ジャッキー先輩、おつかれさまです!香港の平和はオレらに任せてください!!

インビジブル・ターゲット DTS コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]

インビジブル・ターゲット DTS コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]

このキャッチコピーは伊達じゃない!何が?って話だが、これは『インビジブル・ターゲット』の裏ジャケに書かれていた言葉である。調べるとパンフレットにも記されていたらしい。一体誰が考えたのか分からないが、見事にこの作品を表した名コピーと言える。何故ならば、この『インビジブル・ターゲット』、香港アクションの集大成的傑作で、観てる側から「すげー!すげー!」と頭の中で連呼してしまうくらいの偉大な作品だったからである。


超絶なパルクールアクションといい、クライマックスの長いカンフーといい、全盛期香港映画のショーケースになっていて、CGは多様されているものの、香港映画がハリウッド製のアクション映画よりも上だという事を誇示するには充分過ぎる作品であった。


ニコラス・ツェーツイ・ハークの『ドリフト』や『香港国際警察』、『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』に出てただけあって、見事なアクションを披露していて、ショーン・ユーもこんなに身体のキレよかったか?というほど、アクションがウマい。特出すべきはジャッキーのご子息である、ジェイシー・チェンだ。『ツインズ・エフェクト2』で「やっぱり、息子なだけあって、顔似てんなぁ」くらいの印象しかなかったのだが、今作では父親に負けず劣らずのスタントアクションを披露。幼い頃にダンスで鍛えただけあって、カンフーアクションも他の二人に比べて遜色ないように見えた。演技の幅も大分広がったように思ったのだが、まぁ、ぼくは広東語わかんねーし、その辺は専門家に任せる。監督のベニー・チャンは『ジェネックス・コップ』や『香港国際警察』、『プロジェクトBB』という傑作を撮っていて、ぼくはその3本しか観てなかったのだけれど、個人的には一番好きかもしれない*1


さて、『インビジブル・ターゲット』はアクションの撮り方一つとっても、無茶苦茶ウマいのだが、さすがベニー・チャンというべき狂った要素もしっかりと入っている。この監督、実はフランク・ダラボンのように鬼畜なドSで、観客の神経を逆なでさせるような陰惨なシーンを必ず盛り込むのが特徴。『香港国際警察』では、ジェッキーの目の前で部下が高いところから落とされるというシーンを延々やったり、『プロジェクトBB』では、赤ちゃんを冷凍室に長時間入れて、それだけでも酷いのに、ひん死の赤ちゃんを復活させるのに、車のバッテリーから電気を身体に帯電させて(死ぬっつーの)、心臓マッサージを施すというトンデモシーンがあるが、『インビジブル・ターゲット』でも出て来るよ、ラストの方で、鬼畜なドSシーンが。あまりに酷くて泣き出しちゃう人も居るかもしれない。


さらに『インビジブル・ターゲット』は敵組織が執拗に強い。この場合警察が無能とか弱いとかではない。敵がその上をいっているのだ。よく刑事ドラマを観ていると「いや、シロートにこれだけの事は出来ない、これはプロの犯行だ」なんていうセリフが良く出て来るが、『インビジブル・ターゲット』の敵はプロ中のプロというか、今までの映画史の中でも、トップ5くらいに入るんじゃないかというくらい強い。格闘技や殺人術に長けてるのは当たり前、武器の使い方や爆弾の種類も豊富、資金調達のための強盗も完璧、さらにどんなにヤバい状況にあっても裏切り者は絶対に許さないという御法度の徹底など、これからアクション映画を作る時はこの映画の悪役を参考にしろ!と心の底から言いたいくらい完璧であった。


てなわけで、香港映画の良いところを凝縮させ、若手のキレ味良いアクションが見れて、なおかつ監督の狂った要素も盛り込まれた『インビジブル・ターゲット』は、「ジャッキー先輩おつかれさまです!」と、ジャッキーがアクション映画を撮らなくなっても、一安心出来る大傑作に仕上がっていた。もしかしたらこれを観てジャッキーは『新宿インシデント』に踏み切ったのかもしれない、あういぇ。

*1:『フー・アム・アイ?』もだっけ?