『CASSHERN』を世界一愛しているのは紀里谷和明


16時頃『CASSHERN』観賞…一応、オクウラさんが心から愛する作品だし、彼女も「めちゃくちゃかっこいいっすよ!キャシャーン!」と言っていたので、多少ひいき目に観たがダメだった。

ダメと言うか、ビジュアルはかなり良い。映像美は『イノセンス』とかあの辺のクラスまで行ってると思う。でも、これだったら絶対に『ブレードランナー』の方がすごかったよね?アナログでミニチュア使って、さらに巨大なセット建てて、無国籍な感じを作り出してた、岩井俊二の『スワロウテイル』もそう。ブローアップしたフィルムと実際に手作りしたセットがミステリアスな感じを醸し出してた。『CASSHERN』は全部が全部CGなので、それがない。だから『イノセンス』や『アヴァロン』の二番煎じのように感じる。

それでもワンカットにこだわりぬいたのは素晴しい。さすが紀里谷和明だ。だが、紀里谷和明は映画の事が根本的に分かってない気がする。もっと言うとあんまり映画自体観てないんだと思う。勉強不足で、その感じがこっちにものすごく伝わって来た。いくつか挙げてみよう。


1.エスタブリッシュメントショットが少ない。

CASSHERN』はエスタブリッシュメントショットと呼ばれる状況説明のショットが極端に少ない。主に映画では街並の全体をクレーンなんかで撮る。デ・パルマやジャッキーチェンなんかもよく使う手法で、近年では『スター・ウォーズ』の三部作や『ロード・オブ・ザ・リング』でもよく出てきた。世界観が分かりずらい映画の場合は、街並とその名前を誰かに言わす事で、
観客にどこで何をしているのかを伝えなくてはならない。『CASSHERN』にはそれがないので、どこで何をしてるのかよくわからないという現象が起こった。


2.アクションがヘタクソ。

まぁ、これは誰もが思ってると思うが、ガタガタで重みはないし、カットで割りまくるし、見せ方が悪い。『キューティー・ハニー』のようなギャグならまだしもこちらは本格的な映画なのだから、もっとこだわってほしかった。


3.血の色がヘン。

映画のテーマが痛みなのに、それを象徴するための血の色が不自然過ぎて入っていけない。ブルーベリージャムをぶちまけたような色合いが狙ったにしてはあり得ないくらいの色だ。CGで操作出来るのならば、ここにこそ最大のこだわりを見せて欲しかった。


4.音が悪い。

金属と金属がぶつかる様な音ばっかでうるさい。銃の音もリアルじゃない。日本で録音されたのかどうかわからんが、スカイウォーカーサウンドに持って行って付ければよかったものを、なにそんな所で予算をケチってるんだろう。映画で音はかなり重要だ。でも監督は映像の人だから、音に対するこだわりがないように思える。


5.セリフがダメ。

日常でそんな事絶対にいわねぇよ!とつっこみたくなるセリフが非常に多い。まぁ非現実の世界だし、監督が言いたい事を詰め込んでるのは分かるが、映画において、それを明確にキャラに喋らせると、違和感がある。それを映像で表現するのが映画監督であって、映像作家なのだ。全体的に立って喋ってるシーンが多かった印象もある。


6.長い。

2時間20分は長過ぎる。色もドギツイし、後半は胃もたれしそうになった。自然の映像すら色が変えられてて、優しくない。ワンカットにこだわったのは分かるが、それにしても作り込みすぎた。ならば、もっと映画の時間を短くしなければならない。そこも分かってない。

ざっと、こんな感じ。文句も多いが、映像はとにかくピカイチ。ここは認める。

その後『CASSHERN』のメイキング観賞。2時間もある!長い!映画だけじゃなくて、メイキングも長いんかい!でも、メイキングの方が本編よりもおもしろかった。紀里谷和明という人がスタッフやキャストに愛されてるのがよくわかる。この人のためなら、自分の実力を全部出してやろうという気にさせられる。映画監督というのはそういうのも必要なんだなぁと思った。あういぇ。

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