くりごはんが嫌いな男が選ぶアニメ映画ベストテン

毎年恒例の………って一年経つの早くね?マジかよ………SF映画選んだのも、ホラー映画選んだのも、もっといえばスポーツ映画選んだのもついこないだじゃん………今年はアニメ映画。アニメ映画ってのがいいね。

アニメ映画ベストテン - 男の魂に火をつけろ!


1.BLOOD THE LAST VAMPIRE(00年 北久保弘之)

2.マインド・ゲーム(04年 湯浅政明)

3.イノセンス(04年 押井守)

4.スチームボーイ(04年 大友克洋)

5.メトロポリス(01年 りんたろう)

6.人狼(01年 沖浦啓之)

7.妖獣都市(87年 川尻善昭)

8.空飛ぶゆうれい船(69年 池田宏)

9.ジャイアント・ピーチ(96年 ヘンリー・セリック)

10.ファンタジア(40年 ベン・シャープスティーン)


ホントはもっと名作みたいなヤツを入れるべきなんだろうけど、吉田豪がおすすめCDを選ぶというインタビューでこんなことを言ってまして。

「名盤を選んでください」的なオファーがよくあるんだけど、そういう場合、後から辿って聴いたモノは選びたくないというか。なんか嘘ついてるような気がして。邦楽でいえば、はっぴいえんどとかジャックスとか入れると嘘になる気がする、みたいな(笑)。「おまえ、リアルタイムで聴いてないのに、なんかカッコ付けてるだろ!」って。だから、中高校生のとき聴いてた当時のバンドだけ持ってきた。


そのラインナップが意外というか「おおっ!」と思うようなものだったので、それに憧れて選んでみた。単純にぼくが「アニメ映画が好きだった頃にスクリーンで観て、そのあとに高い金出してDVDを買い、何度も繰り返し観てた」ものが中心。基本的にこの手のランキングではいろんなジャンルのいろんな年代の作品を選ぶようにしてるが、あえて偏らせたところもある。


1.から4.はスクリーンで観ているが、特に1.はアニメに何を求めているのか?を再認識したようなところもあった。ジャパニメーションということばが流行り、その数年後にそれを体現する形で大量に海外を意識したアニメが作られた気がするが、そのなかでも1.は大人の鑑賞に耐えうるアニメをちゃんと劇場でお金を払って観たという気がして思い入れが強く、いまだに繰り返し観る。いまでは違和感なく3Dとセルアニメの融合がなされているが、当時は3Dの場所は3D。セルはセルといった形でまだ画面設計や動きに歪さがあった。その歪さが独自の世界観を形成し、作品の味になっているのも特徴で、それが『青の6号』よりも露骨じゃないのが良い。セーラー服を着たねーちゃんが日本刀を持って吸血鬼をバッサバッサとなぎ倒すというハイコンセプトだけで突っ走ってるのもまさに「クールジャパン」を象徴するようで、間違いなく『キル・ビル』や『エンジェル・ウォーズ』に影響を与えた早すぎた傑作。


2.はゼロ年代ベストにも入れた。ピクサージブリなどアニメ作品は制作会社で往々に語られがちだが、それでいうならSTUDIO 4℃の革新性はもっと評価しなければならないだろう。特に『マインド・ゲーム』は実験精神に溢れながらもアニメのおもしろさも追及している。単純に「絵」が動いてることのすごさでいえば現段階での極北。


3.と4.に関しては『攻殻機動隊』や『AKIRA』を入れる人が多いと思ったので、あえてこちらで。いやいや奇を衒ってるわけではない。ホントに劇場で観たときは心底感動したものだ。大友克洋の作品では『大砲の街』が一番好きなのだが、それはまた別の話で……


5.と6.は逆にスクリーンで観ておらず、あとでDVDで観て非常に後悔した作品。特に『メトロポリス』は通常盤を買って、あまりの出来の良さにそれを売って、限定BOXを買い直したほどだった。もっと評価されていいと思う。正当に評価してるのがロジャー・エバートというのも不思議な話である。


7.は『妖獣都市』を入れたかったんだけど、OVA作品ということでこちらに。もちろん大好きである。『子連れ狼』に川尻テイストを加えた大傑作。『ヴァンパイアーハンターD』も好きよ。※実は最初は『獣兵衛忍風帖』をここに入れてたのだが、Twitterで劇場公開扱いで大丈夫ですよ!と教えていただいた。


