劇場版?アンレイテッド版?『ハロウィンII』
『ハロウィンII』をDVDで鑑賞。
DVDにはその名の通り劇場で公開されたときの「劇場公開版」とロブ・ゾンビが自分の思うままに再編集した「アンレイテッド版」なるものが収録されている。いわゆるひとつのディレクターズカット版というヤツでしょうか。さして違いはあるまいと思ったのだが、なんとランタイムが13分も違ううえにエンディングも異なるということで両方観てさらに音声解説まで見てしまった。そもそも作品がものすごくおもしろかったのでまったく苦痛な作業ではなく、むしろ楽しかったくらいである。
物語は前作の直後から始まる。前作で死んだはずのマイケル・マイヤーズが実は生きていて、またまた惨劇の夜を繰り広げるというシンプルなもの。
ロブ・ゾンビの『ハロウィン』は言わずもがな大傑作だったわけだけれど、オリジナル版と決定的に違うのはマイケル・マイヤーズの生い立ちを深く掘り下げた点で、説明的なセリフを使わずに映像だけでそれを描き切るなど秀逸なうえに残虐シーンを巧みに織り交ぜたことで見せ場としても盛り上がり、それ以外でも細部まで凝りに凝った映像美を追及し、エロも血も大量に増やしたことでオリジナル版をこよなく愛する人も大旨納得のいくリメイクに仕上がっていた。
『ハロウィンII』でも方法論は一緒。映像美や残虐シーンはそのままに、今回は妹であるローリーを中心に、あの事件で生き残った人々のその後に焦点を当てる。映像の引き出しが多く、マルコム・マクダウェルがホテルのロビーを歩くシーンはキューブリックのようにステディカムを使って、長回しで撮るという間接的なオマージュも見られる。
人によって受け取り方は様々だろうが、個人的にマイケルの心の声を映像化した部分がタルかった。ローリーに焦点を当て、さらに博士が金の亡者になってしまったことでマイケルを取り巻く人々がいないというところでの苦肉の作だったのだろうが、ロブ・ゾンビ自身も「ぼくの『ハロウィン』ではマイケルはモンスターではなく、一人の人間なんだ」と言ってるように、そこを過剰に描いてしまった結果、若干スピード感に欠け、シュールさが増えてしまった。もうちょっとシャープにした方がいいんじゃないかと思わなくもない。
このように今作でロブ・ゾンビは『ハロウィン』を自分のものにしてしまったきらいがある。それほどまでに続編では彼の作家性が色濃く出ることとなった。あくまでエクスプロイテーションとしての商業的な続きものではなく、ロブ・ゾンビ監督の『ハロウィン』の続編という作家性が全面に押し出されている。
特に顕著なのが「アンレイテッド版」と銘打たれたバージョンだが、13分長くなったそのバージョンではローリーがいかにあの事件を引きずっているのか?というのを丹念に描いたことで、それがどのような影響を周囲の人々にも及ぼしてるのかというのを繊細な演出を積み重ねて表現。それ以外のキャラクターもかなり追加されたシーンがあり、圧倒的な深みが加わった。こっちを見てしまうと、「劇場公開版」の人間ドラマの側面が添え物にしか感じなくなってしまうほどだ(だからと言って悪いわけではなく、これはこれでシャープなホラー映画としての魅力がある)。
さらに両者の決定的な違いはラスト。意味合いとか以前に展開も絵もなんなら終わり方までまったく違うので、その違いは是非自身の目で確かめてほしいところ。個人的には「劇場公開版」のラストの方が怖くて好きかもしれない。ただ映画単品として考えれば「アンレイテッド版」の方が人間ドラマとして片時も目が離せず、さらにそこにブギーマンの惨殺が随所に差し込まれるので、そちらの方が好き。なんか終わり方も含めて『デビルズ・リジェクト』みたいな感じだったよ。
まぁ、それほどまでに違う印象になってしまうということです、はい。どちらも観ることをおすすめしたい。そして時間があるなら音声解説も観るとより楽しめるかと。ものすごくタイトなスケジュールで映像美を極めようとしたロブ・ゾンビの苦労が語られます。あういぇ。
ハロウィンII アンレイテッド・コレクターズ・エディション(2枚組) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2010/10/02
- メディア: Blu-ray
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