アマルってる場合じゃない!『キラー・ヴァージンロード』こそ本当の地雷だ!


仕事終わりで『キラー・ヴァージンロード』鑑賞。偶然バイト先の女の子と一緒になったので、一緒に観た。その娘は感動していたようで、こんな事を言うのは申し訳ないんだが…


舞台の演出も手がけている俳優、岸谷五朗の初監督作。結婚前夜にマンションの大家を誤って殺してしまった主人公が、死体を隠すために富士の樹海へと行く。そこで自殺しようとしていた女と出会い、自分が殺した大家を見られてしまう。そこで自殺志願者の女はこう持ちかける。「私がその死体をなんとかしてあげる!そのかわり、私に力を貸して!私を殺しなさい!」


このストーリーだけ聞くと、非常におもしろそうだし、2時間半とかが当たり前の上映時間の中で97分というのも潔く、予告編でもぶっ飛んでる感じがあったんで、なんとなしに観てみた。ところが————開けてビックリである。これを観てる人がどれだけ居るか分からないが、もしこれを観た後であれば、同じ初監督作である『大日本人』がいかに偉大だったかがよく分かるだろう、「笑えない?」「映画じゃない?」ケツ喰らえ!!『キラー・ヴァージンロード』観てから言うんだな!!


よく最近の映画を観ていると、「このシーン居るか?」と思う事が多々ある。そもそも、今の映画は無駄なシーンが絶対に多い。だから平気で2時間越える。今公開してる映画だって『アマルフィ』『火天の城』『TAJOMARU』『20世紀少年 最終章』『ハリーポッター』みんな2時間越えだ。観てないが、『BALLAD 名もなき恋のうた』なんて元のアニメが95分なのに、リメイクしたら132分だって————95分で完璧なアニメなのに、増やしてどうする!それ絶対に無駄だろ!!(もし合戦シーンが増えてて、その時間になってたら許す)


そんな中、『キラー・ヴァージンロード』は無駄なシーンが多いとか、そんなレベルを超越した作品だ。何故かというと、97分の作品にもかかわらず、全てのシーンをカットしても問題ない作りになっているからで、カットし放題、ある意味でプロデューサー泣かせの究極の作品である。


ストーリーに関係ないシーンでもおもしろければいいのだが、冒頭のミュージカルシーンや、マンションの大家さんが実はストーカーだったくだりとか、小出恵介との絡み、木村佳乃のミュージカル、暴走族のくだり、北村一樹のくだり————と書いていくと、ネタバレになってしまうので止めるが、とにかくすべてがいらない。死体を隠すというナイスなプロットなのにも関わらず、それを途中で放棄し、さらに書いてる人のご都合主義で、もう一つの悪人勝手に意味もなく作りだし、それに全ての責任をなすり付けるというのも腹立たしい!!とにかく8割のシーンをカットしてもストーリーが成立してしまう、中身のまったくないとんでもない映画だった!


全体的にコメディタッチで、映像もジャンプカットやスローモーション、ドット絵のアニメなど奇を衒った演出がやたら目立ち、絶対に日常でそんな言葉しゃべらねぇよ!というセリフ回しの下手さ加減と、舞台仕込みのオーバーアクトなど、とにかくすべてが鼻に付く作りで、笑いの種類もぜーんぶ無駄に詰め込んであって、どれか一つに引っかかればいいやという感じなのだろうが、それだけじゃ飽き足らず、最後の最後で無理矢理感動に持って行くのにも、空いた口が塞がらない。


おそらく岸谷五朗がやりたかったのはラス・メイヤーのような、すべてのジャンルが網羅された作品なのだろう。それが証拠にホラー、コメディ、不条理、アクション、感動、家族ドラマ、友情、バイオレンス、ミュージカルと全てがまんべんなく入っていた。


ところがだ、全てのジャンルが入っていたところで、ストーリーの全てがご都合主義では意味がない。車が欲しいところで、車をポーンとか、助けて欲しいところで助けがポーンとか、そろそろ泣かせないと!というところで、急にフラッシュバックしてトーンとか————アホか!ケツ喰らえ!主人公はボンクラなのに、なんであんな御曹司を捕まえる事が出来たのかの説明も、ラストのあれだけで納得すると思うのか!?たわけ!


ぼくが個人的に笑ったところは二カ所で、その内の一つはホントにおもしろかった。グラビアアイドルに夢中な男がグラビアアイドルに道で偶然出会い、持ってたウィーダーインゼリーを握りしめてしまって、そのゼリーがアイドルのおっぱいにかかるというところ。


「出ちゃったね…♥」
「うん…出ちゃった…」


って下ネタかよ!!!


おい!みんな!アマルってる場合じゃないぞ!!ホントの地雷はここにあったんだ!!岸谷五朗!もうお前は映画撮るな!ファック!あういぇ。