深読みすら許さない潔さ『スカイラインー征服ー』

スカイラインー征服ー』鑑賞。サービスデー朝一の回とはいえ、無茶苦茶人が入ってて驚いた。しかも犬の映画とか絶対に見なさそうな人ばかり。あんたも好きねぇ。

巨大な宇宙船に人がゴミのように吸い寄せられるというティーザーからも分かるように、とてつもないハイコンセプトを持ったいわゆる宇宙侵略モノ。地上20階の高層マンションで誕生日パーティーをしていた男とそれに呼ばれた友人が、突然起こった宇宙戦争をそこから「見ていた(だけ)」という映画。

94分という潔いランタイムに『クローバーフィールド』と『宇宙戦争』と『インデペンデンス・デイ』を盛りつけてしまった結果、収集付かなくなっちゃったよぉ!という叫びが聞こえて来そうな内容で、基本的にオリジナリティもストーリーもない。しいて言えば、高層マンションの一室という舞台設定で、主人公たちはここから動くことを許されない。一瞬画に広がりを持たせるため、外に出たりするのだが、その理由*1はさておいて、それも見せ場のひとつとしてうまく機能しているし、冒頭の退屈極まりないパーティーシーンがすべて前フリになっているなど、実のところ計算され尽くされた作り。ひとことで言えば「外に出ない『クローバーフィールド』」という感じで、その行動原理にはなかなか説得力があり、まったく掘り下げてもらえないキャラクターと相反してなかなか楽しめる。

オリジナリティのなさもさることながら、それ以上に素晴らしいのは全体を貫く「中身のなさ」である。

基本的に映画というのは映ってるもの以上に深読みが出来たり、ほんの些細な演出から主人公たちの心情を読み取ることが出来たりするのだが、この映画にはそれがほんっとにひとつもない!

しかも自己犠牲が芽生えてくるシーンになったら壁にかけてあるカミカゼの絵が大写しにされたり、時間が経過したことをものすごい早回しで表現したり、夜中に正体不明の青白い光が見えたら「う、うーん、なに?もう朝なの?」というわざとらしいセリフをいちいち喋らせてみたり、さらには「もしかしたらこの人浮気してんじゃないか?」というのがバレるのもデジカメに映ってたハメ撮り写真(!?)というすさまじいアイテムによって表すなど、とにかく演出のひとつひとつがホントに幼稚でメガださい!

演出だけでなく、そこに居る人間もかなり安っぽく扱われる。主人公の恋人が妊娠しているという設定なのだが、これが何も活かされない。ある程度の人数がマンションの一室に集まっていて、外では宇宙戦争が繰り広げられているというのに、それに対比させるような――――こう『ミスト』的な人間の醜さも出て来ない!当然ながら「人間の命って大切ね♪」というメッセージはひとかけらも見当たらない!すごい!なんて潔い映画なんだ!

つまりだ、『スカイライン』はこの手の映画によくある「人間って醜くも素敵ね」とか、「みなさんのためにぼくが犠牲になってあの宇宙船につっこんでいきます!」といった反吐が出そうなメッセージをすべて削りとり、「オレらが見たい宇宙戦争にそんな命の大切さなんていらねぇんだよ!ホントはこういうのが見たいんだよ!」という志だけに満ち満ちているたいへんすばらしい作品なのである。

怪獣のごとく襲って来る超巨大宇宙人や戦闘機が空を覆い尽くし、ミサイルが雨のように飛び交うハイグレードな映像、さらに巨大な宇宙船が人間を飲み込んでいくという画――――これだけで最高じゃないか!他に何がいるってんだ!

「なぜ襲って来たのか?」や「一体何が起こっているのか?」というのはなにひとつ提示されないが、それに対してブーブー言ってる人たち*2には絶対におすすめできない。3800円でDVDを買う映画ではないが、レイトで1200円くらいで観るにはもってこいな作品。ビール片手に野郎同士で盛り上がれ!そういう意味でおすすめだ!あういぇ。

関連エントリ
スカイライン ー征服ー (aka. Skyline ) | ナマニクさんの暇つぶし

*1:「海に行けばなんとかなるはずだ!」とか根拠のないことを平気で言ったりする

*2:宇宙戦争クローバーフィールドの時に見られた映画に「理由」を求める人のこと