オーシャンズ12

………ある意味裏切られた…

オーシャンズ12 [DVD]

オーシャンズ12 [DVD]

オーシャンズ11』は全体的に評価も高くなかったが、私はかなり好きな作品で、これから映画監督を目指す人は絶対に見逃せない作品だと思った。おしゃれなカット割り、的確な音楽の使い方、スリリングな展開ではないが、なによりもスタッフやキャストが楽しんで撮ってるのが伝わってきて、見ているこっちもハッピーな気持ちになれた。つまりこの作品の続編が作られるという事はそんなノリで再び行くのではないか?とある程度のものを予測してしまう、だが、その予測はモノの見事に裏切られる事となる…

ソダーバーグらしい演出は随所に登場する。文字の出し方からスタイリッシュな映像、カット割り、
職人らしいアングルと映像作家らしい遊び心は満載だ、だが遊びすぎてない所も素晴らしい。ほどほどにスタイリッシュでほどほどに職人的であるのが、いかにもソダーバーグだ。もっと遊んで欲しいという部分もあるが、彼はこの作品に限っていうと役者メインに演出していて、映像で遊んでしまうと、その映像に役者の演技が負けてしまうという事まで考えてるんじゃないだろうか?

それくらいこの作品の映像はバランスがいい。ソダーバーグも映像のタッチには苦労しただろう、その苦労が、脚本にも出ている。豪華スターが勢揃いしているが、前作よりも全員にスポットが当たり、どの役者のファンでも楽しめる様な気配りがなされている。前作は完全にジョージクルーニーがいいとこどりしてたから、他の役者達からクレーム出たのかな?音声解説ではみんなジョージクルーニーの事褒めてたけども。

今作では全員の見せ場が増えたうえに新しいメンバーまで増えて、さらにゲストまで登場しているので、映画のピークがいつだったのかわからないほど平坦だった、はっきり言ってつまらなかった(笑)キャスト全員が同じ様な扱いを受けているので、豪華メンバーである必要性を感じない。前作はあれだけのメンバーを揃えて、ジョージ・クルーニーにスポットを当てたのが正解だった。そのお陰で映画は散漫な印象にならず、すっきりまとまっている、今作ではこんなセリフが出てくる。

オーシャンズ11だと?誰が決めた?子分じゃないぞ」
「あれは共同作業だった、侮辱だよ」
「一緒にやった唯一の仕事だ、ダニーオーシャンの名をつけるなんて」

これが『オーシャンズ12』を象徴するセリフだ。全員が一緒にやるという点では映画製作も同じ事、だが、そこには観客やストーリーを引っ張って行く、リーダーが必要である。たしかに前作、ジョージ・クルーニー以外はあんまり見せ場が無かった。同じ仕事をしているにしてはである。でも、それでいいのではないだろうか?やっぱりこういう娯楽映画の場合、1人だけスターが目立ってもいいのではないだろうか?そのお陰でストーリーに1本筋が通って映画としてはおもしろかったのではないだろうか?今作は「オーシャンとその仲間達」ではなく、ある意味、泥棒集団ではある。その分、誰か1人が目立つという事がないので、ストーリーにスピード感がない。それぞれがダラダラと仕事をしたり、捕まったり、そんな事の繰り返しなのである。
今作はハッキリいって『オーシャンズ11』のパロディである。パロディと言うか、お遊びで作った感がある。前作を見た人が、楽しむ様に作ってあるので、話もむちゃくちゃ(笑)『男たちの挽歌2』ばりのツッコミを入れたくなるくらいのストーリー展開、だからこの時点でもっと無茶をしてほしかった、ダラダラした映画にはしてほしくはなかったのだ。

オーシャンズ11』は絶対不可能なところから金を盗むというカタルシスがあった。1億5000万ドルを史上最強の犯罪チームがどのように盗み出すのだろう?という興味もあった。今作ではそれがない、つまり泥棒の話なのに、泥棒するシーンがない(笑)あったとしても、前作を越えてない、そしてしょぼい(笑)もっと言うと、一番おいしいのはヴァンサンカッセルで、それ以外はどうでもいい(笑)

この作品で一番おもしろかったところはジュリア・ロバーツである。彼女に与えられた役割が従来のハリウッドではありえない役回りなのだ、これはソダーバーグのアイデアだったのだろうか?
ジュリア・ロバーツのお陰でオーシャンたち助かるのかな?って思ったら、結局このシーンもストーリーにはまったく関係なかった(笑)

まぁ『オーシャンズ11』に続編はいらなかったのだと言う事。ソダーバーグもこの出来には頭を抱えただろうなぁ、あういぇ。