8.は石森章太郎特集で知って、そのあとにDVDを購入した。秘宝読者としては町山智浩のオールタイムベストとして有名かもしれない。『クローバーフィールド』や『エヴァンゲリオン』への影響も大。


9.はヘンリー・セリックのなかで一番好きだから。あまり知ってる人がいないなー。こちらもCGとの融合が完璧ではなく、その歪さが作品の味になってるパターン。『ナイトメア〜』よりも断然こっち。というかヘンリー・セリックの作品としての評価はこちらでしょう。『ナイトメア〜』はティム・バートン監督だって思ってる人も多いし。


10.は王道中の王道だけど、アニメってこういうことだよなという作品だと思うから。


【総括】
結局『カリオストロ』や『パト2』『攻殻』『オトナ帝国』などランキング上位に食い込んでくるであろう作品は選ばれず。ぶっちゃけ『クレしん』の例の二作はおもしろかったけれどもそこまで思い入れもなく、宮崎駿も嫌いな作品の方が多いので、このような形になった。暗黒皇帝(@ANKOKU_KOUTEI)から「お前はあいかわらずセンスねぇな!」とお叱りをうけそうではあるが、それも覚悟で選んだのであった。いわゆる「永遠の二推し」的なランキングであります。

くりごはんが嫌いな男の2013年ベストムービー(ゼロ・グラビティ以外)

というわけで今年もやってまいりました。なんかネットで映画ベストテンを発表するのはどうなの?という意見も飛び交ってますが、いいじゃん。楽しいんだから。

ゼロ・グラビティ』も『キック・アス2』も観てませんが、『グラントリノ』も『レスラー』もその年のベストに入れなかったひとなので、多分ランク外になることでしょう。というわけでとっとと発表してしまいます。


元祖『ゼロ・グラビティ』こと『2001年宇宙の旅』で船外に放り出されるシーン

1.バレット
2.オンリー・ゴッド
3.ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン
4.ホーリー・モーターズ
5.ジャンゴ 繋がれざる者
6.パシフィック・リム
7.スプリング・ブレイカーズ
8.マニアック
9.キラー・スナイパー
10.チキン・オブ・ザ・デッド/悪魔の毒々バリューセット


1.は映画の出来としては60点くらいだと思うんだけど、ウォルター・ヒルらしさ溢れる演出と年齢を重ねふたたびアクションスターとして舞い戻ってきたスライのかっこよさに濡れた。『エクスペンダブルズ』も『ラスト・スタンド』もよかったが、そのなかでも頭ひとつ抜けていて、やっとこういうのがでてきたか!と感動。ぼくが映画に何を求めていたかを再確認。


2.は去年でいうところの『ブラッディ・スクール』枠であり、レフン作品が大好きでさらに『ドライヴ』をランクインさせたのにこれをランクインさせないわけにいかない。とにかく変な映画。変な映画としかいいようがない。これダメだって言われてもまったく何も感じないくらい好き/嫌いに分かれるのは承知の作品である。


3.はハードロックにはまるで興味がなく、あげくジャーニーにそこまで思い入れがなかったのにも関わらず大号泣した。今年日本で公開された音楽系ドキュメンタリーは傑作もいくつかあったが、そのなかでは一番おもしろかったのでこれをその枠としてランクインさせた。実話版『スラムドッグ$ミリオネア


4.は今のこの時代にゴダール全盛期クラスの傑作が観れるのか!と死ぬほど感動した。さすがに「アイシテルのサイン」的ラストはやりすぎのように感じたが、アコーディオンで“Let My Baby Ride”のリフを奏で、大勢で練り歩く「インターミッション」は文句なしに映画史に残る名シーンだ。


5.は「イングロリアス・バスターズ」のマカロニ・ブラッシュアップ版ということであれが大傑作なわけだから、今作も間違いないおもしろさ。


6.はベスト1でも問題ないが、2008年に「クローバーフィールド」をベスト1にしていて、あれで受けたショックが大きすぎて、どうしてもその影がちらつきこの位置に。しかし、古き良きジャンル映画をこの時代にスクリーンで体感するという喜びは何者にも変えられないものがある。大好きだ。


7.は作家性がやや強めのシネフィル系に分類され、見事にカイエ・デュ・シネマ誌でも2位に選ばれたが、実際は『ファスター・プッシーキャット キル!キル!』な『スカーフェイス』であって、見事にボンクラ魂に火をつけてくれる。冒頭のスローモーションは延々見続けたいし、実際ブルーレイで延々見続けていた。ムッチムチ!


