やはり本家の味は強烈だった『ティム・バートンのコープスブライド』

ティム・バートンのコープスブライド』鑑賞。

私利私欲のために結婚させられることになった男が結婚式で大失敗、ちゃんとした結婚式が出来るまで延期だ!と言われ、練習のために墓場の前で誓いの言葉を言っていたら、死体の花嫁が蘇ってきて、さぁ大変というのがあらすじ。

ティム・バートンという監督は人肉でミートパイを作ってみたり、人間の頭と犬の体をくっつけてみたり、首無し騎士が出て来てみたり、火星人の頭を爆発させて、脳みその中身がドローンとか、こいつ一般的にちょっとやばいんじゃねぇか?みたいなことをちょこちょこ映像にしてたけども、なんと、この『コープスブライド』に詰め込まれてるのは、ずばりそれだけである。間違って死体に結婚の約束をしてしまった男が死体の世界で右往左往するという、それだけで実写化不可能だろと思わせる内容だが、現実の世界をモノトーンにし、死体の世界がカラフルというのはいかにもバートンらしい表現である。

腐りかけの花嫁が蘇ってくるという、人形アニメじゃなければ、表現出来ないビジュアルの塊はやはり素晴らしい。まぁ、実写にしたら……と考えると吐き気を催す。死体の手が取れてガサガサガサ!人体が真っ二つに分かれて中身がスポーン!首から下が昆虫になっててガササササ!骸骨のくぼみから目玉がストトーン!などなど、とにかく凄まじく危険である。

もしかしたらティム・バートンという男は頭の中が常にこんななのかもしれない。世界はモノトーンのような灰色、奇形のような歪な形の人間、おどろおどろしく、死体や人体破壊がそれを彩る…

映像もさることながら、内容もバートンが長年追い求めているテーマにそっている。住む世界が違いすぎる二人が心を通わせるも、結局、結ばれることはなく、元いた世界に戻っていくというのは、『シザーハンズ』を始めとするバートン作品でも重要なテーマだが、今回はそれに“愛する人のために死を選べるのか?”というようなことまで提示していて、とても興味深かった。

死の世界をじっくり描き込み、さらに天国でも地獄でもない、下の世界と表現したのが新しく、そこにミュージカルの要素も加わったのが視覚的にもストーリー的にも楽しかった。それでも踊ってるのは腐乱した死体……

不気味なキャラクターも、奇を衒ってるだけではなく、ちゃんと伏線になっていて、ラストには驚くような展開になり、76分の中に映画的な興奮をぎっちり詰め込んでいるのはお見事だ。

バートン制作の『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』にはノレなかったクチなのだが、『コープスブライド』は腐乱死体が踊り狂う地獄絵図にピュアな魂が通い合うラブストーリーとしておすすめ。それにしても、人形アニメとは言え、これ子供が観たら泣くぞ。『レモニー・スニケット』のときに「のれんわけされたバートン味」という風に評したのだが、やっぱり本店の味はいちげんさんにはちと厳しいなぁ。あういぇ。

ティム・バートンのコープスブライド [Blu-ray]

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