たとえ不健全だと言われても、ぼくはスクリーンが血で染め上がるのを観たい。


『ゾンビ・ストリッパーズ』をDVDで観た。ハッキリ言って映画の出来は良くないが、血とおっぱいと人体破壊が画面を彩るナイスな低予算映画であった。「大スクリーンで水嶋ヒロがみたーい」という感覚と同じように、どんなに映画が緩くてもぼくはこういうのをビール飲みながらスクリーンで観たい。


『ゾンビ・ストリッパーズ』は軍が開発したウイルスによって、ゾンビが大量発生し、それを退治しに来た軍のスペシャリストの一人が噛まれて感染し、ストリップ小屋に逃げ込み————という単純明快なストーリーだ。


軍隊なのにもかかわらず、タンクトップを着たデカパイの金髪美女が居るわ、逃げ込んだところとストリップ小屋がなんでつながってるんだとか、理不尽な点は多い。ストーリーは破綻しかかっているのはこの際、どーでもいいことなのだが、ガンエフェクトでさえも金がかかっておらず、マズルフラッシュに安っぽいCGの火花を足しただけでアクションだけを評価する事も出来ない。


それでも、延々繰り広げられるストリップシーンや、人間が肉片になっていく様を細かく描いた気合い充分のゴアエフェクトなど楽しめる要素も少なからずある。なんと言っても、本家ロメロ作品には出て来ないような「このままじゃ、噛まれてゾンビになるよー、頼む!ゾンビになっちまう前に一発だけやらしてくれ!」という男がちゃんと出て来るのは評価に値する。


ストリップ小屋のオーナーがフレディ役の人だったり、主演はポルノスターの人だったりして、なかなか分かってる作品だったのだが、『片腕マシンガール』しかり、こういうグラインドハウス的な映画はホントに小屋でかからなくなってしまった。



それにしても、最近の上映格差は酷い。最初にシネコンが出来たとき、「夢のような場所が出来た!」と思ったのはぼくだけではあるまい。一つの映画館になんと8つもスクリーンがあり、そこで別々な映画が公開されるという。席はスタジアム形式で、前の人の頭は気にならない。スクリーンの中は禁煙だから、スクリーンが煙に被われる事もない!やたらキレイで、イスの座り心地はバツグン、以前はヘタな映画館よりもホームシアターの方が音響は良かったが、シネコンが出来てからはその辺も文句なしである。


まだそれこそシネコン黎明期だった頃は、恋愛映画からファミリー映画、感動系、ホラー、カンフー、ちょいエロまで様々な種類の映画が公開されていたと記憶している。ロメロの『ランド・オブ・ザ・デッド』やザック・スナイダーの『ドーン・オブ・ザ・デッド』、ダニー・ボイルの『28日後…』なんかもちゃんと公開していた。それがだ、新潟に本格的なシネコンが登場してから早10年————すっかりシネコンも様変わりしてしまった。そもそも新潟は市内に4つシネコンがあるという狂った地方都市なのだが、それでも今年は『チョコレート・ファイター』や『愛のむきだし』、『エグザイル/絆』やらないわ、『サマーウォーズ』は一館だけだわ、去年に至っては『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』も『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』も『ホット・ファズ』もやらず、アカデミー賞を受賞した『ノーカントリー』、フランク・ダラボンの『ミスト』は一館だけという体たらくである。『ブラッディ・バレンタイン3D』はやってたからよかったが、『ハロウィン』も短い期間で、気づいたら終わってた*1


他の地方はどうか分からないが、映画を観る環境としては最強のシネコンの様子がとにかくおかしい。客が入らないという理由でホラーは公開しない。R-15の映画もなるべくやらない。あげくの果てに血みどろバイオレンスの映画はほとんど入って来ない!単館系の映画は2週間限定上映なんて当たり前、名の知れた映画も数ヶ月遅れで、DVDが発売される目前に公開されるなんて事も珍しくない。今公開されてる映画もファミリー向けばかりで、しかも子供に合わせて吹替えしかやらない映画もあったりする、ケツ喰らえ!


シネコンは映画の売り上げだけでは採算が取れないという、だからシネコン売店のメニューはボッタクリに近い金額である。シネコンが存在し続けてられるのはポップコーンとドリンクの売り上げのおかげであって、それを買って行く客層に合わせた映画ばっかりになるのは当たり前だ。映画ファンは一人で年に何本も映画を観るわけで、ポップコーンやドリンクに無駄金使ってられない、そう考えると、映画ファンが納得するような映画を買い付けたところで客も入らないわ、売店は売れないわ、非常にこれは悪循環である。


何もぼくは若いカップルが観るようなケータイ小説の映画化やドラマの映画化、家族が観るようなファンタジーやアニメばかりやるな!と言ってるわけじゃない。それ以外も多少はやれ!と言ってるだけだ、けっして難しいことではない。オトナの事情だとか、しがらみとかいろいろあるんだろうが、サービス業と銘打っておきながら、まったく持って映画ファンをナメ切ったスタンスじゃないか。


もう一度言う!オレはスクリーンで血が吹き出すところを観たい。おっぱいが揺れるところを観たい。カンフーが観たい。ゾンビが観たい。人が虫けらのように殺される様を観たい。それらを公開しないで、何がシネマコンプレックスだ、笑わせんじゃねーよ。あういぇ。

*1:一応、補足しておくが、シネウィンドとか、まったくきょーみのない、にいがた映画祭なるもので後に公開されたりしてる。シネコンでやらないという話ね