8.はまさかの主観映像によるスラッシャームービー。しかも犯人側から描いているのが斬新。そして現代の『タクシードライバー』に昇華させたことも評価すべき。大傑作だと思う。


9.はフリードキン御大がまったく老けてないどころか、さらに攻撃的になってることに驚く。これがDVDレンタルのみなんだからまだまだ世界には知らない映画がたくさんあるんだろうなぁと再認識。


10.はこれからの映画界の希望。2008年の映画ながら日本では今年公開ということでランクさせた。こういう映画だけ見続けたい。ぶったまげるほどの傑作だった。


【総括】

『クロニクル』や『キャビン』は輸入盤で去年観ていて、そこのベストにしたのでとりあえず除外。毎年流行語大賞くらいに発表してたのだが、ここ三週間ばかし『モンハン』にがっつしハマってしまってそれどころじゃなかったのでありました。ごめんなさい。だって周りでみんなやってるし、狩りにいくの楽しいんだもん。

ぶっちゃけ10月まではザ・マスター、風立ちぬ奪命金、フライト、ジャッキーコーガン、コズモポリス、マン・オブ・スティールあたりがベストを占めていたのだが、上半期に見逃したヤツを観漁ってたらとんでもない大傑作が眠っており、最終的に自分の好みや映画になにを求めているのか?どういう衝撃があったか?などを基準に選びなおした。今挙げた映画も含め、基本的には全部ベスト1で同列であるという感じだが、まぁそれはそれでおもしろくないということで無理矢理順位を決めた。血まみれで上映時間は短め、さらにバカっぽくてホラーでややシネフィルと、とにかく例年以上に趣味全開になってしまった。ホントは『クソすばらしいこの世界』とかも入れたかったのだが、泣く泣く除外。

それにしても今年ほど年間ベストが決めにくい年もなかっただろう。『フラッシュバックメモリーズ』はもちろんのこと『パシフィック・リム』に関しては3Dで観るのと4Dで観るのではまったく違う体験になるだろうし、AKBのドキュメンタリーは「峯岸坊主騒動、映画の日で初日の初回の舞台挨拶付き上映、そのあとにBSプレミアムで放送された“密着!秋元康 2160時間”も込み」という体験でいえば上位にランクインするが、それは作品の質とは違う話になってくるし、まぁそういうのは選者ひとりひとりのスタンスによっても違うはずである。あと午前十時の映画祭で観た『2001年宇宙の旅』はホントに素晴らしかったし、未見だった『カリフォルニア・ドールズ』には涙をしぼりとられた。

ワーストは映画版の『ストロベリーナイト』だが、スマ4Dも試みとしてはよいが映画としては最悪の出来だった。これらに比べれば遥かに素晴らしいが、作品の出来とは別にノレなかったのは『シュガー・ラッシュ』と『世界にひとつのプレイブック』だった。

くりごはんが嫌いな男が選ぶSF映画ベストテン

SF映画ベストテン - 男の魂に火をつけろ!

意外とアクセス数が伸びないと仰ってましたが、年末恒例ワッシュさんの映画ベスト企画。今年はSF映画のベストテンということで、当然ながら今年も参加させていただきたいと思います。この文章自体去年のものをコピペして改変してみた(どうでもいい)。


1.GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊(95年 押井守)
2.妖星ゴラス(62年 本多猪四郎)
3.サイレント・ランニング(72年 ダグラス・トランブル)
4.THX-1138(71年 ジョージ・ルーカス)
5.ラ・ジュテ(62年 クリス・マルケル)
6.トゥモロー・ワールド(06年 アルフォンソ・キュアロン)
7.バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2(89年 ロバート・ゼメキス)
8.フィフス・エレメント(97年 リュック・ベッソン)
9.ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀(86年 ウィラード・ハイク)
10.ロボフォース/鉄甲無敵マリア(88年 デイヴィッド・チャン)


