「めちゃイケ」ナンパ企画の元ネタ『テレクラキャノンボール2013』
『テレクラキャノンボール2013』を観た。
ぶっちゃけ、タイトルもその内容もまったく知らなかったんだけど、今年のはじめに『劇場版テレクラキャノンボール2013』という文字がTwitter上に散見され、そのときは「へぇ、そんな映画あるんだー」くらいにしか思わなかったが、あの「めちゃイケ」にそのフォーマットがパロディ化されるなど、実は人気のシリーズであり、劇場版として公開されるくらいなんだからよっぽどなんだろうなぁと思って興味が湧いた。そうしたら、このシリーズが大好きな新潟の映画小僧であるまこーくん(@Makotoucc)が「DVD持ってるから貸しますよ」といってくれたので、最高傑作と謳われてる『テレクラキャノンボール2009』と共に借りて観ることができた。どうもありがとう。
分からない人のために説明しておくと「テレクラキャノンボール」とはあの“キャノンボール”をモチーフに製作された企画モノのAVである。
出場者は全員AV監督。まず最初に車とバイクで普通に公道でレースを行い、目的地まで誰がいちばん早く着けるかを競う。もちろんAVなのでそれだけでは終わらない。そのレースをファーストステージとして、セカンドステージは素人をナンパしてAVに出てもらい、その順番とプレイでもって得点を争う。顔出し出演、10代、ストリート(街中でナンパに成功)、3Pはさらに得点が加算されるが、その逆で40代、シャカシャカと呼ばれる手コキによるフィニッシュ、発射なしなど減点対象になる行動も多々ある*1。優勝したら人気のAV女優とあんなことやこんなことが出来るという特典があり、その様子もきっちり映像に収められる。
さすがに本編が10時間弱もあるということで一部飛ばして観たが、それでも8時間くらいかかった。みんな観るときはいわゆる“カラミ”を飛ばすらしいが、ぼくは逆にその“カラミ”を楽しく観ることができたし、どっちかというと飛ばしたのは優勝者が決定してからのフィナーレ部分で、そこで繰り広げられる「おもしろそうなシーン」以外は一応全部観た。飽きたらやめようと思っていたが、続きが気になって観てしまったし、笑ったし、最終的には号泣してしまう始末。AVなのでさすがに全員におすすめとはいえないが、“劇場版”があれだけ話題になったので、そっちを観てもいいかもしれない。
さて、まだ何がおもしろいのかピンと来てない人もいるかもしれないので、思い切って書いてしまうが、例えるならこれは「18禁の水曜どうでしょう」である。いわゆる内輪ノリみたいなものもあるが、ダイジェストでそれまでの経緯も説明されるし、基本的にはいい大人が旅をしながらくだらない話をし、その道中でうまいものを巡ってやんや言ったり、酒を飲んでグチったり、得点を決める審査でわーわー笑いながら言い合ったりする。予告編からテロップの出し方まで似ている部分があり、逆に「水曜どうでしょう」はおもしろAVからその作り方を学んだのではないか?という推測まで成り立つが真意は不明*2。
この「テレクラキャノンボール」第一回目の開催は97年。「どうでしょう」がそうであるように、メンバーに老いが見え始め、それが哀愁となって「2013」は深みが増した。メンバーは初参加者が一番若くて30歳。そのほとんどが、アラフォー/アラフィフであり、長旅の疲れも相まって、素人相手(しかもそれにノリ気じゃない子までいる)ではなかなか「アレ」が元気になってくれない。マイナスポイントである“シャカシャカ”じゃないとイケなかったり、あげくの果てに発射せずに終わってしまう人もいる。そしてそれが底抜けの哀愁となって観る人をなんともいえない切ない気持ちにさせてくれるのだ。下世話な内容だなと思うかもしれないが、ちゃんとそこには愛があり、女性を慈しむ心やおもてなしの精神、そして人間のありのままの姿がしっかり映しだされる。
特に監督であるカンパニー松尾がとあるところで「オレはこういう(素人とかおばはん)のを主戦場にしてきたけど、料亭でメシ(いわゆるキレイな女優)を食い過ぎた。もう彼ら(若いAV監督)のようにはできない」と、ハッキリと口に出したのがグッときて、もうそれだけで泣きそうになってしまった。やってることは大人の青春だが、それに肉体がついてこないということなのである。というか、ぼく自身がそういうことが最近ありまして……もう若くねぇな。
ハッキリいって、吐き気をもよおすシーンも多々あるが、それすらも笑えるように仕上げてあるのはすごい。ラストの女優の演技も含め、全編において「プロの仕事」を感じさせる一作。だまされたと思って観る人生を選んでほしいなと思うのであった。
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