くりごはんが嫌いな男が選ぶ音楽映画ベストテン
毎年恒例ワッシュさん主催の映画ベストテンを選ぶ企画。今回は音楽映画。みなさんなかなか選ぶのに苦戦してらっしゃるようでしたが、ぼくはあっさりと決まった感ありました。
1.さらば青春の光(79年、フランク・ロダム)
2.24・アワー・パーティー・ピープル(02年、マイケル・ウィンター・ボトム)
3.ナッシュビル(75年、ロバート・アルトマン)
4.バード(88年、クリント・イーストウッド)
5.ラスト・ワルツ(78年、マーティン・スコセッシ)
6.ストップ・メイキング・センス(84年、ジョナサン・デミ)
7.ブルースブラザース(80年、ジョン・ランディス)
8.ファントム・オブ・パラダイス(74年、ブライアン・デ・パルマ)
9.ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(99年、ヴィム・ヴェンダース)
10.ソウル・パワー(08年、ジェフリー・レヴィ=ヒント)
まずワッシュさんが「音楽映画」というくくりにした時点でいわゆる「ミュージカル」と定義されてるものは除外した。さらに「映画のワンシーンのなかで音楽が印象的」いうのも除外。あくまで映画のなかで音楽がしっかり機能しているもの、音楽そのものを描いたもの、そしてミュージカルとは違うもの、劇場で公開されて映画として扱われてるものを選んだ。
1.はザ・フーのコンセプトアルバム『四重人格』のストーリーを元に映画化したものだが、ぼくにとっては重要な一本で、この映画がきっかけでフレッドペリーを買い、モッズコートをネットで買い、クラークスのデザートブーツも古着屋で探した。さすがにリーバイスは買わなかったけど、ジーパンに興味を持った。DVDも二度買い替えた。もちろん『四重人格』も何度も何度も聴いた。ある意味で生活に影響を及ぼした、オールタイムベストに君臨するロック映画史上最高の一本。
2.は天才マイケル・ウィンター・ボトムがフェイクドキュメンタリーの形式で描く、ファクトリーレコードの盛者必衰。パンクもニューウェーヴも大嫌いでニューオーダーの良さもまったくわからなかったが、この映画がきっかけでしっかり聴くようになり、ジョイ・ディヴィジョンというバンドの存在も知った。もちろん映画としてもメタ構造を含んだ一種のゴダール的な作りで、80年代のヌーベルバーグ=ニューウェーヴとして見せてるきらいもあり、非常に感銘を受けた。
3.はアルトマンの代表作であると共に、上映時間の3分の1以上を音楽がしめる*1文字通りの「音楽映画」。登場人物が多く、めまぐるしいストーリー展開のため、ちゃんと理解してるかと聞かれるとかなり疑問であるが(そのために表立って感想を書いてない)、オープニングから渋い音楽が流れ、アメリカンミュージックをこれ一本で堪能できるという意味ではやはり重要。同じアルトマン監督の『カンザス・シティ』も全編にジャズが流れ続けるという意味では楽しい音楽映画のひとつ。そちらもおすすめ。
4.はイーストウッドが描く、天才チャーリー・パーカーの生涯。といいつつ、実際は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のジャズ版といった具合で、時制もコロコロ変わり、さらに主人公がヤク漬けのため、どこまでが現実でどこまでが妄想なのかわからないサイケな作り。しかし、ジャズを使って、その時代をまるまる描いてやるという気概があり、イーストウッドの本気度が伺える。チャーリー・パーカーの演奏だけ抜き出して、バックだけ新録するなど、サントラも並々ならぬこだわり。ぼくはイーストウッド監督作のなかでは一番好きなのだが、あまりそういう人に出会わないなぁ。音楽版『グラントリノ』ともいえる『センチメンタル・アドベンチャー』もおすすめ。
5.はいわずもがなでこれを入れるのはどうかと思ったが、やはり一夜でアメリカンロックの歴史を伝えてるという意味では超重要な音楽映画。ザ・バンドが元々好きというのもあって、かなり思い入れは強いが、別にザ・バンドに興味がなくても、これをフェイバリットにあげ、一年に一回は観ると公言している人を各メディアで見てきたので、普通に優れた映画なのではないかなとも思う。
6.はトーキング・ヘッズ圧巻のパフォーマンスを鬼才ジョナサン・デミが切り取ったカルト的な人気を誇る一本。ぶっちゃけトーキング・ヘッズにそこまで興味がなかったのだけれど(というか、80年代全般の音楽に興味がない)、これをきっかけに聴くようになり、もちろんこの作品自体も何度も観ている。今でも爆音上映があったり人気に衰えがない。改めて映像の力、音楽の力ってすごいなと思わせる。まぁライブを映してるだけじゃんと言われればそれまでなのだけれど。
7.もいわずもがなという感じだが、映画としては『七人の侍』よろしくヤサイマシマシニンニクマシマシアブラカラメといった具合でこれあったら他はいらないレベル。もちろん音楽映画としても重要でアレサ・フランクリン、ジェイムズ・ブラウン、レイ・チャールズといったブラックミュージックの巨匠たちが意気揚々と画面上を動き回る。サントラもホントに素晴らしく、これまたアメリカンミュージックの素晴らしさを堪能できる。
8.はブライアン・デ・パルマによる「オペラ座の怪人」を下敷きにしたロックミュージカル……というジャンルにしていいのかわからないが、傑作中の傑作。こちらは選ぶ人が多いと思われるのでこれ以上の説明は不要かと。
9.はキューバに住む伝説的なミュージシャンを追ったヴィム・ヴェンダースのドキュメンタリー。音楽を奏でること、そして聴くことの楽しさが全身を駆け抜ける。同バンドがレコーディングしたアルバムはグラミー賞を受賞するが、いまだに聴くくらい大好きで、この映画も一年に一回くらいなんとなく観たくなって観る。かわいらしいおじいちゃんがたくさん見られるのも特徴。
10.は“キンシャサの奇跡”と呼ばれたモハメド・アリ対ジョージ・フォアマンの世紀の一戦の前に行われた音楽フェスを追ったドキュメンタリー。時代の空気をパッケージングした映像もさることながら、何よりも奇跡と呼ばれた伝説のステージを見られるという映画の醍醐味がここに!ぼくは輸入BDで観たのだけれど画質の良さにも驚き、ジェイムズ・ブラウンのパフォーマンスはホントに何度も何度も観た。
ワッシュさんが選んでいたウォルター・ヒルの『クロスロード』はぼくも大好きな映画だし、他にも「ロックンロールの寓話」として語られる同監督の『ストリート・オブ・ファイヤー』や、それこそ『アイデン&ティティ』は原作も含め、DVDを発売日に買って何度も観てるくらい好きだし『リンダ リンダ リンダ』をいれないのはどうか……などあり、結構スラスラとタイトルが出てきたジャンルなので、逆に他の人が選んだものを見て「あれ入れてなかった!」などあとから言いたいなぁと思うのであった。毎回総括が同じコメントな気がするが、世間はハロウィンで盛り上がってるが、映画ファンはこのお祭りで盛り上がればいいさぁ!ハッピーハロウィン!!(もうハロウィン終わったけど)