レッド・ツェッペリン『祭典の日/奇跡のライブ』のプレミア上映に行ってきた

レッド・ツェッペリン『祭典の日/奇跡のライブ』鑑賞。

2007年12月。多くの人を感動させるパフォーマンスをしたとして話題になっていたレッド・ツェッペリンの再結成ライブ。某youtubeで検索しても、観客が撮影したであろう動画しかあがっておらず(探し方が悪かったのかもしれないが)、ほんの一部分だけBS-TBSのドキュメンタリー「SONG TO SOUL」で放送されたりしたが、詳細は会場に足を運んだものしか分からなかった。

その再結成ライブが映像作品として発売されると知ったのは今年の9月。なんとライブをしてから5年もの歳月をかけてパッケージングしたというのだから、その時間のかけかたには驚かされるばかりだ(ちなみにジョン・ポール・ジョーンズは「ツェッペリンにとっては5年間の時間は5分間だ。だから僕はこんなに早くリリースできてビックリしているよ」と発言している)。

今回観にいったのは、そのライブDVD発売に先駆けた2日間限定のプレミア上映である。

ツェッペリンはロックファンとして、ひとなみに聞いてる程度には好きというスタンスなので、今現在どういう活動をしているとか、こと細かく追うような感じではなかった。なので今回の再結成ライブも何を演奏しただとか、そういうことをまったく知らなかったので、改めてセットリストを調べるなどはいっさいせずにまっさらな状態で観にいった。

結果………大興奮!あっという間の二時間で夢のような映画体験と音楽体験を一度で味わうというカツカレー的な贅沢をしてしまった(この例えがかなり貧乏性ではあるが)。

確かにロバート・プラントは全盛期の声の高さをキープできておらず、それによって、全体的なキーが下がってるような曲もあったが、それはしょせん160キロ投げられた投手が未だに150キロ投げられるようなもんで、見てるこちらからすれば、圧倒的なパワーであることに変わりはない。一緒に行った後輩も「いやぁ、曲のキーが変わったって、ツェッペリンツェッペリンなんですね!」と言っていたが、まったく同じ感想を持った。ジョン・ボーナムの遺伝子を次いだ息子ジェイソン・ボーナムの圧倒的なドラミング、そしてそこに絡み合うジョン・ポール・ジョーンズのベース、攻撃力の高いペイジのリフ、そしてプラントの魅力的な声とシャウト………ことばにするとシンプルだが、この無敵の四元素が揃うことであれだけの感動を呼ぶことができるのである。

映像面でも、最初から作品にする気だったのか、クレーンや8ミリフィルムなどありとあらゆる素材を使って、より感動的に見せることを意識している。特に2003年に発売された未発表ライブDVDがわりと映像の寄せ集め感がある部分があったりしたので、そこも一気に解消された感じだ。

そして、何よりも音響がすばらしい。いかにもホールでやってて、音が散漫になってるなあというようなマスタリングではなく、絶妙なライブ感を残した、いわゆる「作品」としての音作りになっている。もちろん、ライブレコーディングではなく、パフォーマンスなので、絶妙な観客の声援具合や反響具合などもさすがの監修っぷりである。

各楽曲に関しての感想はこれから待ち望んでる人も多いと思うので書かないが、ぼくが今回の『祭典の日』を観て一番感動したのは、ぼくが求めていたツェッペリンの理想型がそこにあったことだ。

実はぼくはツェッペリンのトラッド志向や長々とセッションプレイになるようなところがあまり好きではなく、いわゆる『伝説のライブ』と呼ばれるライブ盤も、20数分続くようなトラックを何度も聞き返すようなことはなかった(もちろんそれが悪いと言ってるわけではなくて)。

今回のライブもそこを危惧していたのだが、そこはバランスよく各アルバムから攻撃的な楽曲ばかりを揃えて完璧に演奏し、さらにそういった延々繰り広げられるアドリブプレイ的な部分もオールカット。すっきりスマートに収まっている。

特にキーボードでグルーヴ感を生み出すジョン・ポール・ジョーンズのプレイには頭が下がるばかりだ。ツェッペリンの音楽が古くならないのはそういったシンプルさのなかに革新的な要素が隠し味的にあったからなんだと改めて実感した。懐かしい曲を演奏しているという風に感じることはなく、むしろ、現在進行形でこういうバンドが出てきたというふうに言われてもなんら違和感はない。

というわけで、熱狂的なツェッペリンファンはどういう風に捉えたのか気になるが、ぼくのスタンスとしては大感動の映像体験だった。最後のアンコールを迎えたとき、これで最後なのか……と素直に思った。そんなのは久しぶりだった。スクリーンで、あの音響で体感できたのも大きかっただろう。DVDとして発売するにあたり、最高のプロモーションになったプレミア上映だったと言えるのではないだろうか(実際、ぼくも一緒に行った後輩もすでにブルーレイ版を買う気まんまんである。それくらい何度も観れるようなスマートさになっていたのだ)。