【作品解説と選んだ理由について】

好きなSF映画は?と聞かれて真っ先に答えるのは『2001年宇宙の旅』と『ブレードランナー』であり、これらが金字塔であることに異論はないと思うが、実はこの二本が描こうとした哲学的な部分を90分以内にまとめ上げて内包し、さらに『マトリックス』に多大な影響を与えたという意味で、ぼくにとっての一位は『攻殻機動隊』で揺るぎないなと思った。『アポカリプト』とか『エグザイル/絆』『キル・ビル』を選ぶのと同じ理由である。特性としては『魔法少女まどか☆マギカ』もそうであり、これもランクインさせたかったのだが、いかんせんTV版のダイジェストといえる劇場版を観ていないので……


妖星ゴラス』は正確に分類するなら「特撮映画」ということになるんだろうが、得体の知れない惑星が地球にぶつかってくるので、地球そのものを動かして惑星をかわそうという発想に感服。『アルマゲドン』や『ディープインパクト』よりも遥かに早い和製SFの傑作。


サイレント・ランニング』は『WALL・E』の元ネタともいえる作品だが、実は『天空の城ラピュタ』にも影響を与えている一本。ゲームの『クロノ・トリガー』にもそのプロットがパクられたほどで、冒頭の映像はどうやって撮影したのか未だに謎。タルコフスキーかよと思った。


THX-1138』は今年になってはじめて観たのだが、とてつもない大傑作で死ぬほど感動した。その後のSF映画に多大な影響を与えたのがすぐわかるくらいのエポックメイクっぷり。スピルバーグいわく『ブレラン』にも実は影響を与えているとかなんとか。CGで手を加えたバージョンを観たのだが、それがかえってよかったのかも『スターウォーズ』よりも好き。


ラ・ジュテ』はSF映画というよりも映画そのものが何か?ということまで考えさせられる超大傑作。表現としては反則スレスレな気もするが、実験精神にあふれているのにおもしろく、さらにその後のフォロワーがでてこないほど完成されているのもすごい。『12モンキーズ』はこれにギリアムのレトロキッチュ感覚とミステリー要素を足したリメイクである(こちらも傑作)。


トゥモロー・ワールド』は単純に『ブレラン』と『未来世紀ブラジル』に並ぶ金字塔だと思うから。『マトリックス』よりもぼくはこちらを推す。


バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』は他の人にとっての『スターウォーズ』にあたる作品であり、SFの楽しさを教えてくれたから。空飛ぶデロリアンが持つセンス・オブ・ワンダーに勝るものなし。ディストピアな世界もしっかり描かれ、ホバーボードやオートマチックのスニーカーなど、とにかくガジェットがすばらしい。


フィフス・エレメント』は『マトリックス』が出るまえのサンプリングムービーで、ブレランAKIRAもカンフーもジョンウーテイストもすでに入っており、ベッソンが実はオタクなんだなということがよくわかる一作。冒頭20分がややタルイものの、メビウスのコミック世界を完璧に再現したビジュアルはもっと評価されるべき。


http://d.hatena.ne.jp/katokitiz/20091113/1258091931←こういうエントリを書いといて『ハワード・ザ・ダック』を選ばないのはさすがに……


『ロボフォース/鉄甲無敵マリア』はWOWOWで放送した際、予告の段階で「はいはい『ロボコップ』のパクリねー」と思って観たらあまりのおもしろさに感動したから。ぼくのおかんの生涯のベスト作でもある。


【総括】

実は今回、かなり難産だった。というのも「SF映画ったらいっぱいあるぞー、まず「2001年」と「ブレラン」でしょー。それからー「未知との遭遇」とー「未来世紀ブラジル」……」と思いつくままに選んでいったら恐ろしくつまらないベストテンになってしまったからである。

ホラー映画のときはそれらを意識して排除したわけではなかったのだが、それら以外で好きなSF映画というと意外と多くなく、さらに選んだはいいけど「あれ?これって正確に分類するならSF映画ではないよな……」と「SF映画とは何か?」という根本的な問題にぶちあたってしまい時間がかかった。まぁ毎年明確な定義付けは関係なく自由に選んでほしいというコンセプトなのでその辺は問題ないのだけれど。

