血が出る映画が好きな人目線の『ワルキューレ』に対する勝手な感想。

9時半より『ワルキューレ』鑑賞。

ぼくはナチふんちゃらかんちゃら映画が好き。ただカンフー映画ほど熱狂的に観てるわけではない。それでも『イルザ ナチ女収容所 悪魔の生体実験』は大好きだし、『シンドラーのリスト』とかも映画自体は好きではないのだけれど、ナチの将校達が容赦なく人をぶっ殺すシーンは繰り返し観たし、『ライフ・イズ・ビューティフル』も好きだし、『戦場のピアニスト』も観たいと思っている(観てねーのかよ!)。『パンズ・ラビリンス』の拷問とか『デビルズ・バックボーン』の雰囲気、ジャッキーの『ドラゴン特攻隊』とか、ワルシャワ蜂起の『地下水道』とか、戦争映画もその要素が強いんだけど、普通に娯楽映画として、ナチがらみの映画は見るようにしていて、『ヒトラーの贋札』とか『ブラックブック』とかが公開されたりするとワクワクする。タランティーノの新作もナチ絡みの映画らしいのだが、これからもヒトラーとか出てくる映画はどんどん作って欲しい。と言いながらも、『アドルフ・ヒトラー/最期の10日間』とか観てません。すいません。

なので『ワルキューレ』も、実際にあったヒトラー暗殺とワルキューレ作戦の映画なので楽しみにしていた。しかも監督は『ゴールデンボーイ』というナチものを撮ってるブライアン・シンガーだし。

ワルキューレ』は全員英語で喋ってるとか、もうそういうツッコミは良いとして、かなり良く出来てる映画だと思う。迫力の爆破シーンも思わず声出たほどだったし、正直、衣装やらセットがキレイ過ぎるのはいただけないが、それでもヒトラーの側近達の心理劇なので、まぁ納得する。一番すげぇと思ったのは、あれだけの情報量をコンパクトに分かりやすく、違和感無く交通整理出来た事だ。どういう状況なのか?というのがかなり分かりやすく提示されるため、そのおかげで、普通に会話をしたり、駆け引きを繰り広げるだけでハラハラした。役者の選び方も良かったと思うのだが、そこはさすがブライアン・シンガーと言ったところだろう。

確かに『ワルキューレ』は良く出来た映画だったが、それと同時に良く出来すぎてるという不満も無くはない。言っても、かなりお上品に作られた映画なのだ。なので、陰惨なシーンも無ければ、血は出ないし、トム・クルーズが片目片腕を失うシーンも上手い具合に片目を隠すようにぶっ倒れていて、血もささっと流れてる程度だ。最期に自決するシーンもまったく映さないし、目を覆いたくなるような描写が一切見られないのはちょっと残念だった。

じゃあ、血が出なければダメなのか?と言われればそれまでなのだけれど、『ブラックブック』も『シンドラーのリスト』も『パンズ・ラビリンス』も『ヒトラーの贋札』も、ものすごく陰惨に人が死んでいく。同じようなテーマの『シンドラーのリスト』に至っては主人公の行動と関係ないところで、人が殺される描写が延々続く。一体誰目線なんだよ?というくらい、ありとあらゆるところで人が死ぬ様子が執拗に描かれて行く。

つまり、これは、人が狂ったように人を殺すような状況の中だからこそ、主人公達の行動が、どれだけ命がけで、どれだけ勇気の居る事なのか?というのがよく分かるようになっている。『ワルキューレ』はトム・クルーズの主観がメインという事もあり、戦場で片手片目を失ったので、本部にこもりっきりで、それらの描写が一切ない。

ワルキューレ』は確かに迫力もあって、良く出来ていて、作られた理由も分かるのだが、それにしては刺激がなかった。これだったら、同じように会話だけでハラハラしたナチものの『ゴールデンボーイ』の方が遥かにおすすめ。しかもこっちはやおい的な雰囲気もあるぜ!

とにかくオレはスクリーンが血で染まるのを観たい!しかも上品なシネコンで血が染まるのを観たい!子供がトラウマになるような陰惨で血まみれな映画をもっともっと公開してくれ!あういぇ。