世界ゾンビ対戦!!『ワールド・ウォーZ』
『ワールド・ウォーZ』鑑賞。2D字幕。
この映画の原作に興味をもったのはいつだったか忘れたが、とにかくアメリカ人が書いたゾンビ小説ということで、図書館から借りて数ページ読んだのだけれど、そこで「ん?思ってたのと違うな」とそのまま読むのをやめて返却してしまった(何の前情報もなく読んでビックリしただけなので絶対おもしろいと思います。なのでいつかがんばって読みます)。
こういう形式の本を「オーラル・ヒストリー」というらしいのだが、それこそロメロの三部作を期待して読んだら浅田次郎の『壬生義士伝』みたいな内容で、ゾンビだらけになった街でどう戦って生き延びたのか?というのを様々な人の証言で構成するという特殊な小説だったのである。
それがブラピ主演で映像化されるとアナウンスされたとき「ゾンビのフェイクドキュメンタリーが見られるじゃないか!これは楽しそうだぞ!」とココロおどったのだが、予告編の映像が発表された段階で、それは良い意味でも悪い意味でも裏切られることになった。
ブラピはかつて国連で働く紛争地帯のプロフェッショナルだったが、今は足を洗い、子供たちにパンケーキを焼いて送り迎えにはげむなど、良きパパとしての生活を送っていた。ところが世界がゾンビだらけになってしまったので、人手不足もあったのか、ふたたびブラピに助けてほしいと直々にかつてのお偉いさんからお声がかかる。一度は断るものの、世界を守らないと家族を救えないぞと説得され(さらにやらないと家族をゾンビだらけの街に放り出すぞと脅され)、彼は「希望の星」と呼ばれている細菌学者を連れて、その原因を探るべく世界中を飛び回るのだが………というのが主なあらすじ。
作品としてはゾンビ映画というよりも、パンデミックパニックアクションスリラーという感じ。『28日後…』がゾンビ映画の系譜としていちばん近い気もするが、主人公の行く先々で次から次へとトンでもないことが起こりまくり、驚異的な運の良さでもって生き延びつづけるという意味ではエメリッヒの『2012』に似てるなとも思った。
キービジュアルとなってる「蜘蛛の糸」を再現したような映像には心底感動したし、いわゆる「神の視点*1」が連発されるのだが、つねに誰かがヘリや飛行機に乗っているので「そこから見ている」という言い訳がついたのも「この手があったじゃないか!」と思ったし、何よりも阿鼻叫喚の地獄巡りがそのままブラピが携わってる難民問題と直結してるのもいい*2。
「ゾンビが山になってその上にゾンビが……!!!」
映画は始まったらほぼノンストップでラストまで突っ走り、あっという間にエンディングを迎える。ブラピがとにかくかしこく、感染者がでてきた瞬間にどういう状況でどのくらいの時間で感染するのか?を確認。腕をかまれないように雑誌をぐるぐる巻きにしたり、銃の先に包丁をくくり付けて独自の武器をつくったり、さらに感染者には弱点があるというのをいち早く見抜くなど、今までパニックになって逃げまわるということをメインに描いてきたゾンビ映画において、この描写は新鮮でたのしかった。個々の見せ場やハラハラドキドキ感はいうことなしで、見た人のほとんどが満足して帰れるであろう上質のポップコーンムービーであった(血や臓物はでないのでポップコーンムービーと表記させていただいた)。
しかし、物語がおおきく動きだすポイントでの破綻があまりにもヒドく。それがいちいちノイズとなって物語に散漫な印象をあたえたのも事実だ。
【以下、盛大にネタバレ】
・まず映画の冒頭だが、いきなり世界がゾンビだらけになったとはいえ、ニュースで何も言わないのはおかしい。いきなり大群で襲ってくるんだもん。だったら最初っからテレビを見ない風習があるとか、ひとことでもいいからそのへんに触れてほしかった。まぁ災害的な、予期しなかったこととして描いてるのかもしれないが。
・スーパーマーケットで薬を処方してくれた男が謎すぎる。
・「希望の星」っていわれてるお前!コケんな!!んで、それで銃が暴発して死亡ってそれこそずっコケたわ!
・ナマニクさんもブログでおっしゃってたがデビット・モースが謎すぎる。どんなカメオ出演だ。
・こっちから連絡するって言ってんだからお前のほうから電話かけんな!ブラピもオフにしておけ!それから電話のバッテリーがもったいないんだから緊急連絡用にとっとけ!
・なんで国連のお偉いさんはブラピご一行の安否を逐一確認しないのだろう。
・スピーカーまで使って大声で歌をうたい、それのせいでゾンビが壁をこえてくるというのがマヌケすぎ(そのおかげで「ゾンビが山になって、その上にゾンビが…」というのが見れたわけだが)。この方法ならどっかのスタジアムに巨大なスピーカーを置き、大音量で音楽を流してゾンビをおびき寄せて一網打尽にするというのはアリだが、それで戦えばよかったのではないか。
・なんで腕を切り落とした女兵士を連れていくのか。ごめんなさい足手まといねって言ってたけどその通りだ!
・ここで待っててくれと念をおしたにもかかわらずひとりで輸送機みたいのに乗って逃げたのが謎。さすがに使命があるんだから逃げんなよ。
・家族がカナダに送られたのはなぜ?ジャマだから?食料不足だから??
・町山智浩氏もポッドキャストで言ってたがペプシどかどかどかー!ぐびぐびぐびー!のシーンが謎すぎる*3。
【ネタバレ終わり】
これはマジメに撮ってるけどギャグのつもりなのか?とよくわからなくなる個所もあったが、それでも200億円かけたゾンビ映画はやはり見応えありで、個人的にはBDを買って置いときたいくらいには気に入った。宣伝では隠されているものの、夏休みに全国のシネコンで怪獣映画とゾンビ映画が公開されてるというのは実に映画ファンにとって嬉しいことである。是非劇場に足を運び、見終わった人は「ブラピが出てたゾンビ映画楽しかったよ」と口コミで伝えてまわろう。
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