いろんな作品をノートに書き出してこねくり回した結果、ホラー映画のときと一緒で「個人的なSF感」が色濃く反映された10本になった。やっぱり『ブレードランナー』は入れたほうがよかったんじゃないかなーとか、ワッシュさんが選んでいたように90年代以降、CGの技術が飛躍的に向上してからの作品のほうが印象に残る作品多かったよなーとか思ったりもしたが、それを凌駕する気概に満ちた作品も多くランクインした。

選ぶのは楽しかったが『スターシップ・トゥルーパーズ』と『リターナー』が入れられなかったことが最大の心残りである!!!あと『マーズ・アタック』も!!

――――こういうこと言い出したらキリがないのでやめます。あー『アンドロメダ…』も入れ忘れちゃったよ…

実はヨーロッパの香り漂う映画『タクシードライバー』

タクシードライバー』という映画が好きである。初見の頃から変わらずにずっと好きだ。かなりの回数を観ているが、それはぼくだけではないだろう。

実はいろいろあってぼくもトラビスと同じような状況にいた。しかし、その鬱屈した感情は爆発するわけではなく、内にこもり続け、北野武よろしく「死にたい」という破滅願望に変わっていた。当然ながらそんなことできる勇気などなく、つねに引きこもり、一日中延々と映画を見続けていた十代だった。

「ぼくに比べればトラビスは不眠症を仕事に活かしていていいじゃないか、金だってたんまりあるし、女に声もかけれるし」と当時は思っていたものだが、何度も観ていく内にトラビスは移動中も部屋に帰っても、ポルノを観ていてもつねに孤独だということに気づいた。そして目に映るものといえば、この世のクズばかり。深夜にドンキにいっただけでイライラしてしまうぼくにとっては地獄のような毎日だろうと思うようになった。特に同じように朝方まで働くようになってからは、彼がトボトボと歩きながら酒を飲み帰路につくシーンがより切実なものとして伝わってきた。なんでオレだけがこんな時間まで……と毎回帰るまでの時間が苦痛でしかたがない。彼はその孤独と怒りを映画の中で爆発させるが、それを観て発散していたようなところもあったのかもしれない。

同じような理由でこの作品を愛する人は多いと思うが、ここ最近、ふとまた毎日のように見始めた。そしてメイキングや音声解説など改めて観てみたら今まで気づかないようなことに気づきはじめたのでそのことについて書こうと思う。

タクシードライバー』は実話を元にした作品である。

以前ドストエフスキーの『地下室の手記』を人におすすめされたとき「ある意味『タクシードライバー』みたいな話だよー」と言われたのだが、まさにそれのノンフィクション版といえる大統領候補を狙撃した犯人の日記をポール・シュレイダーが読み、自分に重ね合わせて脚本を書き上げた。それは最初デ・パルマの手に渡ったが、デ・パルマは自分で監督するよりもとスコセッシを推薦した――――という話は町山智浩著「映画の見方がわかる本」にくわしい。

デ・パルマがこの脚本をスコセッシに渡した理由は主人公の気持ちがより理解できるからだと思うが、なんとスコセッシは『タクシードライバー』を撮るにあたり、そのデ・パルマが得意とするヒッチコックのカメラワークを多用した

やたらと頭上から映すカットが多かったり、画面の中心に人物がいないというのはヒッチコックのシェーマであり、スコセッシ本人が演じたヒステリー男がアパートを観るショットは『裏窓』に酷似している。オープニングは『めまい』と同じだし、そもそもバーナード・ハーマンに音楽を依頼するなど、そのオマージュ加減はモロだったりする。もし、この作品をデ・パルマが監督していたらどうなっていただろう。もしかしたらデ・パルマはこの作品のタッチに影響され『殺しのドレス』や『ボディ・ダブル』というヒッチコックフォロワー作品を作り上げたのかもしれない。

