『デュー・デート』が『ハングオーバー』よりも「笑えた」理由

『デュー・デート 〜出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断〜』鑑賞。サブタイトルで説明しすぎだろ、無駄になげぇし。

アメリカで超特大ヒットを記録し、コメディ映画史上最も稼いだとされる大傑作『ハングオーバー』を経て製作されたトッド・フィリップス監督最新作。

5日後に妻の出産を控えた建築士が出産立ち会いのため、仕事先のアトランタから妻のいるロサンゼルスへ向かおうと飛行機に乗り込む。ところがひょんなことからテロリストに間違えられ、搭乗拒否。さらに空港前で妙な男と事故ってしまったせいで荷物が入れ替わり、サイフやIDだけが空の上に飛び立ってしまった。どうやって妻の元へ向かえばいいか途方にくれていたところ、そのトラブルの元になった男がレンタカーを借りて一緒にロサンゼルスまで行かないかと誘って来る。死んでも関わりたくないと思いながらも、金もIDもない建築士は仕方なく彼とアメリカ横断をするはめになるのだが……というのがあらすじ。

ハングオーバー』の時に「観客巻き込み型の王道作品」と評したが、今作も映画の土台はかなりカッチリしている。仲間と次から次に起こってくる危機を乗り越えて目的地に向かうという意味では『隠し砦の三悪人』とベースは一緒(というかありとあらゆる物語の基本中の基本)。しかも凸凹コンビがやんややんや言いながら旅をするという意味で、ホントに千秋実藤原釜足だけで映画を転がしてるようなものだ。

そのしっかりした土台の上に『デュー・デート』の基本的な味付けである「笑い」が盛りつけられるわけだが、これが今回とても日本人にとって親しみのあるものになっている。ずばりそれは漫才だ。しかもしゃべくり漫才である。実際、ロバート・ダウニー・Jr.がザック・ガリフィアナキスに向かって、言葉でツッコミを入れてるところが多々あり、しかもザックは天然の大ボケバカヤローなので、いってしまえば話を進めたいのにちっとも言うことを聞いてくれないアンタッチャブルやオードリーの漫才にかなり似ていた。「『デュー・デート』の方が『ハングオーバー』よりも笑えた」「『ハングオーバー』の方が『デュー・デート』よりおもしろかった」という意見をいくつか目にしたが、確かに映画としてのおもしろさを追及した『ハングオーバー』に比べると、それをちょいと削ぎ落して笑いの方にウエイトをかけたのが『デュー・デート』で、日本人がより笑えるという意味では後者の方が上だと言える。さらに笑いの面でいうと漫才をベースにドタバタや下ネタ、身障者ネタ、動物ネタなど、出来る限りの種類のものをギッチギチに詰め込み、映画は95分という驚異の短さで駆け抜けていく。

この笑いを一手に引き受ける事になったロバート・ダウニー・Jr.だが、彼の演技がとてつもなく素晴らしい。もちろんどうしようもない相棒を演じるザック・ガリフィアナキスも「役者を目指している男の演技の演技」という複雑な演技を完璧に披露していた。ジュリエット・ルイスジェイミー・フォックスのゲスト陣も映画の邪魔になることなく、かえって彩りを添える。

ぼくは『ハングオーバー』の方が映画としておもしろかったし好きだけど、日本人に親しみやすい笑いがベースという意味では『ハングオーバー』よりも笑えた。実際ぼくは10数人入った劇場で観たのだけれど、それでも全編ドッカンドッカン沸いていてすごく楽しい映画体験となった。特に“車内オナニー”と“遺灰コーヒー”ではみんな噴き出していたくらいだ。こういうのはスクリーンじゃないと意味がないから、どんどんコメディは公開するべきだと思った次第です。ワーナー新潟ありがとう。あういぇ。

あ、映画はもちろん傑作ですよ。

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