本編はこっちだった『マッドマックス2』

いよいよまんをじして『マッドマックス』のBD-BOXが発売される。

特にみんな大好き『マッドマックス2』はDVDで所有していたが、いずれBDが出るとふんで売っぱらっていた。しかし、いざ発売されたら発売されたで廉価版が出るだろうと買わず、そのままレンタルになってしまい、いつでも借りれるからいいやと、そのまま買わずに今日に至る。もし買い替えていたとしたら、今回のBOXは見送っていたかもしれない。ぼくにとってはナイスタイミングと言える。

さて、今回は『マッドマックス』のBOX発売を記念して、オールタイムベストクラスの『マッドマックス2』について論じてみることにする。

オーストラリア映画といえば『マッドマックス』が思い浮かぶ人が多いのではないだろうか?オーストラリアがかつてアメリカに次ぐ映画大国だったことは知られていない。ほかの国が数十分のサイレント映画をつくるなかでオーストラリアは1時間を越える長編映画をつくるほど映画製作に力を入れていた。だが、テーマのマンネリ化やハリウッド映画の大量流入、さらには第一次世界大戦を挟み、オーストラリア映画はどんどん衰退していった。50年代から60年代にいたっては英語圏の二流国扱いだったと言われている。だが、60年代後半から国が映画振興政策をはじめ、連邦政府で製作資金助成公社を設立。これにならって各州も映画公社を設立した。つまりオーストラリア映画の歴史は古いけども、進化を遂げたのは公的資金によってだったのだ。80年代には一般の投資を集めるために税制優遇措置もとられ、年間で20〜30本ほどの製作本数だが、今では『シャイン』や『ベイブ』、『ピアノ・レッスン』などの名作、話題作も次々に生まれている。

『マッドマックス』が生まれたのは79年。ちょうど一般の投資が集まり出したころであり、時代と監督の映画を作りたいという心意気がバッチシ噛み合って出来た作品だと言える。

『マッドマックス』はオーストラリアの底力を見せつけた作品になった。ハリウッドでは絶対に観られない激しいスタント、香港映画同様、飛び出した人を受け止めるのはダンボールで、さらに車を飛ばすためのジャンプ台はレンガを積み上げたところに鉄板を敷いた即席の物。このアナーキーなつくりのせいで、死人がでたという都市伝説まで生まれた。もちろん映画は各国で大ヒット。だが、映画産業自体がしっかりと動き出してから10年足らずの時、ハリウッドの映画はたくさん流れてきたとはいえ、物語の作り方や転がし方などがまだ甘い。復讐映画だが、復讐のカタルシスなどは不勉強だと言わざるを得なかった。

ジョージ・ミラーと脚本を書いたテリー・ヘイズはストーリー運びの技術の未熟さを分かっていた。「なんだ、おれたちはただの素人じゃないか、と気づいた時から、ストーリー運びについてもっとたくさんの事を学ぶ必要があると思ったんだ。」とミラーは後に語った。彼らはその弱点を克服するため古今東西、ありとあらゆる映画を観まくった。特に彼らが好んで観たのは日本のサムライムービー、そしてジョン・フォードの西部劇だという。

それらを下敷きに『マッドマックス2』は生まれた。戦争で文明はほとんど滅び、石油が金よりも貴重な時代に、マックスは一匹狼として生きている。彼は仲間を作ろうとしないが、あるとき、石油を精製しているという小さな集団を見つける。だが、彼らは他の暴走集団にその場所を狙われていたのだ……

ストーリーだけ聞くと『用心棒』に『七人の侍』を足して二で割った様ば古典的な話だが、映画に取り込むには最高の題材だ。ここに彼らは独自の世界観をミックスした。さらに前作以上とまではいかないが、撮り方がスキルアップしたカーチェイスを盛り込んだ。さらに強力なボスキャラやマックスに負けず劣らずの個性的なキャラ(同性愛のモヒカン、犬、野性味溢れる子供、歯が汚いヘリの相棒)をぶちこんだ。このキャラ設定や世界観は『北斗の拳』に受け継がれることになる。監督自身「1は予告編だった」と言い切ったくらい、すべてをパワーアップさせた。アクション、バイオレンス、SF、バディムービー、家族以上の集団、子供、犬、爆破、おっぱい、凝った美術……そう『マッドマックス2』はつまらないはずがなかった。

マッドマックス2』はたしかにおもしろいがそれでも全体的に荒々しい。だが、ハッキリ言って前作よりもすべてが上質だ。冒頭のスタンダードサイズによる回想から、ワイドに切り替わるシーンは今観ても鳥肌が立つ。セリフに頼らず映像だけで突っ走ってる点も評価すべきだし、金こそかかってないものの、小さい村を暴走族が襲いそれに立ち向かうという『七人の侍』を下敷きにしたおもしろさがある。監督が言ってるとおり『マッドマックス2』こそ、映画の本編と言っても過言ではないのだ。

参考資料:http://homepage2.nifty.com/wombat/menu02.htmlhttp://home2.highway.ne.jp/hisanaga/movie/MAX.html、『マッドマックス2』DVDプロダクションノート、メイキング、