そして、内容が内容なだけにあまりその観点から語られていないが、実は『タクシードライバー』はとてもヌーベルバーグ的な映画である。

最初の方でタクシー会社のガレージから出てきたトラビスが歩き、オーバーラップして、歩いていた距離を飛ばすように手前にくるカットがあるが、これはあきらかにゴダールの“ジャンプカット”を彼なりに再現したものだと推測できる。シュワシュワと胃薬がとけるコップを延々見続けるというのも『彼女について私が知っている二、三の事柄』からの引用であるが、そもそもこの作品は物語にまったく関係ないカットが随所に差し込まれ、それが妙なガタガタな編集とリズムによって印象を残すというところがあり(編集を担当したのはジョージ・ルーカスの奥さん)、そのへんも初期ゴダール作品と共通している。クライマックスでハーベイ・カイテルと対峙するシーンではロングショットの長回しでもって唐突に暴力がはじまるが、あれも『女と男のいる舗道』のクライマックスの手法と同じである(音声解説では『捜索者』のオマージュだと言っていた)。

同じヌーベルバーグでいえば、インタビューでスコセッシはルイ・マルの『鬼火』に影響を受けたと語っているが、バーナード・ハーマンのスコアは艶っぽく、ジャジーであるためにどちらかというと『鬼火』というよりは同監督の『死刑台のエレベーター』に近い印象を持った。特に深夜の街をひた走り、そこであの音楽がかかるところなんかはジャンヌ・モローが夜の街をさまよい歩くシーンを彷彿とさせた。昼間は昼間でブレッソンの『スリ』にも通ずるところがあり、実際ポール・シュレイダーは脚本を書く時に参考にしたと公言している(ちなみにコーンフレークにブランデーを入れるのはブレッソンの「田舎司祭の日記」からのオマージュだとか)。

さらにファスビンダーからの影響もあったという。特に『四季を売る男』が好きだと語り、カメラに映ってる人物の表情などを参考にしたらしいが、なるほど、確かに終盤のハーベイ・カイテルジョディ・フォスターのダンスシーンは『不安は魂を食いつくす』の冒頭と呼応するではないか。

もっといえば、スコセッシはこの作品をノワールとして撮ったと言っているが、そんなことを言い出したらキリがないし(フリッツ・ラングの『飾窓の女』のイメージもあるとかないとか…)、あげくそれも後付けなのかなんなのか分からないのでやめておく。宇多丸師匠が『グッドフェローズ』を評して「ヒップホップ以降の映画文法のお手本となった90年代最も重要な作品」といっていたがあながちそれは間違いではないといえる。というわけで、意外と衝撃的な内容を語りがちだが、実はこの作品はタランティーノよろしくサンプリングで出来たモノであり、それがそのまんま90年代の映画文法に結実するというのが興味深い。ここに書いたことはBDの特典映像ですべて分かることなので、この作品が好きな方は是非BDを買うこともおすすめしたい。

関連エントリ

2011-07-08 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

タクシードライバー』のレビューではいちばん感銘をうけたかもしれない。っていうかわりとパクってます。

あと「契約殺人」という映画の影響もあるというのをTwitterで教えていただきました。

https://twitter.com/satorubaba1988s/status/316454225959874560

くりごはんが嫌いな男の2012年ベストムービー

さぁ、今年もやってまいりました。毎年毎年観てる本数が少ないと嘆いてますが、今年はダントツで少ないです。48本という体たらく。なんでだろうと思ったら、犬が高齢になり、介護が必要で外にあまり出れなかったというのと、伯父さんが末期ガンで余命いくばくもない状態になってしまって、それでドッタバタしてたからなのでありました。しかも昨日から新潟は雪が積もっていて、タイヤも変えておらず、このままでは映画館はおろか、レンタル屋にも行けないので、結局今年観そびれた映画を追うことも出来なくてですね………それでも毎年恒例企画なので、発表いたします。あんまし参考にもならないし、たいしたことありません。

それではベストムービー2012の発表です!

