パンズ・ラビリンス


パンズ・ラビリンス』を観た。これは今年のベスト5に確実に食い込む傑作だ。すごすぎて書く事が山盛り。ヘタすりゃ『ブラックブック』を越える残虐描写!バートンやギリアムに並ぶ独特の映像美!『千と千尋の神隠し』や『となりのトトロ』など、宮崎アニメを彷彿とさせるストーリー!歴史や寓話、神話など様々な要素をきっちりと2時間以内に詰め込んだ編集!

ガイ・リッチーは『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』から『スナッチ』を撮ったが、ギレルモ・デル・トロは同じスペイン内戦化を舞台にした『デビルズ・バックボーン』から『パンズ・ラビリンス』を撮った。ガイ・リッチーは焼き増しくらいしか出来なかったが、デル・トロは焼き増しにならず、しっかりと作品のレベルをグンと上げて来た。

スペイン内戦化でおとぎ話にしか希望を見出せないオフェリア。彼女の母はサディストなナチの将軍と再婚。妊娠。後継者を望んでる義父の事をオフェリアは嫌っている。そんな地獄のような日々を送る事になったオフェリアの前に妖精が現れ、その妖精についていくと牧羊神(パン)に出会い。あなたはお姫様の生まれ変わりです。と言われる。そのオフェリアに3つの試練を与えるパン。その試練が。

ちょーでかいカエルの中にある鍵を取る事。

豪華絢爛な食べ物の誘惑に負けずに剣を手に入れる事。

弟をサディストのナチ将軍にバレないようにさらって、パンズ・ラビリンスに連れてくる事。

ただ、これだけの試練なのだが、それはまるで風呂掃除をするだけなのにハラハラドキドキする『千と千尋』のよう。『ミツバチのささやき』が元ネタらしく、それを見てないのでなんとも言えないけど、かなりいろんなところに元ネタが隠されてるだろう。ただ、個人的には『千と千尋』の影響がすごく強いと思う。カエルのシーンなんて、カオナシを彷彿とさせたし、CGもすごく精巧なんだけど、あえて(多分)人形アニメのような質感と動きにしてあって、そういう部分もすごく好感が持てた。

木陰に入ったり、木が画面に被さる時にカットバックして、映像を変えるなど、ファンタジック以外な部分でもすごく魅せてくれる。映像は全カット美しく。森の撮り方、使い方は秀逸だ。『パンズ・ラビリンス』はファンタジーと銘打って公開されたが、実は現実的な部分がすごく多い。大半を占めてる。特にそれを象徴してるのが、徹底した惨殺。『ミュンヘン』や『シンドラーのリスト』のように徹底している。頭をガスガス撃ち、顔面をナイフで切られ、死ぬ寸前まで拷問するなど、ものすごくリアルに描写する。

ファンタジーというのは現実逃避にしかならないから、その中で現実を見せてくれなければ観る意味が無いと思ってる。『パンズ・ラビリンス』はファンタジーと言いながらも、すごく現実的で残酷な部分が多い、現実は地獄でクソみたいなもん。だからおとぎ話の方が美しいという『パンズ・ラビリンス』実際、オフェリアはスペイン内戦の被害者であり、彼女が逃げ込んだ世界は彼女の理想の世界だった。

ハッキリ言って万人にお勧め出来ないし(残虐な映画が苦手な人は絶対に観ない方がいいと思う)
ある種のおとぎ話を期待すると、完全に裏切られるが、確実に『デビルズ・バックボーン』は越えてる。

てなわけでよしなに。