「うぁんちゃんさぁああ」から「あ、あんちゃん……」へ『そして父になる』
是枝監督の作品があまり好きではないことはわりと前から公言しているのだが『海街diary』があまりによかったので、その前に作られた『そして父になる』をDVDで観た。
いろいろすばらしいところはたくさんあるのだが、なんといっても福山雅治に驚いた。
福山雅治といえば「うぁんちゃんさぁあ」や「じつぅにきょぉみぶかい」など、モノマネの対象になるほどクセの強いイントネーションを持ち、そのせいでもって毎回まともに演技を見てもらえないという日本でも希有なポジションにいる役者であるが(藤原竜也もそうか)、それが今回はまったくと言っていいほどなかった。いや、今までが今までだったので、あったのかもしれないが、それをあまり感じなかった。もしかしたらいくぶん抑えられていたという方が正しいのかもしれない。とにかく途中から福山雅治を見てるという感じではなく、野々宮良多という映画のキャラクターを見ているという風に脳が自然と切り替わっていた。これは今までどの監督もやったことなかったし、むしろできなかった。それに関してはマジで賞賛に値する。
しかも「赤ちゃんを取り違えたことにより、6年間育てた息子が実は他人の子だった」という「一体いつの時代だよ、草生えるわ」と言われかねないお先真っ暗な悲劇をわりとさらっと無感情に描いてるあたりも好感を持った。過剰に泣かせないのも近年の邦画に対するアンチテーゼな気もする。
ただ、やっぱりこの監督の資質というか、もしかしたら無意識なのかもしれないが『誰も知らない』同様、「こういう誰も扱ってない事件をフィクショナルに映画化し、それが作家性なんでござあますのよ」という顔をして商売してる感じがどうも気に喰わない。こればっかりは生理的に無理というレヴェルであり、つまりこの感想を読んで「いや、こういうこと書いているの無理なんだけど、マジ草生えるわ」と思ってる人がいるのと同じことなので、このへんでお開きにしたいと思う。
あ、ただ、Twitterでもリプがきたが、真木よう子のウインクはやばかった。というか、いろいろいいところはあった。ホントに。
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