1.Chronicle(クロニクル/日本未公開)
2.Project X(プロジェクトX/日本未公開)
3.The Cabin in the Woods(13年春公開。邦題「キャビン」)
4.ブラッディ・スクール(日本未公開。DVDスルー作品)
5.ドライヴ
6.哀しき獣
7.ザ・レイド
8.ムカデ人間2
9.セルビアン・フィルム
10.小悪魔はなぜモテる?!(日本未公開。DVDスルー作品)


1.はPOVで撮られた超能力モノ。「クローバーフィールド」をその年の一位にしたが、この方法ならどんな絵空事でもリアルになるというのを改めて思い知らされた。POVが持つ弱点を克服し、さらにその持ち味を存分に活かした傑作。東野幸治も注目しているこの作品の日本公開はまだか。

2.も同じくPOVによる作品。童貞三人組が計画したパーティーの暴走と成れの果て。いわゆるピラニアが襲って来ない『ピラニア3D』であり(リア充にたいするひがみもない)、後半一時間の多幸感は今年ダントツ。こちらも日本未公開。

「キャビン」というよくわからない邦題になってしまった3.はホラー映画の定石を守りつつ、思いっきりパロディ化するというありそうでなかったような内容。東京で上映されたときは画面が暗くて何が起こってるかよくわからなかったようだが、そのクライマックスからラストにかけてがハンパなくすごい。こちらも公開が待たれる。

4.はジョセフ・カーン監督のスラッシャームービー。何が起きているのか?一体どういう映画なのか?がさっぱり理解出来ず、さらに人にも説明しずらいのだが、全編これPVのようなかっこいい映像がジェットコースターのように次から次へと出てきて、まったく飽きさせない。映画になってない映画の極北。

5.は今年賛否が最も別れた作品だと思うが、やはり高倉健メソッドの演技で鈴木清順アナーキーさがぶちこまれた西部劇としては支持しなければいけないだろう。個人的にはウォン・カーウァイの「いますぐ抱きしめたい」を彷彿とさせた。ちなみに今年の中で一番回数を観た作品でもある。何故か親父もこの映画を絶賛していた。

今年も韓国映画がアツい!6.は去年でいうところの『悪魔を見た』枠。物語としてはいびつだが、圧倒的なバイオレンスと勢いで見せきるすごさ。これからもナ・ホンジンにはおおいに期待したいところ。

7.はインドネシアから出てきた10年に1本のアクション映画。マーシャルアーツムービーとしてのエポックメイクの誕生。

8.はホラー映画に影響されて、映画の中で行われていたことを実際にやってしまうというところがフィクションながらリアルでとても怖かった続編。画がとてもリッチになり、不快指数もアップしたが、映画としてとてもおもしろかった。

9.も同じく不快指数全開ながら、リンチ的な不条理世界に少しずつ足を踏み入れて行く感じが怖くてよかった。「8mm」という映画にも似ていた。

10.も日本未公開ながらとてもよく出来ているコメディ映画。古典をベースに宗教的な部分にまで踏み込んでいき、さらに映像で主人公の置かれてる状況などを説明していくというウマさ。テーマ的には重いのだが、それをさらっと描いていくあたり、アメリカの懐の深さみたいなものを感じる。


【総評】

今年は賛否両論の映画がたくさんあった気がした。故にぼくが選んだ作品のほとんどがワーストだという人も恐らくいるはずで、それくらい作家性が色濃い映画がランクインした。

未公開の映画ばかりあげてしまったが、実際おもしろかったのだからしかたがない。去年同様、2012年公開の映画が少ないのもどうかなと………それでも「アベンジャーズ」や「ヱヴァQ」、「エクスペンダブルズ2」、「ドラゴン・タトゥーの女」など間違いない作品も多く、どれも観てる間の多幸感はハンパなかったが、おもしろいと好きは違うので、これらの作品はランクインせず。日本に関しても「へんげ」や「先生を流産させる会」などの自主制作映画が素晴らしく。ギリギリまでランクインさせようか迷ったほどでこれからも期待が高まる。他にも「悪の教典」、「黄金を抱いて翔べ」、「アウトレイジ・ビヨンド」、「DOCUMENTARY of AKB48」、「ヤング・アダルト」、「ヒューゴの不思議な発明」、「プロメテウス」が特におもしろかった。「ベルフラワー」、「ミッド・ナイト・イン・パリ」、「桐島、部活辞めるってよ」など、評価が高いのに観てない映画も多く、きっと来年には完璧なベストとして仕上がってるはずである(去年のベストも結局今年の頭くらいに完璧な状態としてツイートしたし)。

あと大絶賛されている「サニー」はそうでもない派であるということだけは付け足しておきたい。


ちなみにワーストは『へルター・スケルター』でそれ以外はどれも普通に楽しめました。なので今年はワースト5の発表はなし。