そんなに「理由」が必要だろうか?

21歳の時、オフ会というものに参加するため生まれて初めてちゃんとした形で上京した。

ぼくにとって東京というのは、ある種「別世界」という認識があり、『眠らない街 新宿鮫』という映画のせいで、「眠らない街」というイメージしかなく、路地裏では青龍刀を持ったチャイニーズが走ってるのではないかという妄想を抱きながら向かったものだ。あとは奥田瑛二にチウされるんじゃないかとか、切れた耳を無理矢理引っ張られるんではないかとか。

ちなみに映画には若き浅野忠信も出演しております。

埼玉に住むいとこに言われた通りに電車を乗り継ぎ、待ち合わせ場所に着いた。そこからオフ会の主催者に連れられ、映画を観るために渋谷へ移動したのだが、まぁ人の多さに驚いた。駅前なのにも関わらず、海外アーティストのゲリラライブでも行われるのか!?と思うほどの人の多さ!さらに終電に駆け込む人の数!ぼくは尋常じゃないくらいのカルチャーショックを受けてその日を過ごした。

そして、それと同時に、急に街中で殺戮を始める、無差別連続殺人犯の気持ちが少しわかってしまったのだ。

会社でのアホみたいな上司や部下によるストレス、飯喰うのにもいちいち並んで、さらに店が異様に狭いというストレス、さらには移動するだけでも人の多さでストレス……しかもそこにはドンキにたむろってそうな、DQNな方々……

そりゃみんな死んでしまえっていう気持ちにも多少はなるよ!

ところがだ、この手の犯罪がTVのニュースで流れると、そこには必ず「理由」を求める輩が訳知り顔で語り始めるのだ。ホラー映画の影響、残虐なゲームの影響、心の闇がどうしたこーした……うるせー!そんなもんかんけーない。みんな死んでしまえという気持ちになったから殺しただけじゃないか!まぁ、そこにいたるまでにはなんらかの理由が必要ではあるが……

とにかく「世の中」というのは必ず、自分の理解を超えた何かが起こると、そこに「理由」を求めてしまうのであった。

映画においてもそれは同じである。『宇宙戦争』や『クローバーフィールド』が公開されたときに必ずこういう輩が出没した。

「宇宙人や怪獣がなんで攻めてきたのか“理由”が描かれないから、よくわからず、ぜんぜんすっきりしない*1

……じゃあ、逆に君たちに問うよ……そこに「理由」は必要ですかな??

よく考えてみれば分かることだが、仮にこうやってブログをパチパチ書いてるそばから、外でものすごく大きな音がして、なんだなんだ!?と外に出たら、建物の外壁がぶっ飛んで来て、遠くの方で得体の知れない何かが大暴れしてたらどうします??

とりあえずわけもわからず怖くなって逃げるでしょう!

だから『宇宙戦争』や『クローバーフィールド』、こないだ公開された『スカイライン―征服―』は怖いんじゃないか!!

は、早く逃げてー!!

人の皮をかぶった殺人鬼が突然襲ってきたら、その「理由」を考えるだろうか?鮫が突然襲ってきたらその「理由」を瞬時に考えるか?ゾンビは?ミザリーは?隕石は?竜巻は?

そもそもすべてに理由があって、説明されて、それが明らかになる映画なんておもしろくもなんともないと思う。これは映画の出来/不出来、賛否両論以前の問題であって、それは「そういう映画」としてひとまずは認識されるべきであるし、映画とはそこに映ってるものがすべてであって、それ以上もそれ以下もないのだ。そこからどう読み取るか?というのも映画を見るうえでの楽しみであると思う。

映画において「理由」がないのはそれまたひとつの「理由」なのだ。

君たちは人を好きになるのに「理由」が必要ですかな?もっと言えば生きるのに「理由」があるのだろうか?

映画において感想は人それぞれで良いという常套句があるが、映ってるものに対して理由がないから納得がいかない=おもしろくないというのは、それはそれで感想としてどうなのかなぁとも思う今日この頃なのであった*2。あういぇ。

あ、あと、血がぶしゃぶしゃ出る映画が好きなんですって言った時に「なんでそんなもん観るの?」つって、怪訝そうな顔でこっちを観るのはやめろ!好きだからだよ!そこに「理由」なんているか!?お前らが嵐が好きとか、韓流スターが好きってのとおんなじことだよ!

*1:あと『トゥモロー・ワールド』の時もなんでこんなことになってるのか説明がないからつまらんってヤツもいたなぁ

*2:もちろん、その「理由」が必要な場面もあるが、それは映画においては欠陥なので、それはそれで理由がないから納得がいかない!と声を大にしていうべき