とても上質な作品『噂のモーガン夫妻』


『噂のモーガン夫妻』鑑賞。

弁護士と不動産会社の社長というセレブ夫婦が主人公。実は弁護士である夫が浮気をしてしまったことで離婚寸前になっていたのだが、ヨリを戻そうと誘った食事の帰りに二人は殺人事件を目撃してしまう。24時間の警護を互いにつけられて生活が始まるのだが、犯人がプロの殺し屋だったことで、すぐに居場所を突き止められ妻が狙われた。殺される寸前のところでなんとか逃げ切った妻だったが、今度は証人保護制度に従って、超が付くほどのど田舎で生活することになる……

ヒュー・グラントサラ・ジェシカ・パーカーのコンビと聞いただけで、観ない人も多いと思うが、これがウェルメイドに作られた上質の娯楽作で、オールタイムベストクラスとは言わないまでも、絶対に観て損は無いと自信を持っておすすめ出来る作品に仕上がっていた。

殺人事件を目撃した離婚寸前の夫婦がど田舎に来るという設定がバツグンにうまく、これにより、離婚寸前の夫婦がどのように仲直りしていくか?というラブストーリーと、殺し屋に狙われてるというサスペンスと、都会人が田舎の生活に染まっていくドラマの3つのプロットを平行して楽しめるようになっている。そして、コメディ・リリーフのウマさが光っており、殺し屋に狙われるシーンでも絶対に笑いを入れなければ気が済まないという感じで、笑えるシーンが随所に差し込まれる。しかもそれをダラダラとやらずに1時間40分という見事な上映時間で描き切ってるのは感嘆せざるを得ない。

そしてヒュー・グラントサラ・ジェシカ・パーカーのコンビと掛け合いも楽しく。役者の演技で映画を引っ張ることが出来るんだなぁと改めて実感。田舎丸出しの英語でしゃべくるサム・エリオットも彼しかいない!というキャラクターで魅せてくれる。

それでいて、話も予測出来ない展開になっており、前半に伏線がバッチシと張られ、それを後半で全て回収していくのにも恐れ入る。細かいことは言えないが、ストーリーも展開も伏線も完璧で、頭からしっぽまでウマさがギュウギュウに詰まっていた。

好き嫌いは別にしても、ここまで良く出来た映画を見せられると「あー!おもしろかった!」としか言いようがない。手堅い演出、役者の演技、ヒネリの効いた脚本、やってることはベタだが、真摯な態度で映画を撮る姿勢に好感が持てた。CGやスーパースターを使わずとも、低予算で良い映画は撮れる。ハリウッド映画のとても良い側面を見た気がした。ビートルズの『恋を抱きしめよう』のカバーがかかるエンドクレジットで心からの拍手。すごく良い気分でスクリーンを出られる映画だった。おすすめ。あういぇ。