ブロガーはある意味で必見!『少女たちの羅針盤』

少女たちの羅針盤』鑑賞。新潟は10日で終わってしまうんだけど……

とある廃墟にある女優が撮影のためやってきた。渡された台本とは別な本を急遽その場で監督から渡され、さらに役柄が殺人者の役に変わっており、たじろぐ女優だが「大丈夫だよね?だって、君って“あの”羅針盤にいたんでしょ?」と言われる。「なんで、そのことを知ってるの?」――――ドギマギしながらも楽屋に入ると、壁にスプレーでこう書かれていた。「お前が殺したことは知っている、証拠は持っている」――――脚本の内容、そして役柄、さらにその状況に偶然とは思えない何かを感じた女優だったが、それでも仕事を続ける。休憩中にまた楽屋に戻ると、今度は女子高生4人の顔が印刷された紙に「この中の誰を殺した?思い出せ」と書かれていた……「罠?これは罠なの?」――――そしてその紙にはこう続きがあった「もし、その証拠が欲しければ、誰にも知られないように、この廃墟に残れ」――――

――――時は4年前にさかのぼる。自分のやりたいことが出来ないという理由で高校の演劇部とは別に自分で劇団「羅針盤」を旗揚げした瑠美は同級生2人と別な高校で演技の才能を輝かせていた蘭に声をかけ、ストリートで活動を開始。試行錯誤を繰り返し、徐々にお客さんを増やしていく。その人気に嫉妬する者から邪魔されたり、立ち上げたサイトに暴言を書かれたりするも、めげずに1000人のお客さんの前で演技をするチャンスを得る。大盛況で幕を閉じたその舞台から数日後、羅針盤の一人がオーディションで映画の主役に抜擢されるのだが、抜擢されてから数日後、彼女は何者かにレイプされてしまう――――というのが主なあらすじ。

映画は2つのパートに別れており、ミステリーの体裁をとっているが、その部分はあくまでおまけ程度で、基本は劇団に青春のすべてをかけた女の子4人の物語である。

顔は一切映らないものの、冒頭に登場する女が「証拠を残さないように誰かを殺している」ことが誇示され、ド頭にそのパートを持ってくることで、「劇団羅針盤の誰かが殺されたんだな」という緊張感が否が応でも持続するように出来ており、それとは真逆の過去パートは飛び切りさわやかに青春映画として作品を成立させるくらいしっかり作られている。特に女子高生によるカリスマ演劇集団というのに説得力があるように舞台を演じるシーンはかなり本格的で、それ単品だけも見入ってしまうほどであった。

情報量がかなり多い作品ながら、何処を削ったらいいかというのがとにかく明確で、当たり前のようにシーンが丸々、ポンポンと飛んでいく。いわゆる「これから起きること」と「結果」だけが映され、途中何があったかというのは一切映らないのだが、これが実に気持ち良い。こういう日本映画がもっと増えればいいなぁというくらい、編集が完璧であった。

映像も常に4人が一緒に映っているため、かなり構図やらカメラワークには気を使っただろうが、不自然な位置にいるねぇという違和感はまったく感じなかったのは賞賛に値する。

フレッシュすぎる演技が眩しい主役4人の女の子も肩に力が入り気味な部分もありながら、実に魅力的。脇を固める実力者も彼女たちをサポートするように配置され、新旧の演技のアンサンブルが楽しめる。

ぶっちゃけ見ていて、これはミスリードか?と思ってしまうところがポツポツ出てくるが、ちゃんと最後に納得する形で回収されるので安心されたし(にしてはかんなり強引ではあるが……)。人生の一本という作品ではないが、非常にウエルメイドで良く出来ているので、「いよ!待ってました!職人!」という感じで観ることをおすすめしたい、あういぇ。

あ、あとブログやってる人は見たら勇気をもらえるシーンがあるよ!ホントに「その通り!」って膝を打つ感じ!