すべてはレリゴーのせい『アナと雪の女王』

アナと雪の女王』をBDで鑑賞。

この作品の監督/脚本としてクレジットされている*1ジェニファー・リーが脚本だけを担当した『シュガー・ラッシュ』のことをぼくはそこまで買ってない。だから『アナと雪の女王』にも食指が伸びなかった。てなわけでBDでの鑑賞になってしまい『ロッキー・ホラー・ショー』よろしく、本来の『アナと雪の女王』を観たことにならないかもしれないが、カルト映画がそうであるようにこの映画が傑作かと聞かれたら首を縦に振ることはできない。

その理由というか原因はすべて「Let it go」にある。

ハッキリ言って『アナと雪の女王』における「Let it go」はミュージカル映画史上トップクラスの名シーンといってもいいかもしれない*2。むしろこのシーンは登場したその瞬間からすでに「新たなクラシック」であり、あれを皆が語りぐさにするのはよくわかる。ハッキリいってリピーターが多いのもこれを劇場でふたたび体感したいからというのがひとつの理由になっているんだろう。

ただ『アナと雪の女王』はこの「Let it go」の出来がよすぎたためにキャラクター設定が大きく改変されてしまい、そのせいで物語としての魅力がゼロに近くなってしまったのだ。

実はこの改変というのは『シュガー・ラッシュ』にもあったことである。最初は悪役のラルフは悪役として機能するはずだったのだが、誰かが「こいつを主人公にしてみては?」と提案してああいう作品になった。結果、主人公がふたりいることになり、どっちがメインなのかよくわからない。いや、むしろ最初からラルフは悪役でいるべきだったのではないか?とまで思えてくる――――まぁそのへんは手前みそながら以前書いたエントリを読んでいただいて。

アナと雪の女王』も一緒だ。ふたりのプリンセスを対比とかいう以前に、そもそもエルサは悪役だったので、その対比的なものがとってつけたように感じてしまう。あれだけの悲劇を背負ってる人なのにダークサイドに落ちないため、ハッピーエンドが唐突に思えてくる。そしてアナは通過儀礼を経たはずなのに“オトコの見極め”ができるようになったくらいで一切の成長はない………というか、何かを乗り越えてもいないので、成長してないのも当然っちゃ当然………さらに悪役ではなかったキャラクターを無理矢理悪役にしたのでその辺も強引すぎるというか………まぁとにかくすべては「Let it go」がよすぎてしまったために起きた事故だという言い方もできるっちゃできるのである。

じゃあ、この作品はダメなのか?と聞かれたら無論そんなことはない。

キャラクターの魅力は圧倒的で、雪の描写は見たことないくらいリアル。そんな中でキャッチーな楽曲が全編を彩り、しかも90分しかない。つまらないわけない。

この映画のヒットは良い追い風だと思っていて、当然これで「ディズニー最高!」とハマった人は次回作も観にいくだろう。製作陣は変な思いつきを捨て、曲に頼らず『プリンセスと魔法のキス』や『塔の上のラプンツェル』クラスの大傑作を作っていただきたい。そして、それがメガヒットになったとき、本当のディズニー・ルネッサンスが訪れるのではないだろうか。


参考記事:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140424-00000008-wordleaf-movi


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*1:共同監督としてもうひとりいる

*2:ミュージカル映画の全部を観たわけではないが