洲崎パラダイス 赤信号
- 出版社/メーカー: 日活
- 発売日: 2006/03/10
- メディア: DVD
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一組のカップルを中心に、居酒屋の女将、そば屋の出前、電気屋さん、子供と脇役にまで気を配った演出のお陰で街全体を写さなくても、街の存在を感じれるという演出がメインで、実際、洲崎パラダイスと書かれたネオンと橋くらいしか映らず、エスタブリッシングショットの数が少ない。それなのにも関わらず、観る側になんとなく全体を想像させてくれるのは岩井俊二監督の『スワロウテイル』を彷彿とさせる。
風俗描写で感心したのは、三橋達也は冒頭でゴールデンバットを買うのに、金持ちの電気屋さんはラストの方で缶ピースを吸っていたところ。ほんのワンカットしか出て来ないが、円還構造的に冒頭とラストにそれを持ってきたこともすごい。そういう細かい演出の積み重ねがこの作品には詰まっている。
パッと見ダラダラした映画かもしれないが、こういう映画が今の時代にはない。それはこういう人情喜劇を上手く撮れる力量の監督さんがいないからだろう。『洲崎パラダイス』に一番近い近年の作品は『うなぎ』だと思うが、今村昌平はこの作品に助監督で参加。そういうところでリンクしていくんだろうなぁと思った。