なぜテレビで出来て映画で出来ないのか『エイプリルフールズ』

『エイプリルフールズ』を鑑賞。結構前にテレビで放送したヤツ。最近こんなのばっかりだな。

リーガル・ハイ』の監督、脚本コンビによる劇場作品ということで、かなり期待していたが、あまり良い評判を聞かず結局スルーしてしまった。おかんが「思ったのと違って途中で観るのをやめた」と言っていたため、そこそこハードルを下げて観たのだが、なるほど。これは確かにヒドい。ここ最近でダントツのワーストだろう。

エイプリルフールという一日に限定し、それにかこつけてウソをついている数組の話を同時進行で描いていく……いわゆる『マグノリア』スタイルなのだが、まずこの作品。リアリティラインの引き方が悪く、誰もまともな人が登場しないため、ウソをつく話なのに、それに輪をかけてそもそも全体的にウソくさい。

役者はほとんどオーバーアクトでこんなことこんなリアクションでしゃべるヤツいないよの連発だし、それこそそれを逆手にとって『リーガル・ハイ』のように早口でまくしたてるとか、スクリューボールコメディに振り切ってもないため、そのリアリティのなさがノイズになってまともなテンションで観ることができない。

さらに、宮内庁の人間にひれ伏す人々や、勝手に客を返す店主、大事なポイントで警察そのものに連絡しないレストランや、人質がいるのに「このフロアの責任者はわたしだからわたしの指示に従っていただく」というウエイター、自殺をするんじゃないかと勘違いしてる中学生にたいして警察を呼ばずに勝手に説得する人などなど。一事が万事、登場人物たちの行動原理に納得がいかず、なんでこんなことをするのか?理解できないまま話がすすんでいく。あげく悪いことをしているキャラクターですら、過去にこんなことがあったからその罪は仕方ないよねと強引に感動にもっていき、だから許してあげてねーというのも納得がいかない。

一番の問題点はクレームだらけで過激なことができないテレビで過激なことをして、わりとそういうことに寛容な映画でテレビでやるようなゆるいことするということである。なんのためにスケールを大きくし、なんのために古沢良太という男を起用したのか。松坂桃李の裸を見せるだけがそれにあたるとしたら制作者たちは何を考えているのか。そもそもの姿勢にいら立ちを覚える。

おもしろかったところは小学生の女の子にソープの現場を見せたり、いじめられっこがいじめっこをボコボコにしたりするシーン。あとは「女の人は肩書きと顔の良さだけですぐに引っかかってお股を開く」という古沢良太ならではの悪意かなー。ただ、批判を恐れたのか、それが薄く見え隠れするのもどうかと。

松坂桃李は新境地だが、菜々緒は毎回こういう役なのな。それはそれでポジションを見つけたということなのだろうが。