グリーン・ホーネット』という作品のカトーという役を自分なりのアプローチできちんと演じていたように思えた。クリストフ・ヴァルツはちょっと合ってなかったような気もしたが、冒頭のすごみを効かせるシーンはさすがだなと思ったし、キャメロン・ディアスも過去作のコメディエンヌっぷりをひとまとめしたような立ち振る舞いで観客を魅了する。
とは言いながら、敵も味方も含め、基本的にバカしか登場せず、破壊されつくされる映像もあってバランスを欠いたいびつな作品になっているが、実のところオリジナルの『グリーン・ホーネット』も007のようなガジェットにハードボイルドなミステリーが絡むバランスを欠いた作品なので、ある意味でそのスピリットは継承されている。それが証拠にエンドクレジットはオリジナルの『グリーン・ホーネット』のオープニングを模したものになっていて、テーマ曲もそこでかかるというおまけつきだ(まぁ取ってつけたようだと言われればそれまでなのだが)。
とにかく軽快な音楽もガンガンなるし、正体不明の二人組が意味もなく街を破壊しまくるということで新世代の『ブルース・ブラザース』と呼びたいくらい楽しかった。なんやら理屈をこね回して書いたが、肩の力を抜いてビールでも飲みながら観ることをおすすめしたい。あと2Dでいいよ。2Dで、3D高いしね。浮いたぶん売店でビール買いましょう。あういぇ。
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「カトー!行け!新聞には俺が出とくから!」というところに笑いました。