ワイルド・パーティー


『哀愁の花びら』の続編として製作されたが、それをも茶化した内容が素晴らしく。ある種、前作よりも続編の方が有名な珍しいタイプの作品。

ポルノの映画監督がメジャーで映画を作った事も伝説だが、1本でどの映画でも感じられる大盛りっぷりは、ある種『七人の侍』に並ぶかもしれない。1本の映画とは思えない濃さと、へんに大作ぶらない肩の力が抜けた感。トンでもない内容とは裏腹な手堅く素晴しい演出の数々。ショービジネスの裏側をリアルに描きつつ、メロドラマ、ロックミュージカル、バイオレンス、ホラー、ポルノ、アクション、コメディ、群像劇、哲学と、おもしろければなんでもいいという事にこだわった脚本が見事。それだけでなく人間の複雑な性格を描き分けた構成力もずば抜けて素晴しい。サイケデリックでカラフルな映像、スタイリッシュを体現した目まぐるしい編集、倒置法を駆使した展開、このアホさ加減…いい点を挙げればキリがない程のおもしろさと興奮。かわいこちゃんがいっぱい出て来る中でも主演のドリーリードのかわいさにはノックアウト。とにかく男の子が大好きなものが高密度で詰め込まれた作品として文句無しの娯楽作品の1本と言ってもいいだろう。

ストーリーは『哀愁の花びら』の続編と銘打ってある通り、同じように3人の女がハリウッドの世界に飲まれて行くという話。『哀愁の花びら』は今で言う昼ドラの様な怒濤の展開でここまで不幸が続けば笑うしかないという作品になっている。長い原作を2時間でまとめた結果と言えばそうだが、それをラス・メイヤーエバートはもっと誇張し、さらにあり得ない展開にした。そして田舎出身のスリーピースガールズバンドに変えてしまったのだ(ちなみに会社の指示は3人の美女がハリウッドに行くという事だけ)ロックバンドにした事で演奏シーンには本格的なロックを聞く事が出来。『哀愁の花びら』よりもワイルドに、そしてよりポップになった。

成功を夢見て、ハリウッドに向かった先に待っていたものは…セックス!ドラッグ!ロックンロール。これがさらにどんどん逸脱して行き、クライマックスではトンでもない事に。ドンデン返しとも違う呆気にとられた展開はカルト作の名を欲しいままにし、軽く伝説化していた節があるが、とりあえずこんなすごい映画を今では1000円で観れる事に感謝したい。

そんなタイトル通りの無茶苦茶な作品なのだが、素晴しいのがこれは全部計算で作られたという事である。バカな事を大真面目にやると笑いになると知っていたラス・メイヤーは脚本を担当したロジャー・エバートに計算したバカエピソードを盛り込ませた。分かりやすく楽しい映画にするための作戦だろうが、これを大真面目に考えたものだとは思えないくらいバカ度が振り切ってある。バカも練りに練れば芸術にまで昇華するという事の典型的な例がこの作品なんだろう。それだけでなく単純にラス・メイヤーは演出がうまい。なので、バイオレンスもホラーもエロシーンも本格的である。サイケでスタイリッシュな映像と音楽もクールだが、強引な展開は映画としては逸脱しているかもしれない。でも、演出力あっての映画的飛躍!躍動!これぞエンターテイメントなのだ。単に面白いと思えるものを詰め込んだだけでも評価すべきと言える。

冒頭の(映画のクライマックスを冒頭に持ってきている)本格的なホラー的描写、最初からハラハラする事必至の見事な構成。アメリカ横断をするシーンではこの作品のダイジェストが流れる。さらに笑ってしまうくらいのメロドラマにバイオレンス、アクション、ミュージカルと怒濤の展開。ラストの流れはここでは絶対に書けないが、映画史上最もありえない展開である。

そして「巨乳映画の巨匠」と呼ばれるラス・メイヤーだけあって、出て来る女の子のかわいい事!!主役のドリーリードのロリフェイスと巨乳っぷりは、ほしのあきを軽々と超える魅力に溢れている。これは主役だけでなく、出てくる登場人物全員が文句無しにかわいい!んで、しっかりキャラを分けて描いてあるから、どの子がいいか?という楽しみ方も出来る。そして何処を切っても、おっぱい…おっぱい…おっぱい…

驚異的な密度で詰め込まれた娯楽度、全編に渡って繰り広げられるギャグ、クオリティの高いサントラ、美女、そしておっぱい…個人的嗜好は別にしてもラス・メイヤーの最高傑作である事は間違いないし、世界レベルで観ても『ブルース・ブラザース』や『リオ・ブラボー』に並ぶ、娯楽映画の頂点的傑作。映画ファンならば一度は観るべきだろう。

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