現時点で唯一のプログラムピクチャー『名探偵コナン 銀翼の奇術師』

劇場版の「名探偵コナン」シリーズがけっこう好きである。

ちっとも観る気など起きなかったのだが、当時お付き合いしていた彼女がコナン大好きで、その影響から仕方なしに見始めたのだが、これがなかなかバカに出来ず良く出来ていてエラく感動したことを覚えている。

特にハリウッド映画のクリシェをそのまんまトレースしている作品が多いので、「ああ、これはあの映画のオマージュじゃんか!」という感じで映画ファンには結構おすすめ出来たりする。

基本的に前半はお子様向けのわかりやすい陳腐なミステリーでTV版となんら変わりないのだが、後半からとてつもないスケールでハリウッドにも負けないエンターテインメントになるのが劇場版のパターンで、アニメだからというのもあるが、劇場で観るとそのスケール感に圧倒されてしまうこと必至だ。エラくかっこいいタイトルバックに乗せてシリーズの概要を説明するというのがパターンなのだが、そのお決まりごとも含めて、ぼくは劇場版コナンはプログラムピクチャーの最後の希望だと思っている。

というわけで、今回はおすすめのコナン映画について書こうと思う。

ぼくがおすすめするのは『名探偵コナン 銀翼の奇術師*1』だ。

飛行中の飛行機という限定された空間の中で、殺人事件がおこり、それをコナンがといていく――――とまぁよくあるヤツなのだが、40分を過ぎたころから、これが名探偵コナンなのかと思うほど作風が変わる。まぁ一言で説明すれば単純に『乱気流 タービュランス』になってしまうのだ。操縦士がトラブルに巻き込まれて、飛行機が操縦不能になり、なんとそれを小学生であるコナンが動かすことになる。

この後半はいくらなんでも無茶苦茶なのだが航空会社の協力もあってかなりディテールが細かい。専門用語も飛び出すし、クールなセリフ回しで一気に映画の世界に引き込む事に成功している。脚本の段階でかなり練り込まれてるが、それでもどうでもいいところはどうでもいい描写で済ませるあたりもコナンの魅力。

舞台が日本なのだが、ありとあらゆるところを旋回しながら、飛行機を着陸させようとするという見せ場はすさまじい。CGもここぞ!という所で使っていて迫力満点。この後半のために前半をフリに使ったのだと思うと、かなり計算された映画ともいえる――――というか、すべての劇場版コナンがそうなのだけれど。

さて、この作品。名探偵コナンというタイトルなのにまったくコナンが活躍しない。むしろサブキャラである怪盗キッドの方が主演なんじゃないかと思うほど喰われてる。

なのでこの作品はかなりコナンとして観るとかなり違和感のある作品なのだ。主演よりもサブキャラが目立ち、リアルな部分と映画としておかしい部分が見事なバランスで共存している。名探偵コナンが大人から子供まで楽しめるように出来てるのは、このリアリティと荒唐無稽のバランスが絶妙だからではないだろうか。

まぁ『乱気流 タービュランス』と『コンエアー』のパクりとも言えるが、ハッキリ言ってぼくはこの二本よりもおもしろかった。アニメだからこその映像だが、元々の映画に敬意をはらいクリエイティブなパクりをしているので良いと思う。クールな音楽と詳細なディテール、かっこいいセリフ回しと、どこをとっても標準以上。ミステリー、バディムービー、パニック、アクションと1本でたくさんの要素がギュッと詰まった観て損なしの娯楽作だ。あういぇ。

*1:ぎんよくのマジシャンと読ませる