めでたく日本でも公開決定!『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』

『精武風雲・陳真/Legend of the Fist: The Return of Chen Zhen(レジェンド・オブ・ザ・フィスト: ザ・リターン・オブ・チェン・ジェン)』を輸入盤BDにて鑑賞。

日本でも公開が決定したが、タイトルはどうなるのだろうか――――香港映画ってレジェンド・オブ・ふんちゃらとか、なんちゃらオブ・ザ・フィストとか多くなかったっけ??――――といらぬ懸念をしていたら、めでたく『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』に決まったのであった。『フィスト・オブ・レジェンド』とごっちゃになりそうですな。結局「ジェット・リーの方!」とか「ドニーさんの方!」とか呼ばれてしまうんだろうな。

第一次大戦時、ヨーロッパ戦線にかり出されたチェン・ジェンはフランスの地から、激闘の末、命からがら上海に戻ってくる。彼には「とある過去」があり、そのために本名ではなく、フランスで亡くなった友人の名を名乗り、レジスタンスとして活動していた。やがて日本人と密接な関係にある有名なナイトクラブに協同経営者として潜りこんだチェン・ジェンだが、それと同時に日本軍が発表した反日中国人殺害者リストの人物を守るため、ヒット中の映画の主人公と同じ格好をして、暗殺者たちを次々に撃退していく。暗殺者を倒している仮面の戦士は何者なのか?というのを躍起になって探す日本軍だが、実はその大佐の父は過去にチェン・ジェンに殺されていて……というのがあらすじ。

田舎者のエスコートに長けているシャバゾウのチャトランさんにBDをお借りしたのだけれど、これが輸入盤BDで当然ながら日本語字幕なし。英語字幕で鑑賞したのだけれど、まずこれから購入したいなと思ってる方は日本公開が決定したので待ったほうがいい。『イップ・マン』のようなシンプルなストーリーだったらいざ知らず、この作品は複雑に人物が絡み合っており、さらに裏の裏をかくような展開にもなっているため、かなり置いてけぼりを喰らう個所が出てくるからだ。もちろん英語がわかれば問題ないわけだが。

――――というわけで、少し分かってない部分もあるが、この『精武風雲』は『ドラゴン怒りの鉄拳』の主人公チェン・ジェンがもし生きていたら?*1という設定の元、作られたドラマの映画化である。

この時点でブルース・リーリスペクトの映画なんだなということは容易に想像ができてしまうのだが、この作品はそれに甘えることなく、その設定をうまく利用して見事に一本の娯楽映画として昇華している。

つまり彼が本名を名乗れないのは、『ドラゴン怒りの鉄拳』で「あんなこと」をしでかしたからであり、それが元であれだけの殺人術をこなせるようになったというのは、非常にうまい設定であるといえる。『グリーン・ホーネット』のカトーマスクも、バットマン的なキャラクターにしたことで違和感なく滑り込ませファンを喜ばせてくれるし、クライマックスまで彼はブルース・リーのステップやスタイル、アチョーを封印しているが、それも正体を明かせないというところとリンクしており、それがクライマックスにて解き放たれた瞬間のカタルシスたるや、凡百の言葉では何一つ説明出来ないほど。

監督は『インファナル・アフェア』のアンドリュー・ラウ。正直、カンフー映画として観ると若干の物足りなさを感じるかもしれないが、ドラマ部分が特出しており、ドニー・イエンを中心にした役者の演技は見応え充分。堂々としたエスタブリッシングショットに耐えうるセットの力強さと衣装の素晴らしさ、さらに『プライベート・ライアン』と『ミュンヘン』の演出論をそのまんまクレバーに取り込んだ冒頭と中盤のシーンの迫力はもはやカンフー映画というジャンルにはくくれないほどの迫力で、映像もコレオグラフも役者の演技/演出も含め、全体的に完成度はかなり高い。

というわけで、絶賛BD発売中の『イップ・マン』とあわせて観ることを是非おすすめしたい。ジャッキー、ジェット・リーに続いて、日本でもドニー・イエンの一大ムーブメントが起これ!あういぇ。

――――あ、そうそう、なんの冗談か、EXILEAKIRAが出演しているのだが、軍人なのに長髪で妙にかっこよいコートをまとっているという時点でいけすかなくて、あいたたた…と思っていると、ものの見事にボッコボコにされるので、そこはかなり見どころです!つうか、香港映画をなめんな。ボケザイルが。

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2011-02-07 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

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*1:この時点で完全に『ドラゴン怒りの鉄拳』のネタバレになってしまっているのだが