GOEMON
あのさー。キリキリってさ、いいヤツだよね!!
舞台挨拶とかでも、ちゃんと下っ端のスタッフにも挨拶して「紀里谷和明といいます。本日はよろしくお願いいたします」って低姿勢だし。何よりもさ、映画本編よりも長くておもしろかったDVD特典のメイキングで、すげぇいいヤツだったもん。そりゃ助監督はどんどん変わっちゃったけど「ああ、こいつのためにスタッフとして頑張りたい」みたいな空気がすげぇ出てた。これはホントに人徳だと思うし、そういう部分に惹かれて、伊勢谷友介とかも役者として出てるわけじゃん。
んで、まぁ『CASSHERN』はオレ的に『デビルマン』よりもおもしろくなくて、「見た後に、その人が何かを考える作品」ってキリキリは言ってるらしいけど、いやいや!観た後に考える前に、あんた全部セリフでベラベラ説明しちゃってるからさ!!観た後に考えさせられるのはセリフに提示されない部分、問いかけだったり、何かを突きつけるもんであって、君の考えをこちらに押し付けられたところで、それは考えさせられるとは違うから!!ハッキリ言って『CASSHERN』は俗悪な映画だと思う。キレイな映像を繋げて、全部説明してしまえば、それで映画として成立すると思ってる監督志望がどれだけ増えたか!!しかもこれが人生の一本とか言ってるヤツも居るんだよ!?『ブレードランナー』も観た事ないクソガキ共が!
それでもなんで『GOEMON』を観ようと思ったかって、まずキリキリは映像作家として自分のスタイルが出来上がってる。誰がどう観ても、これはキリキリの映画だって分かる映像の作り方をしている。いや、確かに気持ち悪いよ、冷静に観ると、死人みたいな肌の色、人造人間みたいな目の色、この人から CGというツールを取ったら何が撮れるんだろう?とか思ったりもするけど。
あと、観たいと思った理由は単純に予告編がおもしろそうだったから。まぁ、ポスターもそうだけど、あきらかに『CASSHERN』の二番煎じで、裏を返せば、二回同じテイストで映画を撮るんだったら、間違いなく上手くなってるわけで、あんな体たらくにはならないだろうと。
んで、観たんだけど、、、
あのさー。キリキリってさ、いいヤツだよね!!
舞台挨拶とかでも、ちゃんと下っ端のスタッフにも挨拶して「紀里谷和明といいます。本日はよろしくお願いいたします」って低姿勢だし…etc
でも、いくらいいヤツでも、あんたの映画は最低最悪だよ!!
つーか、キリキリよ、一枚の絵を美しく飾る事しか出来んかね?なんで絵でモノを語ろうとしないんだよ?映画って、映像で自分の言いたい事を込められる物じゃん。役者の表情とかでもなんでも出来るじゃん。なんでなんで全部セリフで喋るかね。怒ってる時も声だけ張ればいいと思ってやがる。
んで、なんで人をビュンビュンCGの力で飛ばすかね。せめてワイヤーで飛ばそうよ、ぶっちゃけゲームでも、今はモーションキャプチャー使って、人間の動きに近づけようとしてるってのにさ。『獣兵衛忍風帖』の方が重力を感じられるわ!!
あと走ってるシーンの演出はあきらかに笑わそうとしてるよな。なんで、ああいうチャウシンチーのギャグみたいに撮っちゃうわけ?馬よりも人が走った方が早いってどんな発想だ??
それから、『シンシティ』や『300』を観て、「ゲームみたいだ」って言ったヤツはすぐに訂正すべし。特に『300』はちゃんと役者が肉体動かしてアクション撮ってたぞ!!
キリキリって明らかに映画の勉強してないよね?ホントに映画を知ってる人じゃない。多分、過去の偉大な監督達の作品には絶対に触れてないはず。アクションの撮り方ももっと香港映画とか三隅研二の時代劇を観れば、なんとなく分かるもんなんだけど、つーかキリキリって『マトリックス』好きなはずなんだからそこでちゃんとロングテイクの地に足をつけたアクションやってるじゃん!!観てないのか??
これは絶対にそうだと思うけど、キリキリって、子供の頃に観た映画が『インディ・ジョーンズ』と『ルパン三世/カリオストロの城』と『スターウォーズ』くらいなんだよ。んで、その三本だけで、映画は事足りると思ったんだな。
んで、その後の映画でいうと、キリキリは『イノセンス』が好きだよね、あと『マトリックス』も好きで、りんたろうの『メトロポリス』も好きでしょ、それからチャン・イーモウの『HERO』と『スターウォーズ』の新三部作が好きだよ。もしかしたら『ブレードランナー』だって観てない可能性すらある。『攻殻機動隊』から入ったのかも。ホントに何かに影響を受けて出来上がった映画からの影響を受けすぎてる。
まぁ映画として致命的なのは、各キャラクターが何を考えて行動してるのかさっぱり分からないし、設定も無茶苦茶!!
忍ってさ、簡単に辞められんのな!五右衛門って何を信条として動いてるのかわかんねーのな!あとなんでもかんでもすぐに花火打ち上げるのな!
あと、一番納得いかないのは、五右衛門の親が切腹してすぐにパタって倒れるシーン。切腹しても人は簡単には死なないの!!つーか、お前その時点で『子連れ狼』観てねぇだろ!!介錯人っていう存在知らないだろ!浅田次郎の『壬生義士伝』だって、最後に切腹するけど、介錯人が居ない切腹だから、死ななくて、部屋でのたうち回って、あまりの苦しさと狂気から、自分の目ん玉に刀ブッ刺して、その後に数時間苦しんで苦しみ抜いて、やっと死ぬっていう秀逸な描写があるんだから、ちゃんとあんたは本も読みなさい!!
もう文句を言い出したらキリがないので、止めた。
確かにあんたの映画は黒字になって成功したかもしれないけど、多分それもあと数本だよ。早く今からでも遅くないから勉強しなさい。北野武だって映画観た事ないって嘯いてるけど、フェリーニやゴダールから吸収してるし、SABU監督だってリンチ好きだって広言してるし、あなたはやれば出来る子なの!!
とりあえず『GOEMON』は『CASSHERN』の出来を下回ってるというとんでもない映画。あー!!!頭来る映画だった!!ファック!ファック!ファック!ファック!!!!ファーーーーーーーーーック!!!!!!!!!
それに引き換え『チェイサー』は素晴らしかったぞ!!新人が撮ったとは思えない演出力!セリフで説明せずに、悲しさと怒りを同居させた表情や、泣くシーンは雨の音でかき消して、過剰にしないのも上手い!!!大林監督が推薦文で書いてる通り、昔気質の映画好きを納得させる傑作!!紀里谷和明はこれ観て勉強しろ!
詳しい感想は明日。あういぇ。