アメリカでやたら評価が高い映画『L.A.コンフィデンシャル』

どういうわけか日本ではそこまで評価されてるわけではないのに、アメリカでやたらと賞賛され、評価が高い映画というのがある。

例えばコーエン兄弟の『ビッグ・リボウスキ』がそれにあたると思うし、『アメリカン・ビューティー』なんかもアカデミー賞をとったわりに、ぼくの周りでは「あれすごく好きなんだよねー」という人が少ない気がする。

スコセッシも『タクシードライバー』の評価はバツグンに高いが、意外と本国アメリカでは『レイジング・ブル』や『グッド・フェローズ』の方が評価が高く、これこそがスコセッシのベストであるという人が多い気がする。

もちろんその逆もまた存在するのかもしれないが、ぼくにとってそれを最も象徴する作品がカーティス・ハンソン監督の『L.A.コンフィデンシャル』である。

1950年代を舞台にダイナーで元刑事を含む6人が惨殺された「ナイトアウルの虐殺」事件を捜査するロス市警の3人の活躍を描いた作品。

この作品。数年前にアメリカの評論家だったかが選ぶ90年代のベストムービーの10本に選ばれており(手元にその記事がなく、あいまいですいません)、すごいなと思った一方でこれと同じことを日本でやったら選ばれないだろうなぁと思った記憶がある。確かそのときは『シンドラーのリスト』が1位で『グッド・フェローズ』もランキングされており、これまた日本でやったら結果は違っていただろうと日本とアメリカの見解の違いみたいなものを実感した。

『チャイナタウン』と肩を並べる――――というか、『チャイナタウン』以降のフィルム・ノワールとしては最高峰。90年代を代表する傑作なのは言うまでもないが、エルロイのL.A.四部作の空気感をそのままに、血なまぐさく、いかがわしい人間が、暴力と権力をこれでもかと使い、徹底的に犯人をいたぶりながらも正義とは何かを追及していく物語である。

ラッセル・クロウとガイ・ピアーズの出世作になり、それまでお色気担当でしかなかったキム・ベイシンガーにオスカーをもたらし、エルロイの原作権に関係者が群がり、中盤のサプライズがそのまんま『マイノリティ・リポート』に使われるなど、その後の影響も大。マーケティングよりも役を優先したキャスティング、50年代アメリカを完全に再現することに成功したプロダクション・デザイン、クライマックスの銃撃戦の迫力、『ブラック・ダリア』に負けず劣らずの陰惨な殺人現場のシーン、次第に明かされていく謎、ロロ・トマシのトリック、そしてプロとプロでしか分かり合えない友情、ある種の三角関係に陥るロマンスなど、ノワールのジャンルにくくれないほどの多面的な魅力がたっぷり。

というわけで、評論家ウケはよかったものの、その年のアカデミー賞は『タイタニック』がかっさらい(残念ながらこちらは90年代のベストムービーにはランクインされず、ムヒヒヒ)、その後DVDが発売されたものの、長らく廃盤となっていて、日本ではそこまで目立つ存在にはならなかったが、改めてこの作品を評価したいと思いエントリにした次第である。『L.A.ギャングストーリー』なる作品も公開されるし、『ホワイト・ジャズ』の映画化も決まったってことで改めてエルロイのノワールに触れてみてはいかがだろうか。

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