6000円で作られましたというのが効いている『コリン LOVE OF THE DEAD』

『コリン LOVE OF THE DEAD』をDVDで鑑賞。6000円という嘘なのかマジなのかよーわからん金額で制作されたゾンビ映画

コリンという男がゾンビになり、ある目的のために街をさまよい歩くというのが主なあらすじ、『死霊のえじき』のバブを主人公に、彼の視点で『28日後…』をやったらどうなるか?みたいな作品になっている。6000円という値段からは想像もつかないほど良く出来ており、パソコンで合成したのか、遠くの方では煙があがったり、家に火がついていたり、無人の街にゴミが舞うなど、退廃された終末感は良く出ていた。時折ダニー・ボイルのようなチャカチャカ編集と極端な早回しが登場し、元々『28日後…』もデジカムで撮られていただけに、相性が良く、それっぽい感じが出ていた。

監督も出来ることだけに絞って映画を演出しており、あえて、「他を映さない」ように画を作り上げている。他で起こってる事件になったら、そこの視点で描かれるなど、厳密にいうと、全てがゾンビ視点ではないのだが、視点がずれたとしても、そこはひとつの見せ場になっていたりと、一応は飽きさせない作り。

ただ、出来ることに絞った結果、それが一長一短になってしまったのも事実で、「他を映さない」演出というのは単純に引き絵がないということなので、寄りまくった画がメインになると、どうしても飽きてしまう。さらに手持ちカメラのブレブレ感がプラスされることで、何が起きてるのか良く分からない。

『28日後…』を観れば分かるが、あの作品は同じデジカムを使いながらも要所要所で引き絵を使っており、感染者が襲いかかって来るシーンのみ、寄りのブレブレカメラを使っていた。故にそれがアクセントになっていたのである。そのアクセントで使っていたカメラワークをメインにしてしまうと、飛び道具も飛び道具ではなくなってしまい、何が起きているのかを観客は集中して観ることになってしまうため、単純に疲れるのだ*1

監督はDVDのメイキングで映画の撮り方を学んだというが、ロングショットの重要性についてはあまり学ばなかったらしい。その辺、『エル・マリアッチ』のロドリゲスは脚立に登って撮ることでクレーンショットを実現させたり、コーエン兄弟は板にカメラを乗せてドリー風のトラックアップを撮ったりと撮り方に工夫が見られることがよく分かる。

あとこの作品は明らかに長い。数カ所コリンから視点がずれると書いたが、そのシークエンスが全部物語に必要なく、上映時間を延ばしていることが見え見えであった。

ただ、それもこれも6000円で製作されたというキャッチコピーが効いている。つまり、不満はあれど、6000円でこれだけのもんが出来れば上等、上等という風にこちら側も甘く構えて見てしまうのだ。マクドナルドのハンバーガーがあの値段でこのうまさであればいいやくらいの感じである。あと幸楽苑のラーメンとか、すき屋の牛丼とか。レンタルDVDであれば値段相当だと思うが、これを1800円で観るのはかなりキツいのではないか。

というわけで、あまり人にはおすすめ出来ないが、さっきも言ったように、6000円でこのクオリティはすごいというのは事実。レンタルDVDで自主映画に興味がある人におすすめしたい、あういぇ。

コリン LOVE OF THE DEAD スペシャル・エディション [DVD]

コリン LOVE OF THE DEAD スペシャル・エディション [DVD]

*1:事実、一時間ほど観たら寝ていたというのを繰り返してしまった…