愛しい死体を転がして!『ラブリーボーン』

ラブリーボーン』をBDにて鑑賞。

ラブリーボーン Blu-ray【2枚組】

ラブリーボーン Blu-ray【2枚組】

ピージャクの新作だったにもかかわらず、バイトの書き入れ時に公開され『アバター』共々見逃してしまった作品。たしかあんまし絶賛されてなかった印象もあって、さらに二時間を越える上映時間やその他もろもろネックになってスルーしたのだった。例によってビデオ1で借りてきたのだが、それにしてもビデオ1のセールが終わってしまって、準新作が230円もするのは痛い。二本借りたら500円近くなってしまう。なんてことだ!まったく!これだったらツタヤの5本で1000円レンタルにするんだったよ。

それにしても『ラブリーボーン』である。これ………傑作じゃんか!ちょー傑作だよ!映画館で観ればよかった!

予告編を見る限り、14歳の女の子が近所の変態に殺されて、天国に行って、そこからまた犯人に狙われてる現世の家族にメッセージを送って、助ける!みたいな話だと思ってたんだけど(つーかそういう宣伝のされ方をしてた気がする)、全然違う話なのな!だから妙に新鮮で地味ながらもスリリングにことを描いていて、ハラハラドキドキしっぱなしだったよ!

あの世とこの世の中間というところに主人公のスージーは居座ることになるんだけど、このシーンはギリアムのそれのようにファンタジックで、それだけでなく主人公のことを殺した犯人が死んだ後の世界でも妙なイメージになって現われるところなんかは『シャイニング』のバスタブシーンに匹敵するほどの恐ろしさ!さらに様々な死体がゴロゴロ出て来たり、人が崖から落ちて死ぬところを執拗に細かく描いたりとホラー描写も抜かりない。

犯人が分かってるところから映画はスタートするので、その犯人に勝手に近づいていく妹のシーンはサスペンスフルであり、警察に代わって勝手に捜査を始めるお父さんのシーンはまるで倒叙ミステリーのよう。

このように映画のカラーはコロコロと変わり、最終的には被害者家族が再生していくさまをドラマティックに盛り上げるわけでもなく、やけにリアルに地味に描いていく。

映像の切り取り方がとにかく素晴らしく、現世のシーンもあの世のシーンも絵画的な美しさに満ち満ちており、これから殺人が行われようとするトウモロコシ畑でのショットは息をのむほどにビューチフル。それら絵画的なカットを、超クローズアップ、クレーンショット、トラックアップ/バック、高速カットバックなどを駆使して映画的に演出していく。

特におもしろいと思ったのは“神の視点”を本当に“神の視点”的に描いたことだ。

よく、映画なんかを観ていると、「これは一体何の視点なんだろう」という印象を持つ“神の視点”的なショットが出て来ることがある。ディザスタームービーで天変地異が地球を襲うときのショットとか、有名なところではオーソン・ウェルズの『黒い罠』のオープニングのそれとか。

ラブリーボーン』でもよく出て来るのだが、これらは全部殺されたスージーがあの世から観ている視点で描かれているので、“神の視点”であることにまったく違和感なく、むしろ映画を盛り上げるために効果的に使われている。緩やかに家の中をカメラが流れながら、ナレーションが入るところなんかもあの世から見てると思うと、すんなりと受け入れられるのだ。事件が発生するまで44分とやたら長いが、それもこの“神の視点”的演出で飽きさせなかった。

というわけで、そこまで絶賛!絶賛!されてる感じではないが、ぼく個人的には年間ベスト級でかなりおすすめ!端から予告編の印象が拭えないと厳しいかも。もし未見で観ようと思ってる人がいるならかなりニュートラルにしてから観る事をおすすめしまっす!あういぇ。

ラブリー・ボーン (ヴィレッジブックス)

ラブリー・ボーン (ヴィレッジブックス)

思わず原作もAmazonで1-Clickしてしまったーよ。

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