不良感度は薄まったものの、充分“映画”『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』

探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』鑑賞。

前作はハードボイルドの定石をそのまんまススキノに持ち込んだ『濱マイク』シリーズ以来の傑作で、大泉洋自身の人気もあいまって北海道を中心に大ヒット。おなじスタッフ/主要キャストが揃った続編もおおいに楽しみにしていたが、今作ではその「らしさ」はすっかりと鳴りを潜めている。ハッキリ言ってしまうとハードボイルドではなくなっているのだ。

まず、前作で探偵大泉の助手であった高田が大泉と同等の存在にパワーアップしており、すっかり“相棒”よろしくのバディムービーと化している。そこにいわゆるファム・ファタール的な存在の尾野真千子が加わることで“男2女ひとり”という『冒険者たち』のような構図になり、彼らがとある事情によりススキノにいれなくなったので調査も兼ねて室蘭に旅するのだが、ここのくだりはロードムービーのようであり、牧歌的な風景と車のフォルムもあいまって『幸せの黄色いハンカチ』を見ているようであった。

さらに探偵のキャラクター。前作ではあくまで「探偵」としてのかっこよさが軸であり、まるで実写版ルパン三世のようなたたずまいだったのだが、今作ではそのキャラクターがタレント大泉洋に若干喰われている。単純にギャグが増えたわけだが、いちいちリアクションやツッコミとしての役割である茶々が出るたびに「水曜どうでしょう」でミスターをイジっている光景が頭をよぎった。

しかし、映画単品のおもしろさ/完成度でいえば、前作をゆうに超えている。

そもそも話そのものがぶっちぎりでおもしろい。些細なセリフから貼る絶妙な伏線、ズレはじめる運命、オフビート故に予想だにしてなかった展開が後半怒濤のように押し寄せ、思いもよらなかったところから出てくる真実など、ミステリーとしてよくできていたように思う。脚本家もとしてもクレジットされてるプロデューサーが「アクション映画みたいになってしまった」と言うように前作よりも映画的な見せ場はたっぷりでワンシークエンスも長い。しかもそれら全部本人がスタントなしで演じているというから驚く(舞台挨拶で尾野真千子がスタント使ってアクション撮ったみたいですけどとボケてたくらい)。

さらに今作では反原発を謳っており、それに絡む事件に巻き込まれるなど『リーガル・ハイ』で出来なかったことに真っ正面から取り組んでいる。もちろん悪を悪と描かない古沢マジックは今回も冴え渡っていて、飛び切り熱い。

前作ほど不良感度はやや薄まったものの、それでも規制だらけで過激さがなくなったテレビとそれにすがり「The Movie」などというしぼりカスで金を稼ぐしか能がなくなった日本映画界への反発が充分にある。

酒を昼からあおり、タバコを吸い、女の胸を揉みしだき、ガンガン殴り合い、血がビュービュー出るなど、映画館にいかなければ「見れない」ものが娯楽映画というフォーマットの中にしっかりと収まっている。もう県庁でおもてなしがどうしたとか知らん!絶対必見!