イケメンだからって人気者になれるわけではないという話

加瀬亮
オダギリジョー
真木よう子
沢尻エリカ
小出恵介
高岡蒼甫
桐谷健太
尾上寛之

↑これは若手から中堅にかけての売れっ子俳優たちだ。沢尻エリカは別にして、最近、この人達の名前を見ない日はないってくらい、彼らはドラマや映画に出まくっている。加瀬亮オダギリジョーは、ポスト浅野忠信という感じで個性的な監督と組んでヒットを飛ばし、真木よう子は「週刊真木よう子」としてクローズアップされるほど魅力的で、小出、高岡、桐谷、尾上の四人はあの国民的ドラマ『ROOKIES』でも共演している(もちろん観てないですよーだ)。

今や日本映画界、ドラマ界にかかせない役者となっている彼らだが、その昔、彼らがある一本の映画に出ていた事をご存知だろうか?

知ってる人は知ってると思うが、その映画とは井筒監督の『パッチギ!』である。ぼくもこの映画は観ていて、大好きなんだけど、加瀬亮が出てたというのをどっかで見て、確認するために再見したところ、他にもとんでもない人がボコボコ出ていたんだなぁと驚いた。当時は若手中の若手で、オーディションやらなんやらで出演に至ったんだと思うが、それにしても豪華なメンバーである。加瀬亮は冒頭のGSのボーカル、真木よう子は韓国側のパンチの効いたスケバン、小出恵介は主人公と行動を共にするボンクラで、高岡蒼甫は準主役級の扱いだったりする。

今やドラマや映画の主役までこなす彼らが出演していた『パッチギ!』だが、実は彼らは主役ではない。全員脇役である。これだけのメンバーが総出演したのにもかかわらず、なんと主役は別に居る。しかも西田敏行役所広司という大物ではなく、これまた若手の俳優である。

そうそうたる面々を押しのけて『パッチギ!』の主役をつとめたのは塩谷瞬という俳優であった。日本アカデミー賞新人俳優賞も受賞した塩谷瞬である。塩谷瞬、、、、誰だよこいつ!!


ぼくは『パッチギ!』を初めて観た時、確かに加瀬亮真木よう子小出恵介高岡蒼甫などの存在には気づかなかった。元来役者に興味がないというのもあるのだけれど、殺人的にかわいかった沢尻エリカだけは印象に残った。これが役者に関して初見の感想だ。ただ、それ以上にぼくは主役の塩谷瞬に存在感の無さを感じてしまった。身長はあるし、イケメンだし、さわやかを絵に書いたような男である、なんだけど、ホントにインパクトが無く、パッとしない。

イケメンと言っても日本のトップクラスに入るような感じじゃないし、演技も個性的かと言われれば、そんな事もなく、冒頭からふざけた髪型で終始出演した事でかっこよさは半減している。主人公と行動を共にする脇役ながらオーバーアクトで三枚目に徹した小出恵介の方がよっぽどインパクトがあり、無個性のボンクラという役で主演だったのが致命的だった。

それだけじゃない『パッチギ!』はそもそも主人公の青春模様が映画の軸ではなく、恋愛をするシーンも一握り程度で『パッチギ!』はそれこそ井筒監督の『ガキ帝国』や『岸和田少年愚連隊』に連なるケンカムービーであった。『パッチギ!』で一番印象的なシーンは序盤のバス横転のシーンとクライマックスのガチンコケンカシーンであるが、なんとこのインパクトのある場面に主役である塩谷瞬はまったく活躍をしていないのである。

塩谷瞬、ぶっちゃけ『パッチギ!』の後に代表作はあっただろうか?ウィキペディアでも代表作としてあがっているのは『パッチギ!』と『ハリケンジャー』だけ。フィルモグラフィーを見ても、加瀬亮みたいに「え?こんな作品にも出ていたの?」という驚きなどなく、「こんなのいつの間に公開されてたんだよ」レベルのマイナーな作品ばかりである。『パッチギ!』とは“乗り越える”とか“突き破る”という意味なのだが、文字通り彼は『パッチギ!』を乗り越える事が未だに出来てないようだ。『パッチギ!』出演後、たくさんのオファーが舞い込んだ、加瀬亮沢尻エリカ真木よう子、小出、高岡、桐谷に比べると、明らかに役者としての格は下のようにも思えて来る。

とどのつまり何が言いたかったのかというと、いくらイケメンで爽やかな男と言っても、そこに個性が無ければ、役者として成功などしないんだなぁという事だ。井筒監督もそれを見抜いていたようで、主演二人とめちゃイケやべっち寿司にプロモーションで出た際こんなやりとりがあった。

矢部「塩谷くんと沢尻さんですよ」
塩谷、沢尻「どうも」
岡村「まったくの初めてやんな?」
沢尻「はい。」
塩谷「いや、ぼくは二回目です、実はバラエティーで一回共演させてもらってるんですよ」
矢部「あ!そうですかぁ(関西弁のイントネーションで)」
井筒「(塩谷を指差しながら)こいつな!印象薄いねん!印象が薄いヤツやねん!」
岡村「ようそんな事いうな!ようそれで主役につこたな!」


主役なのに印象が薄い男、塩谷瞬。『パッチギ!』に主演して瞬く間に消えて行った彼の名前が「瞬」である事はここだけの秘密である。あういぇ。